116 / 123
第12章:ヒトが覇王を超える時
第4話:希望と絶望の果て
しおりを挟む
エルフ族の女王は亜人族の長とその嫁、ニンゲン族の首魁とその軍師の手助けにより、難を逃れることに成功する。三日月状のエネルギーは宝剣・絶対王者の剣の刀身に弾かれて、宙を舞い、ついには後方にある砦へと直撃する。砦は大きな破砕音を奏で、半壊状態へとなってしまう。それほどまでにエルフ族の女王が放った一撃は相当なモノであることを皆は想像してしまうのだが、それを軽々と投げ返してきた覇王の方によっぽど恐怖を感じてしまう。
さらにはエルフ族の女王が手に持っていた宝剣・絶対王者の剣の刀身は半ばから折れて、その先はどこかに飛んで行ってしまっていた。エルフ族の女王たちは『希望』を『絶望』に塗り替えられてしまい腰砕けとなる。ヘナヘナとその場でへたりこんでしまう。
だが、そんな彼女たちを厳しく律する言葉を口にする男がいた。
「絶望は希望の対義語ではありません。『諦観』こそが、希望を殺すのです」
その男とは魔族の代弁者であった。彼はエルフ族の女王の右腕を掴み、強引に彼女を立たせる。そして、両手を使い、彼女が再び宝剣・絶対王者の剣を力強く握るようにと、彼女の手の甲を掴む。エルフ族の女王は困惑しきっていた。自分の身に宿る魔力の全てを込めたというのに、まだ足りないと言わんとしている魔族の代弁者に対して、涙の量を増やしてしまう。だが、涙を流しつづける彼女に対して、魔族の代弁者は首を左右に振り、彼女を否定する。
「アンジェラくん。貴女は間違っています」
「ワタクシは間違っているのですか?」
「はい。貴女は覇王くんに対して、憎しみの心で対峙しようとしています。それではダメなのです。『愛』が全てなんです」
この時、この場において、愛を説く魔族の代弁者であった。しかし、アンジェラ=キシャルにとって、覇王の存在自体が自分が愛するすべてを傷つけようとしているのだ。そんな存在に対して、憎しみを抱いたとしても、愛を感じることは出来ない。だからこそ、彼女は無理だと魔族の代弁者に返答する。
「愛は全てを超えます。ヒトが覇王に抗う術は『愛』しかないのです!」
「ワタクシは皆を傷つける覇王を許せないのです! なのに、貴方はあの覇王を愛せよと命じます。ワタクシにはそれが理解できませんわっ!」
「理解しようとしている内は、それは『愛』ではありません。理解するのではなく、感じるのですよ。そして、感じることが出来るようになれば、あとは反応するだけです。貴女は先生とまぐわっている最中にその行為を理解しようとしていましたか??」
エルフ族の女王は、この命の瀬戸際において、魔族の代弁者との密会を頭の中で思い起こされる。そして、自然と卑肉から愛液が溢れ出し、彼女の下着を濡らしてしまう。さらに魔族の代弁者は彼女の右手を自分の股間に押し付けて、自分の愚息があらん限りに『生』を主張していることを教える。
「わかりますか? 先生は貴女の手を掴んでいるだけで、不覚にもこうなってしまうのです。これは先生が頭の中でごちゃごちゃ何かを考えているわけではありません。貴女がただただ愛しくて、こうなっているんですっ!」
魔族の代弁者は彼女の右手を股間からまたもや宝剣・絶対王者の剣の柄へと移動させる。そして、真剣な眼差しのまま、彼女にコクリと頷いてみせる。エルフ族の女王は彼にコクリと頷き返し、真っ直ぐに覇王へと視線を移動させる。そして、一度、まぶたを閉じた後、ゆっくりと碧玉色の双眸を見開いてみせる。
彼女のその眼には憎しみによってドス黒く燃えていた焔は消えていた。全てを愛する大地の母の如くの光を宿していた。そんな彼女に感応するように宝剣・絶対王者の剣が哭いたのだ。
半ばから折れてしまったはずの宝剣・絶対王者の剣が七色の光を発しながら、その刀身を復元していく。魔族の代弁者とエルフ族の女王が放つ愛のオーラを受け取り、産まれたての赤ん坊のようにすくすくと成長していく。絶対王者の剣は、この世に生まれ出れたことへの感謝を二人に告げるように哭いたのであった。
「ワタクシは貴方と結ばれたことを、今、この時ほど神に感謝したいと思ったことはありません」
「先生もそうです。さあ、覇王くんにこの喜びをぶつけましょう……」
魔族の代弁者とエルフ族の女王は、二人による初めての共同作業の如くに、生まれ変わった宝剣・絶対王者の剣を振り上げてみせる。二人は覇王をウエディングケーキに見立てていた。そして、そのウエディングケーキに向かって、二人の手を携えた宝剣・絶対王者の剣を振るってみせる。
宝剣・絶対王者の剣は七色に光る三日月状のエネルギー波をその刀身から放つ。縦に放たれたそのエネルギー波は真っ直ぐに覇王に向かって飛んでいく。覇王はその『愛』を受け取ってたまるかと抗いを見せる。
「天上天下、唯我独覇王!! 我を恐怖せよっ!!」
