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第8章:目覚めの兆し
第10話:遅咲きの青春
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セイ=レ・カンコーが控室から飛び出て、円形闘技場の観客席へと向かう。そこで売り子を探していたのだが、つい、試合場の方へと視線を移してしまう。そこでは戦士たちがしのぎを削り合っている真っ最中である。セイ=レ・カンコーはこの高い位置から戦士たちの試合を見るのは初めてのことであった。
(へえ……。観客席から見ると、また違った視点で試合を見ることができるような造りになっているんですなあ。こうなんて言うか、全体を俯瞰して見ていられるような……)
セイ=レ・カンコーは不可思議な感覚に襲われていた。タイガー・ホールでも裏武闘会でも、この上覧武闘会でも、戦士たちとほぼ同じ視線の高さで試合を見続けていた。しかしながら、上覧武闘会が開かれている円形闘技場の観客席は試合場よりも7メートル以上高い位置に設置されており、観客たちはそこから試合を観戦することとなる。
セイ=レ・カンコーは今、試合場に敷かれている石畳より12メートルほど高い位置に居た。そのため、戦士たちからは少し遠い気がするが、それはそれで違った感覚で試合を見ることが出来るために、新鮮さを感じたのである。今は第2回戦・第3試合が執り行われていた。この勝負で勝った者は次の試合に勝った者と闘うことになる。だが、第2回戦・第4試合に出場するのは神槍:ブリトニー=ノーガゥそのひとである。
この戦いに勝利したからといって、次も勝てる保証は全くなかったのであった。セイ=レ・カンコーはそんな戦士たちにナムナム……と憐れみを込めた呪文を唱える他無かったのである。本日、執り行なわれるのは第2回戦・第5試合までである。セイ=レ・カンコーはロック=イートが腹を満たしたら、神槍:ブリトニー=ノーガゥが出る第4試合の観戦へと誘おうかと思ってしまう。
そう思いながら、観客席をきょろきょろと眺めながらとうろついていると、目的であった売り子のお姉さんとようやく出会うこととなる。しかし、ここでセイ=レ・カンコーの心臓が跳ね上がってしまう。それもそうだろう。ただでさえ女性としては高伸長の見麗しい半兎半人がバニーガール姿だったのだ。太ももを強調する赤の網タイツ。ウエストが引き締まった身体をさらに締め付けるようなタイトな黒色のボディスーツを着込んでいる。セイ=レ・カンコーは思わず、ゴクリと喉を鳴らしてしまう。
「おせんべ~に麦酒。ちーちくにワインなど如何ですか~。もちろんウサウサにぎり弁当もご用意させてもらっています~」
「あ、あのっ! お名前をっ! じゃなくて!? ウサウサにぎり弁当を6個、お願いしますっ!」
セイ=レ・カンコーは何故か屹立した状態から、90度の角度で深々とお辞儀をしてしまった。その礼儀正しいお辞儀に売り子のお姉さんはびっくりとしてしまう。売り子に対して、ここまでの礼儀正しい態度を示す者など皆無だったからだ。観客席に座る面々は昼間から麦酒やワインを楽しんでいるために、酔っぱらっていない者を探すほうが難しい状況であった。
それゆえに売り子をしていると、いきなりふとももをやらしく撫でられたり、お尻を鷲掴みされてしまうこともしょっちゅうであった。いくらお給金が良いと言われていても、ふとももやお尻を無料で触られていたのでは、赤字も良いところであった。しかし、今、眼の前でウサウサにぎり弁当を所望している相手は、どこかの使用人みたいな服装であったが、それに似合わないほどの礼儀正しいお辞儀をしてくる。半兎半人の売り子はつい、ふふっと笑みをこぼしてしまうのであった。
(わ、笑われた!? あっしはすごく恥ずかしいですぜ!?)
セイ=レ・カンコーは背中にドッと熱い汗が噴き出してくる。意味もわからないほどに身体が熱くなってしょうがない。しかも、汗は背中だけでなく、手のひらにもにじみ出てきてしまう。こんな汗まみれの手でウサウサにぎり弁当を受け取って良いモノかと逡巡してしまう。
「はい~。ウサウサにぎり弁当6個、毎度アリ~。ぼくの脇でにぎった特別製だから、よ~く味わって食べてね~?」
「ワキ!? あの、その……貴女様のその白い脇で握ったんっすか!? そんなのご褒美すぎるでしょうぜっ!!」
「冗談に決まってるんですよ~。何、喜んでいるです~? まさか本気にしてしまったんです~?」
セイ=レ・カンコーは穴があったら入りたい気分になっていた。現在、自分は27歳のそろそろおっさんに仲間入りする年齢であるのに、20歳前後の半兎半人の女性に言い様に扱われてしまっている。その女性はコロコロと喉を鳴らして、可笑しそうに笑っている。セイ=レ・カンコーは火が出そうなほどに顔を真っ赤に染めてしまうのであった。
「ここだけの話~。本当にこのお弁当の1個だけ、ぼくの脇で握ったおむすびを仕込んでいるんですよ~。当たりに出くわすと良いですね~。なんたって、ぼくは幸運の半兎半人ですから~」
さすがにもう騙されないぞと思ったセイ=レ・カンコーはゴホンッ! と強く咳払いをし、邪念を吹き飛ばす。そして、売り子からウサウサにぎり弁当を6個受け取り、お代を手渡しする。お代を渡された半兎半人の女性は満面の笑みとなり、頭を軽く下げて会釈する。セイ=レ・カンコーは騙されないぞと思いつつも、頬がだらしなく垂れさがってしまっていた。
「と、ところで……。当たりはどのお弁当なんですかね!?」
「あはは~。お客さんには特別に教えておくのです~。弁当箱の角に、ぼくのだってわかるように名前を書いておいたのです~。もし、味が気に入ったのなら、また買ってほしいのです~」
セイ=レ・カンコーはそれを聞くと、鼻の下までもが伸びてしまうのであった。そして、善は急げとばかりにロック=イートたちが待つ控室へ戻っていってしまう。そんな彼の背中を売り子のお姉さんは微笑ましく軽く右手を振って、見送るのであった。
セイ=レ・カンコーは観客席から控室へ続く通路で、どの弁当箱に彼女の名前が書かれているのかをすぐさまチェックに入る。弁当箱は白くて丈夫な紙製であり、しっかりとした造りになっていた。セイ=レ・カンコーはその弁当箱のひとつに確かに人物名らしきモノを見つけ出す。
「クオン=ズィーガー……。クオンさんって名前なんですかい……。いやあ、良い名前だ……。おっといけませんぜ! あっしは青春を捨てた男ですぜ!?」
(へえ……。観客席から見ると、また違った視点で試合を見ることができるような造りになっているんですなあ。こうなんて言うか、全体を俯瞰して見ていられるような……)
セイ=レ・カンコーは不可思議な感覚に襲われていた。タイガー・ホールでも裏武闘会でも、この上覧武闘会でも、戦士たちとほぼ同じ視線の高さで試合を見続けていた。しかしながら、上覧武闘会が開かれている円形闘技場の観客席は試合場よりも7メートル以上高い位置に設置されており、観客たちはそこから試合を観戦することとなる。
セイ=レ・カンコーは今、試合場に敷かれている石畳より12メートルほど高い位置に居た。そのため、戦士たちからは少し遠い気がするが、それはそれで違った感覚で試合を見ることが出来るために、新鮮さを感じたのである。今は第2回戦・第3試合が執り行われていた。この勝負で勝った者は次の試合に勝った者と闘うことになる。だが、第2回戦・第4試合に出場するのは神槍:ブリトニー=ノーガゥそのひとである。
この戦いに勝利したからといって、次も勝てる保証は全くなかったのであった。セイ=レ・カンコーはそんな戦士たちにナムナム……と憐れみを込めた呪文を唱える他無かったのである。本日、執り行なわれるのは第2回戦・第5試合までである。セイ=レ・カンコーはロック=イートが腹を満たしたら、神槍:ブリトニー=ノーガゥが出る第4試合の観戦へと誘おうかと思ってしまう。
そう思いながら、観客席をきょろきょろと眺めながらとうろついていると、目的であった売り子のお姉さんとようやく出会うこととなる。しかし、ここでセイ=レ・カンコーの心臓が跳ね上がってしまう。それもそうだろう。ただでさえ女性としては高伸長の見麗しい半兎半人がバニーガール姿だったのだ。太ももを強調する赤の網タイツ。ウエストが引き締まった身体をさらに締め付けるようなタイトな黒色のボディスーツを着込んでいる。セイ=レ・カンコーは思わず、ゴクリと喉を鳴らしてしまう。
「おせんべ~に麦酒。ちーちくにワインなど如何ですか~。もちろんウサウサにぎり弁当もご用意させてもらっています~」
「あ、あのっ! お名前をっ! じゃなくて!? ウサウサにぎり弁当を6個、お願いしますっ!」
セイ=レ・カンコーは何故か屹立した状態から、90度の角度で深々とお辞儀をしてしまった。その礼儀正しいお辞儀に売り子のお姉さんはびっくりとしてしまう。売り子に対して、ここまでの礼儀正しい態度を示す者など皆無だったからだ。観客席に座る面々は昼間から麦酒やワインを楽しんでいるために、酔っぱらっていない者を探すほうが難しい状況であった。
それゆえに売り子をしていると、いきなりふとももをやらしく撫でられたり、お尻を鷲掴みされてしまうこともしょっちゅうであった。いくらお給金が良いと言われていても、ふとももやお尻を無料で触られていたのでは、赤字も良いところであった。しかし、今、眼の前でウサウサにぎり弁当を所望している相手は、どこかの使用人みたいな服装であったが、それに似合わないほどの礼儀正しいお辞儀をしてくる。半兎半人の売り子はつい、ふふっと笑みをこぼしてしまうのであった。
(わ、笑われた!? あっしはすごく恥ずかしいですぜ!?)
セイ=レ・カンコーは背中にドッと熱い汗が噴き出してくる。意味もわからないほどに身体が熱くなってしょうがない。しかも、汗は背中だけでなく、手のひらにもにじみ出てきてしまう。こんな汗まみれの手でウサウサにぎり弁当を受け取って良いモノかと逡巡してしまう。
「はい~。ウサウサにぎり弁当6個、毎度アリ~。ぼくの脇でにぎった特別製だから、よ~く味わって食べてね~?」
「ワキ!? あの、その……貴女様のその白い脇で握ったんっすか!? そんなのご褒美すぎるでしょうぜっ!!」
「冗談に決まってるんですよ~。何、喜んでいるです~? まさか本気にしてしまったんです~?」
セイ=レ・カンコーは穴があったら入りたい気分になっていた。現在、自分は27歳のそろそろおっさんに仲間入りする年齢であるのに、20歳前後の半兎半人の女性に言い様に扱われてしまっている。その女性はコロコロと喉を鳴らして、可笑しそうに笑っている。セイ=レ・カンコーは火が出そうなほどに顔を真っ赤に染めてしまうのであった。
「ここだけの話~。本当にこのお弁当の1個だけ、ぼくの脇で握ったおむすびを仕込んでいるんですよ~。当たりに出くわすと良いですね~。なんたって、ぼくは幸運の半兎半人ですから~」
さすがにもう騙されないぞと思ったセイ=レ・カンコーはゴホンッ! と強く咳払いをし、邪念を吹き飛ばす。そして、売り子からウサウサにぎり弁当を6個受け取り、お代を手渡しする。お代を渡された半兎半人の女性は満面の笑みとなり、頭を軽く下げて会釈する。セイ=レ・カンコーは騙されないぞと思いつつも、頬がだらしなく垂れさがってしまっていた。
「と、ところで……。当たりはどのお弁当なんですかね!?」
「あはは~。お客さんには特別に教えておくのです~。弁当箱の角に、ぼくのだってわかるように名前を書いておいたのです~。もし、味が気に入ったのなら、また買ってほしいのです~」
セイ=レ・カンコーはそれを聞くと、鼻の下までもが伸びてしまうのであった。そして、善は急げとばかりにロック=イートたちが待つ控室へ戻っていってしまう。そんな彼の背中を売り子のお姉さんは微笑ましく軽く右手を振って、見送るのであった。
セイ=レ・カンコーは観客席から控室へ続く通路で、どの弁当箱に彼女の名前が書かれているのかをすぐさまチェックに入る。弁当箱は白くて丈夫な紙製であり、しっかりとした造りになっていた。セイ=レ・カンコーはその弁当箱のひとつに確かに人物名らしきモノを見つけ出す。
「クオン=ズィーガー……。クオンさんって名前なんですかい……。いやあ、良い名前だ……。おっといけませんぜ! あっしは青春を捨てた男ですぜ!?」
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