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第二章
執着の果て
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「あっ……」
袂をはだけさせられ、露わになった薄赤い乳首を真後ろから摘ままれる。尖った舌先が蠢く虫のように項を這い回して、吉森は堪らず女のように小さく喉元を振動させた。
「や……めろ……俺は……女じゃ、な……い」
「当然です。女なら、もっと触り心地が柔らかくて、何より色気がある」
「じゃ……あ。は、離……せ」
「拗ねなくてもいいでしょう。僕は女よりもあなたの方がいいと言っているんだ」
言って、森雪は裾を掻き分け、女体には決して有り得ない部分に指を添わせた。びくっと吉森の体が跳ねる。
「兄さんが望むなら、女達との関係を断ち切っても構わない。尤も、お互い遊びの延長でしかありませんでしたが。勿論、代わりは務めてもらいますよ」
「あっ……んん……」
官能を引き出す指遣いに、吉森はすっかり参ってしまっている。森雪の指が蓋をするように陰茎の先をぐりぐりと捏ね回した。思わず首を縦に振ってしまいかねない状況に喘ぐ。
「駄目……だ。半分は……血の……繋がりが……あるん……だ」
「所詮は男同士でしょう」
「余計……だ、駄目だ……ろ」
しどろもどろの反論を鼻で笑って一蹴すると、森雪は懐から小瓶を取り出し、その蓋を八重歯を使って器用に外した。ラベルには瓶付け油と記されている。
つい数年前に発売された、髪の艶を保つ画期的なその液体を、何故、このような状況の際にわざわざ出したのか。女への贈り物だとしても、何故、ここで包装を解いたのか。
「片方が女なら、子を孕む可能性がある。生まれて来る子供の先行きは不幸でしかない。その点、僕らにはその心配はない。何が問題あるっていうんです」
「お前が……相手だということ……自体……が……問題……だ……」
「いちいち、癇に障る男ですね」
開いた瓶の口から、とろりとした液体が糸を引くように森雪の掌に零れ落ちた。どんどん流れ落ち、仕舞に溢れて森雪の袖口から足元へと伝う。
森雪は瓶の蓋を開けたその理由を、この後の行為によって嫌というほどわからせた。
ぬるつく指先が吉森の臀部に直に触れ、大きく円を描いたことで、背筋が伸び上がった。
森雪の手はさらに双丘を割り、窪みに第一関節を押し込む。
「ひいっ」
潤滑剤としての代用である油のせいで、先日の仏間での戯れよりも、遥かに簡単に内部が受け入れてしまった。粘膜を絡みつかせ、吉森が喘いでいるうちに指の先はより奥深くへと潜る。堪らず壁に爪を立て、力なく下方へと体が滑って行く。膝が戦慄いて立っていられない。
「痛くないですか」
儀礼的に問いかけられたとしても、返事など不可能だ。
「い……いや……」
嫌だやめろと罵声を浴びせるはずが、出て来たのは甘く啜るような吐息。吉森の体は壁に押さえつけられ、頬に漆喰が冷たい。
そうこうしている間にも、指の本数はどんどん増やされ、いつしか三本目の指が他と同じように関節全てを呑み込んで、内部を引っ掻き、くの字に曲がる。
「んん……」
荒い息を吐き、苦悶の汗を散らして顎を仰け反らせる吉森からは、いつもの傲岸不遜がすっかり潜めてしまっている。
腿の間に森雪の片足が滑り込んだ。密着したことで、相手の膨らみがどれほどのものか嫌でも認識させられる。予想を遥かに凌ぐその大きさに、吉森の喉仏が上下した。
この先に一体何が起こるのか。それなりに経験の積んだ吉森ゆえ、すぐさま察知する。
「いや、嫌だ、いや……ここ、怖っ……」
呂律が回らず、涎を口端から垂らしながら、いやいやと首を振って拒絶する。
