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最高の贈り物1※
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風が頬を過った。
そう思ったときには、すでにマーレイはサーフェスから引き剥がされ、彼によって位置を入れ替えられていた。
どすん、と背中にドアが硬く当たる。
サーフェスは両手でマーレイを挟み込むと、真正面から凝視してきた。
「サーフェス様。左肩にあまり力を込めるのはいけませんわ」
マーレイはびっくりし過ぎて、逆に冷静に彼を諭してしまう。
「そんなことは、今はどうだって良い」
早口で遮ると、サーフェスはマーレイに鼻先が当たるくらいまで距離を詰めた。
「私をこんなふうにした責任を負え」
背後がドアであり、サーフェスに両脇を挟まれてしまい、逃げ場はない。
「な、何のことでしょうか? 」
板についた笑顔を張り付かせるマーレイ。感情を表に出さないその微笑は、精巧な人形のようでさえある。
「しらばっくれるな。背中から手を回してずっと私の臍の下を弄っていただろうが」
「し、知りませんわ、そのようなこと! 」
精巧な人形の頬がたちまち上気した。
サーフェスは白い目を向けた。
「よく言えたものだな。こんなふうに……」
言うなりマーレイの手を掴むと、彼が主張するその場所へと誘導される。
「な、何をなさるの! 」
覚えのある硬質さは、彼の背から回した手を持て余した先にあったものだ。その正体を知り、赤面する。
「け、決してわざとでは! 」
「弄っていたのは認めるのだな」
「そ、それは。あなたを止めることに必死で」
とにかくハンスの元へ疾走しないようにと、それしかなかった。手の置き所など、考えすら及ばない。
「その目的は達成されたな。ハンスへの怒りよりも、別のことに意識を持っていかれたからな。君の思惑通りに」
「そ、そのような下心などございません! 」
マーレイはハンカチーフをぎゅうぎゅうと左右に引っ張る。
そんな彼女の怒りを、サーフェスは鼻で笑って一蹴した。
「私に恋愛の指南をしてくれるのだろう? 」
ぎくり、とマーレイの身が強張る。
赤みを帯びていた顔からはどんどん血が引いていき、すぐさま真っ白に塗り替えられた。
「そ、その話は終わったことでは? 」
「いつ? 誰が終わらせると言った? 」
挑発するようにサーフェスはマーレイの瞳を覗き込む。
「で、ですが……私は……」
恋愛指南など不可能な、男性経験皆無だと発覚したばかり。おまけに、『或る愛の軌跡』なる小説をなぞっているだけだとも。
「マーレイ。『はい』か『いいえ』のどちらかしかない。後者であるなら、私は紳士的に君に相対する」
『いいえ』なんて言えるわけがない。
それがマーレイが寝室を訪ねた目的だからだ。
もし、その気がないなら、ケアランを付き添わせて水差しを運んでいる。ベッドの住人と化していた昨日、一昨日は例外として。淑女たるもの、誤解を生むような行為は慎まなければならない。
サーフェスは乙女心が何もわかっていない。
むしろ彼は言葉で証明して欲しがっている。
彼女の返答が自分が望んでいるものか、そうでないのか。
傲慢な言い方とは裏腹に、彼の凛々しい唇は微かに戦慄いていた。
「『はい』」
躊躇いがちにマーレイは頷く。
サーフェスの目の色が変わった。
標的を捉えたライオンさながら、彼はアドレナリンを全開にしてマーレイの体に覆い被さる。
荒々しい息が、首筋を這った。
「サーフェス様? 」
余裕綽々の紳士の化けの皮が剥がれ、そこにいたのは獰猛な獣だ。
「サーフェス様! 」
彼の指がスカートの中へと差し入れられた。マーレイの抗議などお構いなしで、指はドロワーズの隙間へと伸びていく。
「あ、ああ! 」
マーレイは顎を仰け反らせた。
サーフェスだけが知る秘所に指が辿り着き、柔らかなびらんを指先で摘まれる。異性の存在を覚えているそこは、またもやの予感に反応して、早速と準備に入り始めた。
彼の指先に、じわりと温かな滑りが絡みつく。
マーレイは何とももどかしい気持ちになり、身を捩った。
サーフェスは目を眇め、指を戻す。
「マーレイ! 」
辛抱が事切れたように、トラウザーの布地を押し上げている原因を引き抜くと、捲っていたスカートの中へと潜り込ませた。ドロワーズの前部分から直に逆三角形の整った和毛に先端を擦りつける。
湿潤する互いのもので、彼がほんの少し下方へ動かせば、すぐにマーレイに飲み込ませることが出来る。
ゆっくりと表面を滑っていき、間もなく目的とした場所へというところだった。
「うっ……」
サーフェスが何やら口中で罵ったかと思えば、呼吸も出来ないくらいに強く抱きしめられていた。マーレイの首筋に顔を埋め、小さな呻き声をあげる。
「あ、ああ」
マーレイが喘いだ。