覇王は右の拳を思いっ切り握りしめて、その拳に神力の全てを込める。覇王の右拳と七色に光る三日月状のエネルギー刃がぶつかり合い、互いにしのぎを削る。覇王は鬼のような形相となり、二人が放った『愛』を全否定する。これを受け入れてしまえば、自分の存在全てを否定されると思ったからだ。
覇王は右拳だけでは足りぬと思い、左手も握り込み、左拳も七色の光へと叩きこむ。その甲斐あって、覇王は魔族の代弁者とエルフ族の女王が放ったエネルギー波を粉砕せしめてみせる。ゼエゼエハアハアと肩で息をする覇王は鬼の形相のままに二人を睨みつける。そして、自分が勝ったとばかりに雄叫びをあげてみせる。
だが、魔族の代弁者とエルフ族の女王の心に『絶望』は訪れなかった。それもそうだ。『愛は無限のエネルギー』だからだ。愛は尽きることを知らない。愛は次々と生まれ出るのだ。ヒトは愛を確かめ合い、愛するヒトとの間で子を産み育ててきた。だからこそ、ヒトは歴史を刻んでくることが出来たのだ。ひとりでは決して出来ないのだ、歴史を積み重ねることは。
司祭が愛しあう二人に送った言葉がある。
『真実の愛は全ての苦難を乗り越える』
そして、教会に集まる皆は誓いのキスをする二人を祝福した後、彼女たちにさらにこの言葉を送った。
『キミたちの行く先に幸福が訪れん事を』
二人の道には、思い描く幸せよりもはるかに多くの困難が待ち受けているだろう。それは棘の道であることは古今東西、変わりない。しかし、それでも彼女たちは手を取り合い、互いを助けて、天寿を全うするのだ……。
さらにはエルフ族の女王が手に持っていた宝剣・絶対王者の剣の刀身は半ばから折れて、その先はどこかに飛んで行ってしまっていた。エルフ族の女王たちは『希望』を『絶望』に塗り替えられてしまい腰砕けとなる。ヘナヘナとその場でへたりこんでしまう。
だが、そんな彼女たちを厳しく律する言葉を口にする男がいた。
「絶望は希望の対義語ではありません。『諦観』こそが、希望を殺すのです」
その男とは魔族の代弁者であった。彼はエルフ族の女王の右腕を掴み、強引に彼女を立たせる。そして、両手を使い、彼女が再び宝剣・絶対王者の剣を力強く握るようにと、彼女の手の甲を掴む。エルフ族の女王は困惑しきっていた。自分の身に宿る魔力の全てを込めたというのに、まだ足りないと言わんとしている魔族の代弁者に対して、涙の量を増やしてしまう。だが、涙を流しつづける彼女に対して、魔族の代弁者は首を左右に振り、彼女を否定する。
「アンジェラくん。貴女は間違っています」
「ワタクシは間違っているのですか?」
「はい。貴女は覇王くんに対して、憎しみの心で対峙しようとしています。それではダメなのです。『愛』が全てなんです」
この時、この場において、愛を説く魔族の代弁者であった。しかし、アンジェラ=キシャルにとって、覇王の存在自体が自分が愛するすべてを傷つけようとしているのだ。そんな存在に対して、憎しみを抱いたとしても、愛を感じることは出来ない。だからこそ、彼女は無理だと魔族の代弁者に返答する。
「愛は全てを超えます。ヒトが覇王に抗う術は『愛』しかないのです!」
「ワタクシは皆を傷つける覇王を許せないのです! なのに、貴方はあの覇王を愛せよと命じます。ワタクシにはそれが理解できませんわっ!」
「理解しようとしている内は、それは『愛』ではありません。理解するのではなく、感じるのですよ。そして、感じることが出来るようになれば、あとは反応するだけです。貴女は先生とまぐわっている最中にその行為を理解しようとしていましたか??」
エルフ族の女王は、この命の瀬戸際において、魔族の代弁者との密会を頭の中で思い起こされる。そして、自然と卑肉から愛液が溢れ出し、彼女の下着を濡らしてしまう。さらに魔族の代弁者は彼女の右手を自分の股間に押し付けて、自分の愚息があらん限りに『生』を主張していることを教える。
「わかりますか? 先生は貴女の手を掴んでいるだけで、不覚にもこうなってしまうのです。これは先生が頭の中でごちゃごちゃ何かを考えているわけではありません。貴女がただただ愛しくて、こうなっているんですっ!」
魔族の代弁者は彼女の右手を股間からまたもや宝剣・絶対王者の剣の柄へと移動させる。そして、真剣な眼差しのまま、彼女にコクリと頷いてみせる。エルフ族の女王は彼にコクリと頷き返し、真っ直ぐに覇王へと視線を移動させる。そして、一度、まぶたを閉じた後、ゆっくりと碧玉色の双眸を見開いてみせる。
彼女のその眼には憎しみによってドス黒く燃えていた焔は消えていた。全てを愛する大地の母の如くの光を宿していた。そんな彼女に感応するように宝剣・絶対王者の剣が哭いたのだ。
