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誘惑の朝3※

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 心臓の音がいやに耳に障る。
 鼓膜が破れそうなくらい大きい。
 明るめの緑のモスキートネットが張られたベッドに仰向けに寝そべったマーレイには、スプリングの良くきいたベッドの硬さを堪能する余裕などない。
 膝に跨ってきたサーフェスの、次の行動が気になって仕方なかったからだ。
「さ、触っても良いか」
 などと遠慮がちに乳房すれすれに手を差し出してくる。
「……いちいち尋ねることではありません」
「そ、そうか」
 言いつつ、手は宙を上下するばかりで一向に素肌まで降りてはこない。
 マーレイは、恨みがましく彼を睨んだ。
「わ、私ばかり不利ですわ」
「な、何だと? 」
「サーフェス様も同じように」
 マーレイは上目遣いに彼を見やった。
 サーフェスは未だにきっちりと濃紺のフロックコートを着こなしている。
「あ、ああ。そうだな」
 彼女だけが上半身を晒していることにようやく気づき、苦笑いしながらベッドから離れた。タイを引き抜く。
 まるで手品のような素早さでフロックコートの袖を抜き、シャツのボタンを外し、鍛え抜かれた胸板を露わにする一連の動作に、マーレイは息を呑み、瞬きさえ忘れて魅入ってしまった。
 現れたのは、古代の闘いを司る神のごとくに均整のとれた上半身。
 ごくり、とマーレイは唾を飲み下す。
 再びマットレスが二人分の重みで沈んだ。
「う、上を脱いだぞ」
「え、ええ」
「で、どうすれば良いのだ? 」
「え? 」
「し、下は」
 サーフェスの視線はマーレイのズロースに。
 若いレディが期待を込めて選ぶようなレースで飾られた可愛らしさなど全くない、至って機能を優先させたシンプルなもの。色気も何もあったものではない。
 マーレイは恥ずかしさを感じながらサーフェスの反応を窺えど、彼は初めての経験に下着のデザイン云々どころではないようだ。不自然なくらいに目が泳いでいる。
「そ、そうですわね。ぬ、脱ぎ……ますか? 」
「あ、ああ」
 ズロースの紐に節の張った指が伸びる。
「じ、自分でいたしますわ……」
「い、いや。こういうのは私がリードして」
「そ、そうですわね? 」
 そうなのか? といった疑問を解決する手段も知らず、マーレイは成すがままにされている。
 ズロースが引き抜かれ、ついにマーレイの全てが琥珀の瞳に晒されてしまった。
 髪と同じ色をした臍の下の和毛は、綺麗な逆三角形に整えられ、興奮が滑りとなって湿り気を帯びていた。
 湯浴みのメイドにさえ見せたことのないその場所は、夫となる男性が初めて目にするはずだった。
 誰の手にも触れさせたことのないマーレイの秘部は、まだ未熟で無垢な色をしている。
 手慣れた者が見れば、一目で穢されてはいないと気づいただろう。
 しかし、サーフェスは女性との経験が皆無。
 マーレイが処女であるとは知る由もない。
「あ、あまりジロジロ見るのは無礼ですわよ」
「す、すまない」
 美術品の石膏像でしか目にしたことのないその部分を凝視し、羞恥に苛まれたマーレイから苦情を受けるまで、サーフェスは食い入るようにそこばかりに視線を集中させていた。

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