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熱情の果て※

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 レイノリアの内部にいるライナードは、痙攣のたびに伸びたり縮んだりを繰り返す細道に、切れ切れの息を漏らす。ライナードも身動きが取れず苦悶しているのだ。
「あああ! 」
 レイノリアの顎が仰け反る。
「お、落ち着け……レイノリア……」
 食い千切らんばかりの締めつけに、ライナードの額に一気に汗の粒が吹き出した。
「い、嫌……嫌っ……」
「お、落ち着け……って……」
「ああ! 痛っ! 」
 これはまずいと判断したライナードに腰を掴まれ、引き剥がされた。
 ずるり、と食い込んでいた部分が抜ける。
 ライナードのものは、レイノリアの粘膜が絡みつき、ねちゃっと音を立てそうなくらい濡れている。
「潤滑剤とか、何か馴らすもん、ないのか? 」
「あ、あるわけ……ないでしょ……」
 経験すらないのに。
 再度試みようと、未だ猛々しいライナードの根元を握って、己の元へと引き寄せようとする。
「待て。動くなって。ベビーオイルとか、何か代用出来るもんは」
「オ、オリーブオイルなら……そこに……」
 言いながら、キッチンシンクの開き戸に目線を流す。
「待ってろ」
 レイノリアの手を除けると、ライナードはおもむろに立ち上がり、扉の向こうに消えた。がさがさと何やら漁っており、戻って来たときには手にオリーブオイルの瓶がある。
「俺の膝の上に乗れ。恥ずかしいなら、顔隠しとけ」
 レイノリアは素直に従い、体を対峙させ、恐る恐る跨る。顔を隠せと提案したライナードの意図を理解したのは直後だ。
 オリーブオイルでぬるついたライナードの太い人差し指が、レイノリアの固く拒絶する深淵の縁をなぞる。襞の凹凸を確認後、中へと差し込まれた。
 一本一本がいちいち太いライナードの指は、潤滑の代用の力を借りて、容易く侵入を果たした。内部の感触を確かめるようにゆっくりと指が円を描く。最初こそ異物感に張り詰めていた神経は、ねちゃねちゃと卑猥な音を立てる動きに次第に慣れ、そればかりか刺激を求める。物足りない、と脳が合図を送る。
 ひくつき、締めつける。ライナードの指にしっかりと伝わったのは明らかで、ニタリと人の悪い笑みで口元が歪んだ。
「誤解するな」
 指が二本に増やされる。
「え? 」
 うっすらとレイノリアは目を開ける。
 オリーブオイルを補充した三本目が襞を弄る。右手と左手、両方の指が同時にレイノリアの双丘を割って、確実に押し拡げられていく。
「俺達はお前を手離すなんて、これっぽっちも考えてない」
「嘘……だって……」
 右の人差し指一本だけが潜って、物足りなさにひくつく。
「何を勘違いしたかわからんが。お前は俺らの仲間だろうが」
「でも」
「俺が信じられないっていうのか」
「ああ! 」
 左右併せて三本一度に埋め込まれ、体が弓なりに反った。
「信じろ」
「あっ……ああ……」
 腰を掴まれ尻が浮いた。
 かと思えば真下に落とされる。
 宛てがわれた切っ先が一気に最奥を貫いた。狭道が一本の猛々しい杭でこれでもかと拓ける。圧迫は手加減なしで内臓を押し上げ、胃がぎゅうっと絞られた。ライナードの形通りに内部が変形し、蠕動する。
「ああ……最高だ……」
 自身を的確にぎゅうぎゅう締めつけるレイノリアに対し、ライナードは息を切れ切れにさせながら、賛辞を送る。
 容赦なく上下に揺すられ、真正面に向きあうがゆえ、まともに目が合う。
 レイノリアは首を左右に振った。
「い、嫌だ。は、恥ずかしい」
「ついさっきまで、俺にあんなことしてたのに? 」
 からかい混じりの吐息が耳を掠める。
 堪らずレイノリアは相手の首筋に顔を埋めた。汗で湿った匂いが鼻腔をくすぐる。
「顔、もっとよく見せろ」
 強引に襟を掴まれ、首元から離された。 
 意地悪な眼差しが、食い入るように覗き込んでくる。
 より深く突き上げられ、弓なりに弛緩した。
「やらしい目だな。いつもは犬みてえにキラキラ輝かせてるってのに」
 激しい動きはしない。
 ライナードのセックスの仕方は、じっくりと相手を責める執拗で粘着質なものだ。ゆっくりと内部を味わうように腰を回すと、押したり引いたりと波のように繰り返す。感覚の一つ一つを確認するやり方に、レイノリアは羞恥に耐え切れず歯を食い縛り、呻いた。
「いい眺めだな」
 いつもの飄々とした世話焼きでもなく、現場での厳しさでもない。
 配属されて一年、今まで見たこともない色気を含んだライナードの顔。ニタリと斜めに吊り上がる薄い唇に、頭がくらくらする。
「んん……ああ……もう……」
 刺激に狂わされる。擦られ、回され、内部がヒクヒクと痙攣する。腫れ上がった内部はライナードが動くたびに震え、中からじっとりと雫を垂らした。
 二人の重なった皮膚の上が、しっとりと濡れていた。
「感じてるのか? 」
 わかっているくせに、敢えて言葉にする。
 いじめっこの素質が充分備わっている。
 レイノリアは泣きたくなって、ライナードの声を無視した。
 すると、答えろと言わんばかりに一際激しく抉られ、呼吸が止まる。
「どうだ、レイノリア」
 いつもは、抑揚をつけずフルネームを連呼するくせに。
 余裕ぶった言い方に答えるつもりはない。
 あくまで意地を通すレイノリアの態度は、ライナードの欲望をますます煽った。
「ぁ……いや……」
 耳朶を甘く噛まれて痺れる。愉悦に浸る間もなく、今度は首筋を吸われる。触れられた部分に火がついた。熱い。熱くて堪らない。公爵夫人の話でしか知らない繋がりは、滅茶苦茶に転がり縺れ合って、泣いて喚いて、一種の格闘技紛いばかりだ。
 こんなにじわじわと侵食するようなセックスがあるなんて知らなかった。
「レイノリア……レイノリア……」
 がらがらに枯れた声は、確かに自分を呼んでいる。
 まるで呪文のように繰り返す、その声が次第に遠くなっていく。頭の中がかすむ。目の前に広がる闇。
 レイノリアは意識を手離した。
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