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第10章:神槍
第4話:モトカード流拳法 第3条
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ロック=イートは機をうかがい続けた。顔の前で両腕を並行にし、首から下を犠牲にしてでも、自分の意識を保とうとしたのである。観客たちはロック=イートのロケット・テツザンコウをその眼に焼き付けていたために、ロック=イートが追い詰められた今の状況でも何かをしてくれると信じていた。そのため、観客たちは惜しみなくロック=イートに声援を送り続けたのである。
(なんだか、自分が悪者のように感じますねえ……。もう少し、神槍たる自分を応援してくれても良いんですけど……)
神槍:ブリトニー=ノーガゥはたまらず苦笑してしまう。槍の穂先をロック=イートに叩きこめば叩き込むほど、観客たちの声援の量はロック=イート側に傾いていってしまう。ロック=イートなら奇跡を起こしてくれるのはないだろうかという期待を込めてのモノだ。神槍:ブリトニー=ノーガゥはロケット・テツザンコウを喰らってしまってからは真面目に戦っている。そのため、ロック=イートが自分に対してまともに反撃できるはずも無いと考えていた。
しかしながら、穂先を木製のカバーで覆っているこの事態には飽き飽きとしていた。いっそ、このカバーを外して、ロック=イートの身体を切り刻んでしまいたい気持ちになってしまう。それほどまでにロック=イートが粘るのである。身体全体を突かれまくっているというのに、彼は顔を覆い隠している両腕の隙間からギラギラとした視線を自分に向けてきている。まるで狼が喉笛をかっきらんとばかりに獲物を品定めしているようにも見えたのだ。狼視眈々。ロック=イートのその視線はそう訴えかけている。そんな気がしてたまらない神槍:ブリトニー=ノーガゥであった。
そして、その神槍:ブリトニー=ノーガゥの予感は的中することとになる。ロック=イートが左右に身体をゆらゆらと揺らし始めたのである。そこから、ブリトニー=ノーガゥの突きはたった数発であるが外れることとなる。彼は最初、たまたま勘が当たっただけだろうとタカをくくっていたのだが、自分の突きが外れる数が増していくことでそれは確信へと移り変わっていく。
思わず神槍:ブリトニー=ノーガゥは満面の笑みとなってしまう。この短時間でロック=イートが成長したとはさすがに思えない。ならば、どうやって彼は自分の突きを回避できるようになったのか? その答えは……
「ハハッ! キミってヒトはすごいですね。動体視力を跳ね上げたわけではなくて、自分の突きの軌道に慣れたってことですかっ!」
ロック=イートは決して『見切り』を高めたのではない。『殴られ慣れた』という暴挙に等しい行動に徹していたのだ。散々に神槍:ブリトニー=ノーガゥの突きをその身体全体で受け止めることにより、無理やり彼の癖を感じ取ったのである。こればかりは神槍:ブリトニー=ノーガゥも呆れを通り越して笑う他無かった。自分の千差万別の突きを拳聖:キョーコ=モトカードのように見切るのではなく、慣れるという方法に出た若き半狼半人に尊敬の念を抱きそうになってしまう。
しかし、それはあくまでも抱きそうになるだけで止まってしまう。事実、回避数が増えてきたからといって、ロック=イートは攻撃には転じられていないのだ。ここで起死回生の一撃でも放つことが出来るのであれば、神槍と呼ばれたこの男もロック=イートを心から認めざるをえないであろう。ブリトニー=ノーガゥは惜しむ心が多少なりともあったが、勝負を決めてしまおうと決意する。
「ブリトニー流槍術 秘技:さそり座!!」
神槍:ブリトニー=ノーガゥは的を絞ることに努めた。彼の突きは全体的に相手の全身を穿つ技ではあるが、今は顔をガードしている両腕へとそのほとんどを費やしたのである。ロック=イートが強固に護る顔をがら空きにさせて、そこに意識を寸断する一撃を加えて終わりにしてしまおうとしたのであった。
ロック=イートが顔の前で並行にしている両腕をこじ開けるように、その隙間に穂先を突っ込む。その時であった。今まで耐え忍んでいたロック=イートが吼えたのだ。
「モトカード流拳法 第3条:篤く拳聖を敬え 派生:即ち拳聖が最強也……。先祖返り発動!!」
ロック=イートがそう叫ぶや否や、彼の身体を纏う筋肉が一気に肥大化する。それは生身の左腕も同様であり、左腕が肥大化することで両腕の隙間は埋まってしまうこととなる。神槍:ブリトニー=ノーガゥはその隙間に穂先を横にして突っ込んだのだ。そして、ロック=イートの右の義腕と肥大化した左腕の間で挟み込まれることとなる。しかも、木製のカバーはその圧力に屈し、砕け散ってしまうこととなる。
神槍:ブリトニー=ノーガゥはこの事態に陥ってもまだ上覧武闘会のルールを順守してしまった。そのため、必要以上に彼を傷つけぬために槍を突きこまずに引こうとしてしまう。しかし、槍の穂先を自分の手元に引き寄せようとしたが、がっちりとロック=イートの両腕でロックされており、ピクリとも動かない。そこで膠着状態に陥ると思われたのだが、ロック=イートが動きを見せる。
ロック=イートは少しだけ両腕から力を抜く。それにより神槍:ブリトニー=ノーガゥは槍を引っ込めれるようになるのだが、その前にロック=イートが両腕を並行に保ったまま前へと突っ込んできたのである。そのため、ロック=イートの右頬は聖槍:ロンギヌスの穂先で切れてしまうのであるが、ロック=イートは右頬から血を流しながらも、そのままの体勢で突っ込んでいく。
神槍:ブリトニー=ノーガゥは彼の両腕で槍を真っ直ぐに固定させられたまま、ロック=イートの接近を許す形となる。彼我との距離が1メートル以内にまで縮まったと同時にロック=イートは槍から両腕を離す。そして、左足で地面を力強く蹴り、右足でその勢い全てを石畳へと叩きつける。
ロック=イートは右の脇腹付近に戻した右の義腕を神槍:ブリトニー=ノーガゥの顔面へと真っ直ぐに突き出す。この時、神槍:ブリトニー=ノーガゥの顔からは余裕は全て吹き飛んでいた。優し気な眼が特徴のこの男であったが、烈火が広がったかのような目つきへと変わっており、射貫くようにロック=イートを見据えていた。そして、その力強い眼でロック=イートが放つロケット・パンチを睨みつけるのであった……。
(なんだか、自分が悪者のように感じますねえ……。もう少し、神槍たる自分を応援してくれても良いんですけど……)
神槍:ブリトニー=ノーガゥはたまらず苦笑してしまう。槍の穂先をロック=イートに叩きこめば叩き込むほど、観客たちの声援の量はロック=イート側に傾いていってしまう。ロック=イートなら奇跡を起こしてくれるのはないだろうかという期待を込めてのモノだ。神槍:ブリトニー=ノーガゥはロケット・テツザンコウを喰らってしまってからは真面目に戦っている。そのため、ロック=イートが自分に対してまともに反撃できるはずも無いと考えていた。
しかしながら、穂先を木製のカバーで覆っているこの事態には飽き飽きとしていた。いっそ、このカバーを外して、ロック=イートの身体を切り刻んでしまいたい気持ちになってしまう。それほどまでにロック=イートが粘るのである。身体全体を突かれまくっているというのに、彼は顔を覆い隠している両腕の隙間からギラギラとした視線を自分に向けてきている。まるで狼が喉笛をかっきらんとばかりに獲物を品定めしているようにも見えたのだ。狼視眈々。ロック=イートのその視線はそう訴えかけている。そんな気がしてたまらない神槍:ブリトニー=ノーガゥであった。
そして、その神槍:ブリトニー=ノーガゥの予感は的中することとになる。ロック=イートが左右に身体をゆらゆらと揺らし始めたのである。そこから、ブリトニー=ノーガゥの突きはたった数発であるが外れることとなる。彼は最初、たまたま勘が当たっただけだろうとタカをくくっていたのだが、自分の突きが外れる数が増していくことでそれは確信へと移り変わっていく。
思わず神槍:ブリトニー=ノーガゥは満面の笑みとなってしまう。この短時間でロック=イートが成長したとはさすがに思えない。ならば、どうやって彼は自分の突きを回避できるようになったのか? その答えは……
「ハハッ! キミってヒトはすごいですね。動体視力を跳ね上げたわけではなくて、自分の突きの軌道に慣れたってことですかっ!」
ロック=イートは決して『見切り』を高めたのではない。『殴られ慣れた』という暴挙に等しい行動に徹していたのだ。散々に神槍:ブリトニー=ノーガゥの突きをその身体全体で受け止めることにより、無理やり彼の癖を感じ取ったのである。こればかりは神槍:ブリトニー=ノーガゥも呆れを通り越して笑う他無かった。自分の千差万別の突きを拳聖:キョーコ=モトカードのように見切るのではなく、慣れるという方法に出た若き半狼半人に尊敬の念を抱きそうになってしまう。
しかし、それはあくまでも抱きそうになるだけで止まってしまう。事実、回避数が増えてきたからといって、ロック=イートは攻撃には転じられていないのだ。ここで起死回生の一撃でも放つことが出来るのであれば、神槍と呼ばれたこの男もロック=イートを心から認めざるをえないであろう。ブリトニー=ノーガゥは惜しむ心が多少なりともあったが、勝負を決めてしまおうと決意する。
「ブリトニー流槍術 秘技:さそり座!!」
神槍:ブリトニー=ノーガゥは的を絞ることに努めた。彼の突きは全体的に相手の全身を穿つ技ではあるが、今は顔をガードしている両腕へとそのほとんどを費やしたのである。ロック=イートが強固に護る顔をがら空きにさせて、そこに意識を寸断する一撃を加えて終わりにしてしまおうとしたのであった。
ロック=イートが顔の前で並行にしている両腕をこじ開けるように、その隙間に穂先を突っ込む。その時であった。今まで耐え忍んでいたロック=イートが吼えたのだ。
「モトカード流拳法 第3条:篤く拳聖を敬え 派生:即ち拳聖が最強也……。先祖返り発動!!」
ロック=イートがそう叫ぶや否や、彼の身体を纏う筋肉が一気に肥大化する。それは生身の左腕も同様であり、左腕が肥大化することで両腕の隙間は埋まってしまうこととなる。神槍:ブリトニー=ノーガゥはその隙間に穂先を横にして突っ込んだのだ。そして、ロック=イートの右の義腕と肥大化した左腕の間で挟み込まれることとなる。しかも、木製のカバーはその圧力に屈し、砕け散ってしまうこととなる。
神槍:ブリトニー=ノーガゥはこの事態に陥ってもまだ上覧武闘会のルールを順守してしまった。そのため、必要以上に彼を傷つけぬために槍を突きこまずに引こうとしてしまう。しかし、槍の穂先を自分の手元に引き寄せようとしたが、がっちりとロック=イートの両腕でロックされており、ピクリとも動かない。そこで膠着状態に陥ると思われたのだが、ロック=イートが動きを見せる。
ロック=イートは少しだけ両腕から力を抜く。それにより神槍:ブリトニー=ノーガゥは槍を引っ込めれるようになるのだが、その前にロック=イートが両腕を並行に保ったまま前へと突っ込んできたのである。そのため、ロック=イートの右頬は聖槍:ロンギヌスの穂先で切れてしまうのであるが、ロック=イートは右頬から血を流しながらも、そのままの体勢で突っ込んでいく。
神槍:ブリトニー=ノーガゥは彼の両腕で槍を真っ直ぐに固定させられたまま、ロック=イートの接近を許す形となる。彼我との距離が1メートル以内にまで縮まったと同時にロック=イートは槍から両腕を離す。そして、左足で地面を力強く蹴り、右足でその勢い全てを石畳へと叩きつける。
ロック=イートは右の脇腹付近に戻した右の義腕を神槍:ブリトニー=ノーガゥの顔面へと真っ直ぐに突き出す。この時、神槍:ブリトニー=ノーガゥの顔からは余裕は全て吹き飛んでいた。優し気な眼が特徴のこの男であったが、烈火が広がったかのような目つきへと変わっており、射貫くようにロック=イートを見据えていた。そして、その力強い眼でロック=イートが放つロケット・パンチを睨みつけるのであった……。
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