上 下
23 / 81
第2章:オベール家の窮地

11:抜け道探し

しおりを挟む
 ローズマリーとクロードは火の国:イズモ特有の暖房器具であるコタツとやらに下半身を入れつつ、コタツ机の上にある鍋の中身を箸でつついて、ホフホフと食べていた。コタツのサイズはかなり小さめであり、ちょっと足を動かすとロージーの膝がこつんとクロードのスネに当たってしまう。

 ローズマリーはコタツって、何だかやらしいな……と思いながらも、あまり気にしないようにしつつ、鍋から小鉢に肉と白菜を移しながら、もぐもぐと食べる。

「あの、その……。ヌレバ師匠に勧められてコタツを購入したのはいいけど、ちょっと、小さすぎたかな?」

 クロードが何を言わんとしているのかを、ローズマリーが一瞬で理解し、顔をボンッと赤らめるのである。

「クロードのスケベっ! わたしの足がクロードの足に当たるのがそんなに嬉しいの!?」

 ローズマリーのツッコミを喰らったクロードが右手に箸を。左手に小鉢を持ったまま、ははっと照れ臭そうに笑うのであった。ふたり用サイズのコタツということもあり、お互い、足を延ばした状態には出来ない。それゆえ、ローズマリは正座を崩した感じの女の子座りで、対してクロードは胡坐でコタツ布団の中に足をつっこんでいたのである。

 コタツを買った当初はクロードが遠慮がちに腰を引けさせていたので、クロードの腰の辺りで布団と床に隙間が出来て、コタツ内の熱が外に逃げ出してしまって、ローズマリーの足はちっとも温もらなかった。

 コタツ内に入り込む寒気に業を煮やしたローズマリーは、クロードに自分の膝とクロードのスネが当たるくらいにコタツの中に足をつっこみなさいよ! と命令したことがあった。それからクロードは『罰』を当てれませんようにと祈りながら、深々とコタツの中に足を入れるようになったのである。

 コタツの中では、2人の足と足はほぼ密着している形となっており、鍋をつつこうとするたびに、お互いの足はこつんと軽く当たり合う。クロードとしては、ロージーの膝が自分のスネに当たり、こそばゆく感じるのであった。

「なんか、いつもより、ロージーを近く感じられるっていうか……。コタツと鍋って、何だか良いな!?」

 クロードが照れ臭そうでありながらも、破顔してローズマリーに言いのける。

「ど、ど、ど、どうせなら、お互い、足を延ばしてみ、み、みる? ほ、ほ、ほら。わたしが左側に向かって足を延ばして、クロードがわたしから見て、右側に足を延ばせば、この小さなコタツでも上手いこといけると、お、お、思うのよね!?」

 それは互いの足と足を並べ合い、もっと体温を感じ合おうという、ローズマリーなりの精いっぱいのクロードへの誘いであった。クロードもロージーが何を言わんとしているかは十分に理解しており、ごくりと唾を飲み込んでしまうのである。

「い、良いのかな? ヤオヨロズ=ゴッドが怒って、俺に『罰』を与えてきたりしないかな?」

「コタツの中で足を触れ合うのは、し、し、仕方ないことでしょ!? でも、コタツが上に乗っている鍋ごと噴き飛ばないように、まず、食事を済ませてしまいましょ!?」

「お、おう、そうだな……。しかも、そうなった時は鍋の中身が全部、俺のほうに向かってくるのは自明の理だもんな……」

 『婚約』時の『誓約』を破るような行動を起こせば、『罰』が降りかかるのは基本的に男性側のみであることが、ローズマリーとクロードの経験則でわかってきたことである。2人は昼食の分を食べ終わった後、半分ほど中身が残った土鍋に厚手の蓋を乗せて、台所の作業スペースにあるテーブル上に移すのであった。

 その後、コタツの両端で対面に正座し合う2人である。まずはローズマリーが足を延ばした状態でコタツの中に足をつっこむのであった。

「じゃ、じゃあ、次はクロードが足を延ばした状態で入れてみて?」

 お、おう……とクロードは足をくずし、かがみ込んだ状態でコタツ布団をめくる。するとだ。コタツの中では厚手で長めのチェックのスカートがめくり上がり、薄手の肌色のストッキングに包まれたロージーの足が覗き見えるのであった。

 クロードはそのなまめかしい両足(特に太もも)を注視してしまい、またしてもごくりと生唾を飲み込んでしまう。

「ちょ、ちょっと! なんで、そこで生唾をごくりって飲んでるのよっ! このスケベっ!」

「い、いやいや。俺はどうやって、ロージーの足に触れないように自分の足をつっこんだら良いかな!? って思って位置取りを考えていてだな!?」

「ほ、本当にそうなの……?」

 ローズマリーの訝し気な視線を感じるクロードであるが、コタツの中で、ストッキング越しではあるが、彼女の太ももを眺められることに心はかなり踊っていたのである。

 いかんいかん。これ以上、眺めていたら、確実にヤオヨロズ=ゴッドから『罰』を受けてしまうと思ったクロードは惜しいと思いながらも、足を延ばした状態でコタツの中に自分の足をおそるおそる入れていくのである。

 今、コタツの中ではロージーの右足とクロードの右足が密着している形になっていた。これにより、ローズマリーの打ち立てた仮説が正しいことが実証されたことになる。

「ほらっ! やっぱり、コタツの中で足を触れ合うのはヤオヨロズ=ゴッドでも致し方ないって思ってくれているのよっ! クロードは痛みとかを感じないでしょ?」

「あ、ああ……。そうだな……。意外といえば意外な気もするけど、コタツの中で足が触れ合うのはしょうがないことだもんなっ! いやあ、ヤオヨロズ=ゴッドも気が利くってもんだ……」

 2人はヤオヨロズ=ゴッドのお目こぼしをありがたいわと感謝しつつ、お互いを求め合うかのように右足同士をもぞもぞと触れ合わせるのであった。

 ローズマリーはうふふと笑みを浮かべながら、エイエイッ! と右足の甲の右側部分でクロードの太ももをこする。クロードもエヘヘと破顔しながら負けじと同じようにロージーの太ももに右足の甲でこするのであった。

 さらにローズマリーが調子に乗って、深々とコタツの中に足を入れた状態で、かかとでぐりぐりとクロードの太ももの上側をこすっていた。しかし、ここでアクシデントが起きる。ロージーのかかとがクロードの股間にヒットしたのである。しかも、クロードは密かに股間を膨らませていたのだ。

(え!? この硬いのは何っ!?)

 ロージーは太ももの感触から、いきなり違和感を感じてしまう。ズボン越しとはいえ、彼女は生まれて初めて男性のソレに触れたのである。ロージーが違和感の正体に気づいた次の瞬間であった……。

「痛い! 竿が折れる! 折れる! 折れる! 袋の中身が潰れるううう!」

 クロードはいきなり襲ってきた股間への強烈な痛みで口から泡を吹き、股間を両手で押さえながら気絶するのであった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界国盗り物語 ~野望に燃えるエーリカは第六天魔皇になりて天下に武を布く~

ももちく
ファンタジー
天帝と教皇をトップに据えるテクロ大陸本土には4つの王国とその王国を護る4人の偉大なる魔法使いが存在した 創造主:Y.O.N.Nはこの世界のシステムの再構築を行おうとした その過程において、テクロ大陸本土の西国にて冥皇が生まれる 冥皇の登場により、各国のパワーバランスが大きく崩れ、テクロ大陸は長い戦国時代へと入る テクロ大陸が戦国時代に突入してから190年の月日が流れる 7つの聖痕のひとつである【暴食】を宿す剣王が若き戦士との戦いを経て、新しき世代に聖痕を譲り渡す 若き戦士は剣王の名を引き継ぎ、未だに終わりをしらない戦国乱世真っ只中のテクロ大陸へと殴り込みをかける そこからさらに10年の月日が流れた ホバート王国という島国のさらに辺境にあるオダーニの村から、ひとりの少女が世界に殴り込みをかけにいく 少女は|血濡れの女王《ブラッディ・エーリカ》の団を結成し、自分たちが世の中へ打って出る日を待ち続けていたのだ その少女の名前はエーリカ=スミス とある刀鍛冶の一人娘である エーリカは分不相応と言われても仕方が無いほどのでっかい野望を抱いていた エーリカの野望は『1国の主』となることであった 誰もが笑って暮らせる平和で豊かな国、そんな国を自分の手で興したいと望んでいた エーリカは救国の士となるのか? それとも国すら盗む大盗賊と呼ばれるようになるのか? はたまた大帝国の祖となるのか? エーリカは野望を成し遂げるその日まで、決して歩みを止めようとはしなかった……

喫茶店のマスター黒羽の企業秘密3

天音たかし
ファンタジー
沖縄の琉花町で喫茶店を経営する黒羽秋仁は、異世界トゥルーで食材の仕入れを行っている。ある日、トゥルーの宿屋にてウトバルク王国の女王から食事会の誘いを受ける。 黒羽は緊張しながらも、相棒の彩希と共にウトバルクへと旅立つ。 食事会へ参加した黒羽は、事故で異世界に渡ってしまった沖縄出身の料理人「山城誠」と出会う。彼の腕前に感動した黒羽は、山城と交流を深めていく。 しかし、彼は女王暗殺を目論んだ犯人として、投獄されてしまう。黒羽は彼の無実を信じ、動き出した。 ――山城の投獄、それはウトバルク王国の影に潜む陰謀の序章に過ぎなかった。 ※前作 「喫茶店のマスター黒羽の企業秘密」 「喫茶店のマスター黒羽の企業秘密2」 「喫茶店のマスター黒羽の企業秘密 外伝~異世界交流~」 こちらも公開していますので、よろしくお願いします!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

変態の烙印 ーー平凡男子の無茶ブリ無双伝ーー

おもちさん
ファンタジー
■あらすじ……  凄く雑な流れで同じ世界へと転生した青年レイン。 また同じく雑に、世界の命運をフワッとしたノリで託される。 しかし、彼にとって一番の問題は、別の国に転生したことでも、命がけの戦闘でもない。 本来なら味方となるはずの、彼を取り巻く街の人たちとの軋轢だった。 ブラッシュアップしての再投稿です。  エブリスタでも掲載中です。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...