森雪は敢えて無視を決め込む。
一気に三本、指が引き抜かれた。
「ひあああ」
妙な具合に声を上げ、吉森は眉をきつく寄せる。強引な侵入は、引くときも同様だった。
「覚悟は出来ましたね」
尋ねはしたものの、ハナから応えなど期待していない一方的な口調だ。
吉森ごと抱き込むように左手で壁を支え、空いた方の手で吉森の右の膝裏に手を入れると、そっと持ち上げた。
「兄さん。ようやく僕の手中に」
途中で切れたうっとりした声は吐き出された息に混じり、熱さを伴って耳朶に吹き掛かる。
「あああああ!」
まるで炎が丸ごと入り込んできたような熱さだ。
悲鳴が室内に轟く。
圧迫感は半端ない。無理繰り捻じ込もうとされた穴は、一度は受け入れるために開いたものの、すぐさま異物を拒絶し、ぎゅうぎゅうと締めつける。それでも熱された杭で穿たれた。
「いやっ嫌だ!痛い!痛い痛い!」
生まれて初めての感覚に吉森の脳は混乱をきたし、このままでは身を滅ぼすと、わけもわからないまま、壁をよじ登ってでも、とにかく逃れるが勝ちだと手を伸ばす。
森雪は左手で腕を掴んで抑えつけた。
嬌声が散る。
森雪が全身を使って吉森を凌辱し、吉森は直腸が蠕動するたびに体を弛緩させた。
ぎちぎちと軋んで、こうなると吉森は泣き喚いて許しを請うしかない。律動は激しくなるばかりだ。
ハアハアと荒く掠れた息は、どちらの口元から漏れているのか判別出来なくなっている。
森雪は咥え込んだ吉森の締め付けが予想以上にきついようで、苦しそうに呻いては、そのたびに腰を打ち付けた。
「あっ……も、もう……」
ぞくり、と吉森に悪寒が走る。
「構いませんよ。僕も限界です」
「あっ……ああ……」
ぼろぼろと眦から涙を溢れさせ、吉森は射精する。
漆喰壁を汚し、太腿の内側まで広がって、白濁は脛を伝って足元に雫を垂らした。
「兄さん」
恍惚とした低い声の直後、吉森の体内がジワリと熱くなった。
袂をはだけさせられ、露わになった薄赤い乳首を真後ろから摘ままれる。尖った舌先が蠢く虫のように項を這い回して、吉森は堪らず女のように小さく喉元を振動させた。
「や……めろ……俺は……女じゃ、な……い」
「当然です。女なら、もっと触り心地が柔らかくて、何より色気がある」
「じゃ……あ。は、離……せ」
「拗ねなくてもいいでしょう。僕は女よりもあなたの方がいいと言っているんだ」
言って、森雪は裾を掻き分け、女体には決して有り得ない部分に指を添わせた。びくっと吉森の体が跳ねる。
「兄さんが望むなら、女達との関係を断ち切っても構わない。尤も、お互い遊びの延長でしかありませんでしたが。勿論、代わりは務めてもらいますよ」
「あっ……んん……」
官能を引き出す指遣いに、吉森はすっかり参ってしまっている。森雪の指が蓋をするように陰茎の先をぐりぐりと捏ね回した。思わず首を縦に振ってしまいかねない状況に喘ぐ。
「駄目……だ。半分は……血の……繋がりが……あるん……だ」
「所詮は男同士でしょう」
「余計……だ、駄目だ……ろ」
しどろもどろの反論を鼻で笑って一蹴すると、森雪は懐から小瓶を取り出し、その蓋を八重歯を使って器用に外した。ラベルには瓶付け油と記されている。
つい数年前に発売された、髪の艶を保つ画期的なその液体を、何故、このような状況の際にわざわざ出したのか。女への贈り物だとしても、何故、ここで包装を解いたのか。
「片方が女なら、子を孕む可能性がある。生まれて来る子供の先行きは不幸でしかない。その点、僕らにはその心配はない。何が問題あるっていうんです」
「お前が……相手だということ……自体……が……問題……だ……」
「いちいち、癇に障る男ですね」
開いた瓶の口から、とろりとした液体が糸を引くように森雪の掌に零れ落ちた。どんどん流れ落ち、仕舞に溢れて森雪の袖口から足元へと伝う。
森雪は瓶の蓋を開けたその理由を、この後の行為によって嫌というほどわからせた。
ぬるつく指先が吉森の臀部に直に触れ、大きく円を描いたことで、背筋が伸び上がった。
森雪の手はさらに双丘を割り、窪みに第一関節を押し込む。
「ひいっ」
潤滑剤としての代用である油のせいで、先日の仏間での戯れよりも、遥かに簡単に内部が受け入れてしまった。粘膜を絡みつかせ、吉森が喘いでいるうちに指の先はより奥深くへと潜る。堪らず壁に爪を立て、力なく下方へと体が滑って行く。膝が戦慄いて立っていられない。
「痛くないですか」
儀礼的に問いかけられたとしても、返事など不可能だ。
「い……いや……」
嫌だやめろと罵声を浴びせるはずが、出て来たのは甘く啜るような吐息。吉森の体は壁に押さえつけられ、頬に漆喰が冷たい。
そうこうしている間にも、指の本数はどんどん増やされ、いつしか三本目の指が他と同じように関節全てを呑み込んで、内部を引っ掻き、くの字に曲がる。
「んん……」
荒い息を吐き、苦悶の汗を散らして顎を仰け反らせる吉森からは、いつもの傲岸不遜がすっかり潜めてしまっている。
腿の間に森雪の片足が滑り込んだ。密着したことで、相手の膨らみがどれほどのものか嫌でも認識させられる。予想を遥かに凌ぐその大きさに、吉森の喉仏が上下した。
この先に一体何が起こるのか。それなりに経験の積んだ吉森ゆえ、すぐさま察知する。
「いや、嫌だ、いや……ここ、怖っ……」
呂律が回らず、涎を口端から垂らしながら、いやいやと首を振って拒絶する。
森雪は敢えて無視を決め込む。
一気に三本、指が引き抜かれた。
「ひあああ」
妙な具合に声を上げ、吉森は眉をきつく寄せる。強引な侵入は、引くときも同様だった。
「覚悟は出来ましたね」
尋ねはしたものの、ハナから応えなど期待していない一方的な口調だ。
吉森ごと抱き込むように左手で壁を支え、空いた方の手で吉森の右の膝裏に手を入れると、そっと持ち上げた。
「兄さん。ようやく僕の手中に」
途中で切れたうっとりした声は吐き出された息に混じり、熱さを伴って耳朶に吹き掛かる。
「あああああ!」
まるで炎が丸ごと入り込んできたような熱さだ。
悲鳴が室内に轟く。
圧迫感は半端ない。無理繰り捻じ込もうとされた穴は、一度は受け入れるために開いたものの、すぐさま異物を拒絶し、ぎゅうぎゅうと締めつける。それでも熱された杭で穿たれた。
「いやっ嫌だ!痛い!痛い痛い!」
生まれて初めての感覚に吉森の脳は混乱をきたし、このままでは身を滅ぼすと、わけもわからないまま、壁をよじ登ってでも、とにかく逃れるが勝ちだと手を伸ばす。
森雪は左手で腕を掴んで抑えつけた。
嬌声が散る。
森雪が全身を使って吉森を凌辱し、吉森は直腸が蠕動するたびに体を弛緩させた。
ぎちぎちと軋んで、こうなると吉森は泣き喚いて許しを請うしかない。律動は激しくなるばかりだ。
ハアハアと荒く掠れた息は、どちらの口元から漏れているのか判別出来なくなっている。
森雪は咥え込んだ吉森の締め付けが予想以上にきついようで、苦しそうに呻いては、そのたびに腰を打ち付けた。
「あっ……も、もう……」
ぞくり、と吉森に悪寒が走る。
「構いませんよ。僕も限界です」
「あっ……ああ……」
ぼろぼろと眦から涙を溢れさせ、吉森は射精する。
漆喰壁を汚し、太腿の内側まで広がって、白濁は脛を伝って足元に雫を垂らした。
「兄さん」
恍惚とした低い声の直後、吉森の体内がジワリと熱くなった。
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