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序章

プロローグ1:創造主の計画

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 天界に住む創造主:Y.O.N.Nは自分が創り出した神々を円卓の間に集める。主はにこやかな笑顔で円卓の間に集まる神々に対して、次のようにのたまう。

「地上界の平和が1000年続いたことで、人口はかなり増えてきたと思うんや。だから、そろそろ大戦争を引き起こして、人類、亜人類、魔物モンスターたちを次のステージへと進化させたいんや!」

 円卓に集まる神々は眉をひそめる。創造主:Y.O.N.N様は地上界だけでなく天界、そして魔界をも創り上げた全ての父である存在だ。だが、1000年前に天界すらも巻き込んだ大戦争の悲惨さを今でも憶えているものも少なくない。

「いやいや。そんなに嫌な顔せんといてほしいんや。わいは創造主やけど、完全なる世界パーフェクト・ワールドを創ったというほどには傲慢じゃあらへんのや。そして、いくら完全な世界を創ろうが、システムは長大な年月を経れば、どうしても腐ってしまうんや。わかるやろ?」

 創造主:Y.O.N.N様の言うことはある意味で正しいことは神々も重々承知であった。神と言えども老いて死ぬ存在である。それゆえに神ですら完全な存在ではない。円卓の間に集まる神々の中には回帰転生をおこない、産まれ直しをおこなっている神も大勢居る。

「で? 父上。何をもってして、人類たちを進化させると言うのですかな?」

「おっと! S.N.O.Jくん。さすが飲み込みが早いんやで! さすがは始祖神なだけはあるなっ!」

「父上がわれに対して抱いている感覚は半分正しく、半分間違っていますな。われは半分呆れているので、さっさと話を進めてほしいと言っているだけです」

 始祖神:S.N.O.Jは神々のまとめ役である。創造主;Y.O.N.Nと始祖神:S.N.O.Jの関係を地上界の国の地位で言い表せば、国主と宰相と表現するのがわかりやすいであろう。いくら創造主という地位にあるY.O.N.Nだとしても、始祖神:S.N.O.Jを介して、他の神々に納得してもらわねばならない。創造主:Y.O.N.Nは創造主であるがゆえに傲慢に事を進めて良い身分であるはずだが、それは創造主:Y.O.N.Nの望むところではなかったのである。

 真に誉れある指導者とは、部下の意見を参考にしたうえで裁可を下す。それは創造主:Y.O.N.Nが誉れある指導者たらんと振る舞うことを誇らしく感じていたからでもある。

「んじゃ、さっそく本題に移らせていただくんやで。前回の大戦争は天界と魔界の戦いに地上界が巻き込まれるってのをやってみたけど、地上界の人口が100分の1に減ってもうた。だからこそ、わいの息子や娘たちはしかめっ面になっているわけやな?」

 創造主:Y.O.N.Nの言葉を受けて、円卓の間に集まる神々はうんうんと頷く。いくら腐ったシステムを再構築するという大義があったとしても、地上界が必要以上に損害を被ったのは事実である。その点を考慮していただけているのであれば、あまりもの無茶を父上が言ってこないだろうと少しだけ警戒心を解く神々であった。

 だが、これはあくまでも前振りなだけだなと感じていたのが始祖神:S.N.O.Jである。こう言っておけば、キミらの心配は多少なりとも考慮している体を取っているという逃げ道とでも言える前振りだと見抜いていたのだ、始祖神:S.N.O.Jは。

「今回の主戦場は地上界や。まあでも、地上界と言うても、悪役は必要や。ちょっと魔に犯されたニンゲンの王をしたてあげようと思うんや!」

「ふむふむ。父上にしては考えておられる。で? こちら側が用意したその悪役を倒すために英雄を創るとでも?」

「おおまかな流れはそうなんやけど、ちょっと違うんやなぁ。それだと結局、わいが用意したシナリオ通りになってしまって、システムの再構築とまではいかないやん? なので、地上界のニンゲンたちには、わいからの【祝福ギフト】を与えることはしても、あくまでもその祝福の使い方はニンゲンたちの【自由意志】に任せようと思うんや!」

 始祖神:S.N.O.Jはなるほど……と感心してしまう。奔放な父上なくせに、父上なりになかなか考えていると感心してしまうのであった。より良き世界を創るにあたって、父上には二通りの方法を採ることが出来る。ひとつは【世界そのものの再創生】。そして、もうひとつは【システムの再構築】である。父上はかれこれ、【世界そのものの再創生】を100回以上、繰り返してきた。そして、ついに為す術も無く滅びを待つだけの世界を変革を伴うことで、自ら進化する世界の創造に成功したのである。

 創造主:Y.O.N.Nは今のこの世界を限りなく愛している。そして、この世界がより良き未来に行きつくために300年に1度のスパンで進化を促していた。古くなったシステムを改め、より良き明日を迎えるためのシステムの再構築。そのために、創造主:Y.O.N.Nは自分からの祝福ギフトをニンゲンたちに与え、それをニンゲンたちの自由意志に委ねるという方法を採ろうとしていた。

「わかりました。父上にしては妙案ですな。われも賛同します」

「ありがとうやで! ほな、さっそく地上界のニンゲンに、わいからのプレゼントを贈るやで!」

「ちょっと待ってくだされ、父上!! 人選はこれからお決めになるのでは無いのですか!?」

「ん? 何言うてまんのや。こういう時のための【籤引くじびき】やろが! ほな、さっそく、引かせてもらうやで!! さあ、わいからのプレゼントを受け取るのはどこのどいつやろか!?」

 後悔、先に立たずとはまさにこのことであった。厳選なる籤引くじびきの結果、地上界が200年以上にも渡る戦国乱世の時代に突入するなど、この時の始祖神:S.N.O.Jは想像していなかった。いや……。創造主:Y.O.N.Nですら、こんなことになるとは思ってもみなかったんや……と、のちに語ることになる。
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