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第15章:転落
第2話:剣王との一騎打ち
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剣王:シノジ=ザッシュが部下から戟を受け取る。そうした後、シノジは戟を頭上で回転させる。それと同時に頼まれたわけでもないのに、剣王配下の兵士たちが太鼓の表面を手でリズムよく叩きだしたのだ。
「一騎打ちなんて、いつの時代だ! って言ってた割にはノリノリじゃないのっ!」
「しらん。だが、貴様たち、面白い。もっと派手に太鼓を叩けっ!:
シノジの許しを得たことで、太鼓を叩く音量は一気に高まる。シノジは戟を身体の周りで振り回す。まるで子供のおもちゃでも操っているかのように自由自在に振り回してみせる。エーリカはシノジの剣舞に思わず見惚れてしまい、邪念を振り払うかのように頭を強く左右に振る。
そうした後、エーリカは太鼓のリズムに合わせないようにと、自分の呼吸に努める。太刀の柄をしっかりと握りしめ、ふぅふぅ! と自分のリズムで呼吸を繰り返す。そうしいているエーリカを前にして、シノジはさらに面白いと思ってしまう。
「死ぬなよ……」
シノジがそう言った瞬間であった。エーリカは持っている太刀が両手からすっぽ抜けて、彼方へと飛んでいってしまいそうな感覚に襲われる。エーリカは急いで、自分が手にしている太刀の所在を確認する。エーリカは自分の手の中に太刀の柄がしっかりとあることを確認し、ホッと安堵することになる。
「ほぅ。今くらいでは大丈夫か。ならば、次の一撃だ」
エーリカは今度こそ、手から太刀がすっぽ抜けていってしまったと感じた。だが、確認するとまだ手は太刀の柄をしっかりと握っていたように見えた。両手はじんじんと痺れあがり、柄を握っている感覚がかなり無くなっていたのである。このままでは、一騎打ちどころでは無くなっていた。エーリカは痺れる手のまま、シノジの攻撃を待たずに、こちらから攻撃をしかけたのである。
シノジは上段から真っ直ぐに振り下ろされてきた一太刀に、ほぉ……と興味深げな息を吐く。まだ拙い部分が見えるが、それでも美しい太刀筋であった。戟を回し、戟の柄で絡め取るようにしたのに、エーリカは体勢を崩し切ることは無かった。
「面白い。どうだ? 我に仕えぬか?」
「おあいにくさまっ! あたしがあなたを仕えさせることはあっても、あたしがあなたに仕えることはないわっ!」
「それは残念だ」
シノジがそう言うと同時に、エーリカの手の中から太刀は消え去っていた。太刀は宙に飛ばされ、クルクルと回転し、地面に突き刺さる。シノジは拾えとエーリカに命じる。エーリカはクッ! と唸る他無かった。
「これで1度、お前は死んだ。どうだ? 気は変わったか?」
「うっさいわねっ! 痛いっ!」
「これでもう1度、お前は死んだ。どうだ? 我に仕えろとは言わぬ。我の妃になれ」
「こいつっ!」
エーリカはわき腹に戟の柄を叩きこまれていた。あまりの痛みにその場で片膝をつくことになる。そんなエーリカの首元にシノジが戟の切っ先を突きつけてくる。そして、シノジが戟をチョイチョイと動かすと、エーリカが身に着けていた部分鎧が内側から弾けるように地面に飛び散るのであった。
「鎧の上から小ささは把握していたが、思っていた以上に小さい」
「うっさいわねっ! 痛いっ!」
シノジはうるさいと言われるたびにエーリカの身を戟の柄で打った。これはすでに一騎打ちと呼べるものではなくなっていた。それほどまでに剣王とエーリカの実力の差が開いている証拠でもあった。
「もう1度問う。我にその小さき胸を大きくさせろ」
エーリカはプッツンという緒が切れる音が頭の中に響き渡る。その途端、エーリカの左手につけられていた手甲が弾け飛び、さらには光りが左手の甲から発せられることになる。エーリカの目の色が変わり、エーリカの身体の奥底から力が溢れ出す。
エーリカの力に反応するように、エーリカが拾い上げ、両手で持っている太刀が光り輝く。エーリカは光りに包まれた太刀を振り上げ、今度こそ剣王の頭をかち割ってやろうとした。
「ほぅ……。我と同じ聖痕持ちか。おい、大賢者よ。これは聞いてなかったぞ?」
「何をおっしゃいますかな? わらわも知らんなんだことじゃ。われわを責めても何の得もありせんぞえ?」
「女狐め、まあ、良い。殺してはいないからな。さあ、一騎打ちは終わりぞ」
エーリカの一撃はシノジが構えた戟の柄を真っ二つにしてみせた。しかしながら、シノジは受けた衝撃をそのままに受けることで、あちら側から身体を押してしまう状況にした。エーリカの渾身の上段斬りは躱されることになる。
だが、エーリカはセーゲン流剣術の弟子であった。セーゲン流剣術は一の太刀が外れれば、続けての二の太刀と繋がる連撃が持ち味であった。エーリカは一撃目を躱された後、大きくシノジ側に踏み込む。間合いを詰めた状態で下から上へと太刀を振り上げる。
シノジは面白いと感じ、エーリカに最接近する。それだけでは無かった。エーリカの細い身体に自分の太すぎる身体をぶつけたのだ。エーリカは否応なく吹っ飛ばされ、片膝をつく。だが、エーリカはさらに続けての三の太刀を放とうとした。地面に両足で着地するなり、顎が地面に擦れるくらいに頭を低くし、さらには横薙ぎからの斬撃を繰り出す。
その三の太刀をシノジは未だに手に持っていた戟の穂先で受ける。一瞬だけだが、エーリカの太刀筋が止まる。その一瞬はシノジにとっては十分な時間であった。シノジは自分の身体に刃が届く前にエーリカの後ろへと回り込んでしまったのである。エーリカは首を上下左右に振り回し、シノジを探し求めるが、そのシノジを見つける前に、エーリカの意識はエーリカの身体から飛び立つことになる。
気絶したエーリカを肩に担いだシノジはその場を去ろうとする。だが、いくつもの強烈な視線が自分の背中に突き刺さってくる。シノジはフンッ……と鼻息を吐き出す。シノジは今から天幕に入り、エーリカの腹の中に子種を仕込みたいと思った。それほどまでにシノジはエーリカが良い女に成長するだろうという予感があった。
「誰でもいいぞ? 我から、この娘を取り戻すが良い」
血濡れの女王の団員たちはギリッ! と一層に歯ぎしりの音を高めた。その音がシノジの耳に届いたのか、シノジは大層、気持ちよく大笑いするのであった。そして、身体の向きを変えて、自分に挑みかからんとギラギラとした眼力を飛ばしてくる若い連中を睨み返す。
剣王にそうされがならも、剣王の視線から目を逸らす者は、この中には居なかった。それゆえにますます、この者たちが大切にしているこのエーリカという女を自分だけの女にしてしまいたくなってしまう。
「さて……。いい加減、先生はオコもオコです、激オコです。何年振り? いや、何十年振り? それとも何百年振りでしょうか? キョーコ殿、アイス殿、それにタケル殿。ここは先生に任せてもらえませんか?」
クロウリーがそう言うと同時に彼の自由を拘束していたはずの縄が蒸発してしまうのであった。剣王は口の端を歪ませるだけ、歪ませることになる。
「一騎打ちなんて、いつの時代だ! って言ってた割にはノリノリじゃないのっ!」
「しらん。だが、貴様たち、面白い。もっと派手に太鼓を叩けっ!:
シノジの許しを得たことで、太鼓を叩く音量は一気に高まる。シノジは戟を身体の周りで振り回す。まるで子供のおもちゃでも操っているかのように自由自在に振り回してみせる。エーリカはシノジの剣舞に思わず見惚れてしまい、邪念を振り払うかのように頭を強く左右に振る。
そうした後、エーリカは太鼓のリズムに合わせないようにと、自分の呼吸に努める。太刀の柄をしっかりと握りしめ、ふぅふぅ! と自分のリズムで呼吸を繰り返す。そうしいているエーリカを前にして、シノジはさらに面白いと思ってしまう。
「死ぬなよ……」
シノジがそう言った瞬間であった。エーリカは持っている太刀が両手からすっぽ抜けて、彼方へと飛んでいってしまいそうな感覚に襲われる。エーリカは急いで、自分が手にしている太刀の所在を確認する。エーリカは自分の手の中に太刀の柄がしっかりとあることを確認し、ホッと安堵することになる。
「ほぅ。今くらいでは大丈夫か。ならば、次の一撃だ」
エーリカは今度こそ、手から太刀がすっぽ抜けていってしまったと感じた。だが、確認するとまだ手は太刀の柄をしっかりと握っていたように見えた。両手はじんじんと痺れあがり、柄を握っている感覚がかなり無くなっていたのである。このままでは、一騎打ちどころでは無くなっていた。エーリカは痺れる手のまま、シノジの攻撃を待たずに、こちらから攻撃をしかけたのである。
シノジは上段から真っ直ぐに振り下ろされてきた一太刀に、ほぉ……と興味深げな息を吐く。まだ拙い部分が見えるが、それでも美しい太刀筋であった。戟を回し、戟の柄で絡め取るようにしたのに、エーリカは体勢を崩し切ることは無かった。
「面白い。どうだ? 我に仕えぬか?」
「おあいにくさまっ! あたしがあなたを仕えさせることはあっても、あたしがあなたに仕えることはないわっ!」
「それは残念だ」
シノジがそう言うと同時に、エーリカの手の中から太刀は消え去っていた。太刀は宙に飛ばされ、クルクルと回転し、地面に突き刺さる。シノジは拾えとエーリカに命じる。エーリカはクッ! と唸る他無かった。
「これで1度、お前は死んだ。どうだ? 気は変わったか?」
「うっさいわねっ! 痛いっ!」
「これでもう1度、お前は死んだ。どうだ? 我に仕えろとは言わぬ。我の妃になれ」
「こいつっ!」
エーリカはわき腹に戟の柄を叩きこまれていた。あまりの痛みにその場で片膝をつくことになる。そんなエーリカの首元にシノジが戟の切っ先を突きつけてくる。そして、シノジが戟をチョイチョイと動かすと、エーリカが身に着けていた部分鎧が内側から弾けるように地面に飛び散るのであった。
「鎧の上から小ささは把握していたが、思っていた以上に小さい」
「うっさいわねっ! 痛いっ!」
シノジはうるさいと言われるたびにエーリカの身を戟の柄で打った。これはすでに一騎打ちと呼べるものではなくなっていた。それほどまでに剣王とエーリカの実力の差が開いている証拠でもあった。
「もう1度問う。我にその小さき胸を大きくさせろ」
エーリカはプッツンという緒が切れる音が頭の中に響き渡る。その途端、エーリカの左手につけられていた手甲が弾け飛び、さらには光りが左手の甲から発せられることになる。エーリカの目の色が変わり、エーリカの身体の奥底から力が溢れ出す。
エーリカの力に反応するように、エーリカが拾い上げ、両手で持っている太刀が光り輝く。エーリカは光りに包まれた太刀を振り上げ、今度こそ剣王の頭をかち割ってやろうとした。
「ほぅ……。我と同じ聖痕持ちか。おい、大賢者よ。これは聞いてなかったぞ?」
「何をおっしゃいますかな? わらわも知らんなんだことじゃ。われわを責めても何の得もありせんぞえ?」
「女狐め、まあ、良い。殺してはいないからな。さあ、一騎打ちは終わりぞ」
エーリカの一撃はシノジが構えた戟の柄を真っ二つにしてみせた。しかしながら、シノジは受けた衝撃をそのままに受けることで、あちら側から身体を押してしまう状況にした。エーリカの渾身の上段斬りは躱されることになる。
だが、エーリカはセーゲン流剣術の弟子であった。セーゲン流剣術は一の太刀が外れれば、続けての二の太刀と繋がる連撃が持ち味であった。エーリカは一撃目を躱された後、大きくシノジ側に踏み込む。間合いを詰めた状態で下から上へと太刀を振り上げる。
シノジは面白いと感じ、エーリカに最接近する。それだけでは無かった。エーリカの細い身体に自分の太すぎる身体をぶつけたのだ。エーリカは否応なく吹っ飛ばされ、片膝をつく。だが、エーリカはさらに続けての三の太刀を放とうとした。地面に両足で着地するなり、顎が地面に擦れるくらいに頭を低くし、さらには横薙ぎからの斬撃を繰り出す。
その三の太刀をシノジは未だに手に持っていた戟の穂先で受ける。一瞬だけだが、エーリカの太刀筋が止まる。その一瞬はシノジにとっては十分な時間であった。シノジは自分の身体に刃が届く前にエーリカの後ろへと回り込んでしまったのである。エーリカは首を上下左右に振り回し、シノジを探し求めるが、そのシノジを見つける前に、エーリカの意識はエーリカの身体から飛び立つことになる。
気絶したエーリカを肩に担いだシノジはその場を去ろうとする。だが、いくつもの強烈な視線が自分の背中に突き刺さってくる。シノジはフンッ……と鼻息を吐き出す。シノジは今から天幕に入り、エーリカの腹の中に子種を仕込みたいと思った。それほどまでにシノジはエーリカが良い女に成長するだろうという予感があった。
「誰でもいいぞ? 我から、この娘を取り戻すが良い」
血濡れの女王の団員たちはギリッ! と一層に歯ぎしりの音を高めた。その音がシノジの耳に届いたのか、シノジは大層、気持ちよく大笑いするのであった。そして、身体の向きを変えて、自分に挑みかからんとギラギラとした眼力を飛ばしてくる若い連中を睨み返す。
剣王にそうされがならも、剣王の視線から目を逸らす者は、この中には居なかった。それゆえにますます、この者たちが大切にしているこのエーリカという女を自分だけの女にしてしまいたくなってしまう。
「さて……。いい加減、先生はオコもオコです、激オコです。何年振り? いや、何十年振り? それとも何百年振りでしょうか? キョーコ殿、アイス殿、それにタケル殿。ここは先生に任せてもらえませんか?」
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