臍のすぐ下がやけに生温かい。それは、彼女の臍から太腿の内側へとゆっくりと伝って行った。
そう思ったときには、すでにマーレイはサーフェスから引き剥がされ、彼によって位置を入れ替えられていた。
どすん、と背中にドアが硬く当たる。
サーフェスは両手でマーレイを挟み込むと、真正面から凝視してきた。
「サーフェス様。左肩にあまり力を込めるのはいけませんわ」
マーレイはびっくりし過ぎて、逆に冷静に彼を諭してしまう。
「そんなことは、今はどうだって良い」
早口で遮ると、サーフェスはマーレイに鼻先が当たるくらいまで距離を詰めた。
「私をこんなふうにした責任を負え」
背後がドアであり、サーフェスに両脇を挟まれてしまい、逃げ場はない。
「な、何のことでしょうか? 」
板についた笑顔を張り付かせるマーレイ。感情を表に出さないその微笑は、精巧な人形のようでさえある。
「しらばっくれるな。背中から手を回してずっと私の臍の下を弄っていただろうが」
「し、知りませんわ、そのようなこと! 」
精巧な人形の頬がたちまち上気した。
サーフェスは白い目を向けた。
「よく言えたものだな。こんなふうに……」
言うなりマーレイの手を掴むと、彼が主張するその場所へと誘導される。
「な、何をなさるの! 」
覚えのある硬質さは、彼の背から回した手を持て余した先にあったものだ。その正体を知り、赤面する。
「け、決してわざとでは! 」
「弄っていたのは認めるのだな」
「そ、それは。あなたを止めることに必死で」
とにかくハンスの元へ疾走しないようにと、それしかなかった。手の置き所など、考えすら及ばない。
「その目的は達成されたな。ハンスへの怒りよりも、別のことに意識を持っていかれたからな。君の思惑通りに」
「そ、そのような下心などございません! 」
マーレイはハンカチーフをぎゅうぎゅうと左右に引っ張る。
そんな彼女の怒りを、サーフェスは鼻で笑って一蹴した。
「私に恋愛の指南をしてくれるのだろう? 」
ぎくり、とマーレイの身が強張る。
赤みを帯びていた顔からはどんどん血が引いていき、すぐさま真っ白に塗り替えられた。
「そ、その話は終わったことでは? 」
「いつ? 誰が終わらせると言った? 」
挑発するようにサーフェスはマーレイの瞳を覗き込む。
「で、ですが……私は……」
恋愛指南など不可能な、男性経験皆無だと発覚したばかり。おまけに、『或る愛の軌跡』なる小説をなぞっているだけだとも。
「マーレイ。『はい』か『いいえ』のどちらかしかない。後者であるなら、私は紳士的に君に相対する」
『いいえ』なんて言えるわけがない。
それがマーレイが寝室を訪ねた目的だからだ。
もし、その気がないなら、ケアランを付き添わせて水差しを運んでいる。ベッドの住人と化していた昨日、一昨日は例外として。淑女たるもの、誤解を生むような行為は慎まなければならない。
サーフェスは乙女心が何もわかっていない。
むしろ彼は言葉で証明して欲しがっている。
彼女の返答が自分が望んでいるものか、そうでないのか。
傲慢な言い方とは裏腹に、彼の凛々しい唇は微かに戦慄いていた。
「『はい』」
躊躇いがちにマーレイは頷く。
サーフェスの目の色が変わった。
標的を捉えたライオンさながら、彼はアドレナリンを全開にしてマーレイの体に覆い被さる。
荒々しい息が、首筋を這った。
「サーフェス様? 」
余裕綽々の紳士の化けの皮が剥がれ、そこにいたのは獰猛な獣だ。
「サーフェス様! 」
彼の指がスカートの中へと差し入れられた。マーレイの抗議などお構いなしで、指はドロワーズの隙間へと伸びていく。
「あ、ああ! 」
マーレイは顎を仰け反らせた。
サーフェスだけが知る秘所に指が辿り着き、柔らかなびらんを指先で摘まれる。異性の存在を覚えているそこは、またもやの予感に反応して、早速と準備に入り始めた。
彼の指先に、じわりと温かな滑りが絡みつく。
マーレイは何とももどかしい気持ちになり、身を捩った。
サーフェスは目を眇め、指を戻す。
「マーレイ! 」
辛抱が事切れたように、トラウザーの布地を押し上げている原因を引き抜くと、捲っていたスカートの中へと潜り込ませた。ドロワーズの前部分から直に逆三角形の整った和毛に先端を擦りつける。
湿潤する互いのもので、彼がほんの少し下方へ動かせば、すぐにマーレイに飲み込ませることが出来る。
ゆっくりと表面を滑っていき、間もなく目的とした場所へというところだった。
「うっ……」
サーフェスが何やら口中で罵ったかと思えば、呼吸も出来ないくらいに強く抱きしめられていた。マーレイの首筋に顔を埋め、小さな呻き声をあげる。
「あ、ああ」
マーレイが喘いだ。
臍のすぐ下がやけに生温かい。それは、彼女の臍から太腿の内側へとゆっくりと伝って行った。
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