半ばから折れてしまったはずの宝剣・絶対王者の剣が七色の光を発しながら、その刀身を復元していく。魔族の代弁者とエルフ族の女王が放つ愛のオーラを受け取り、産まれたての赤ん坊のようにすくすくと成長していく。絶対王者の剣は、この世に生まれ出れたことへの感謝を二人に告げるように哭いたのであった。
「ワタクシは貴方と結ばれたことを、今、この時ほど神に感謝したいと思ったことはありません」
「先生もそうです。さあ、覇王くんにこの喜びをぶつけましょう……」
魔族の代弁者とエルフ族の女王は、二人による初めての共同作業の如くに、生まれ変わった宝剣・絶対王者の剣を振り上げてみせる。二人は覇王をウエディングケーキに見立てていた。そして、そのウエディングケーキに向かって、二人の手を携えた宝剣・絶対王者の剣を振るってみせる。
宝剣・絶対王者の剣は七色に光る三日月状のエネルギー波をその刀身から放つ。縦に放たれたそのエネルギー波は真っ直ぐに覇王に向かって飛んでいく。覇王はその『愛』を受け取ってたまるかと抗いを見せる。
「天上天下、唯我独覇王!! 我を恐怖せよっ!!」
覇王は右の拳を思いっ切り握りしめて、その拳に神力の全てを込める。覇王の右拳と七色に光る三日月状のエネルギー刃がぶつかり合い、互いにしのぎを削る。覇王は鬼のような形相となり、二人が放った『愛』を全否定する。これを受け入れてしまえば、自分の存在全てを否定されると思ったからだ。
覇王は右拳だけでは足りぬと思い、左手も握り込み、左拳も七色の光へと叩きこむ。その甲斐あって、覇王は魔族の代弁者とエルフ族の女王が放ったエネルギー波を粉砕せしめてみせる。ゼエゼエハアハアと肩で息をする覇王は鬼の形相のままに二人を睨みつける。そして、自分が勝ったとばかりに雄叫びをあげてみせる。
だが、魔族の代弁者とエルフ族の女王の心に『絶望』は訪れなかった。それもそうだ。『愛は無限のエネルギー』だからだ。愛は尽きることを知らない。愛は次々と生まれ出るのだ。ヒトは愛を確かめ合い、愛するヒトとの間で子を産み育ててきた。だからこそ、ヒトは歴史を刻んでくることが出来たのだ。ひとりでは決して出来ないのだ、歴史を積み重ねることは。
司祭が愛しあう二人に送った言葉がある。
『真実の愛は全ての苦難を乗り越える』
そして、教会に集まる皆は誓いのキスをする二人を祝福した後、彼女たちにさらにこの言葉を送った。
『キミたちの行く先に幸福が訪れん事を』
二人の道には、思い描く幸せよりもはるかに多くの困難が待ち受けているだろう。それは棘の道であることは古今東西、変わりない。しかし、それでも彼女たちは手を取り合い、互いを助けて、天寿を全うするのだ……。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!
SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、
帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。
性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、
お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。
(こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
混沌王創世記・双龍 穴から這い出て来た男
Ann Noraaile
ファンタジー
異世界から、敵対する二人の王子が、神震ゴッド・クウェイクに弾き飛ばされ、地球の荒廃した未来にやって来た。
王子のうち一人は、記憶を失なったまま、巨大防護シェルター外の過去の遺産を浚うサルベージマン見習いのアレンに助けられる。
もう一人の王子はこのシェルターの地下世界・ゲヘナに連行され、生き延びるのだが、、。
やがて二人の王子は、思わぬ形で再会する事になる。
これより新世紀の創世に向けてひた走る二人の道は、覇道と王道に別れ時には交差していく、、長く激しい戦いの歴史の始まりだった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜
橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界に来てミミズからのスタートだったけど人型に転生したらたくさんの嫁が出来て幸せです
佐原
ファンタジー
ある日ある男が転生した。しかも虫の姿で!スキル転生で最終進化すると他の種族になれる。これに目をつけたは良いもののなかなか人型になれない。ついに人型になったけど神より強くなってしまった。彼はやっと人型になったのでやっとゆっくり出来ると思ったので普通の生活を目指す。しかし前途多難である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる