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最高の贈り物3※

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「経験は浅いくせに、感度は高いのだな」
 サーフェスの客観的な感想に、たちまちマーレイは顔を曇らせる。
「あ、あなたのせいですわ」
「私の? 」
「ええ」
 彼とこうなるまで、官能とは無縁だった。
 バルモアと婚約していたときは、いづれは結婚し、そうすれば子を成すこととなるだろうことはわかっていたものの、それはあくまで血筋を後世へと引き継ぐ儀式。与えられた責務だ。
 そのような観点からでしかなかったから、睦言に感情など持つはずがない。教科書通りになぞって、義務は果たされるのだと信じてやまなかった。
 だが、サーフェスと出会い、そんなマーレイの考え方は覆されてしまった。
 避妊しているのだから、子孫繁栄など出来っこない。
 それなのに、相手と深く繋がりたい。
 そこには、義務などない。
 ただ、愛してほしい。切実な願いだ。
「マーレイ。もっと上に」
 サーフェスは命じた。
「で、ですが。そうすれば」
「わかっているなら、早くしたまえ」
 彼の意図していることを察したマーレイは、一度は抗ったものの、結局は相手のなすがまま。
 恐る恐る腰をずらすと、彼の顔の上に跨ってみせた。
「あ、ああ。サーフェス様」
 マーレイはいやいや、と首を横に振った。
 サーフェスは器用にマーレイのドロワーズを脱がしにかかる。いやいやと首を振っているうちに、薄いリネン地は絨毯へと放り投げられていた。
 サーフェスの目に、マーレイの秘部が晒される。
 マーレイはベッド柵を掴むや、ぎゅっと目を閉じ、あまりの羞恥に耐え切れず、血が滲むほど唇を噛み締めた。
 彼の指先が体の裂け目を押し開いて、ピンクの花弁を曝け出す。サーフェスは迷いなくそこに舌を這わせた。
「い、いやあ! 」
 びくり、と痙攣する。
 熱を帯びた舌先はまるで体から切り離されて意思を持った生き物のように、マーレイの敏感な部分を刺激し、縦横無尽に蠢く。
「サーフェス様……」
 マーレイは天を仰ぎながら、息も切れ切れに喘いだ。
「サーフェス様……サーフェス様にとって、私は何者ですか……? 」
 これは禁句だ。
 マーレイはあくまで恋愛の指南役。
 サーフェスはジゼルとの仲を深めるために、マーレイを利用しているに過ぎない。
 答えはわかっているものの、聞かずにはいられない。
 サーフェスはふと動きを止めた。
「私は友人ですか? 」
 以前、彼はマーレイのことを友人以上と口にした。
 友人以上だが、恋人未満。
 だが、こうしてベッドを共にしており、激しい行為はとても友人同士が成すことではない。
 かといえど、愛人にすらなれない。
 マーレイの眦に涙が浮く。
「愛している」
 サーフェスはするりと言葉を舌先に乗せた後、すぐにハッと我に返ったように身を強張らせた。
 しばしの逡巡。
「君が教えたのだろう? ベッドでの常套文句を」
 飛び出した言葉は、マーレイに絶望感しか与えない。
 最後まで彼の心は手に入れられなかった。
 彼の眼差しはジゼルにしか向いていない。
 ジゼルは、マーレイではない。
 別物の存在だ。
「愛してる。マーレイ」
 サーフェスは残酷な甘い台詞を繰り返す。
 そして、絶望しか残されていないマーレイの体から官能を引き出すために、舌先を尖らせ、ぴちゃぴちゃとわざと卑猥な音を響かせ執拗に攻めたてた。






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