【R18】聖女の思春期奇行列伝 ~創造主は痛みを快楽に変える変態を創り出す~

ももちく

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第19章:自由意志

第7話:天使長

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 そんなベリアルが悪魔将軍:ルシフェルを蹴り飛ばし、玉座の間を見渡す。アンドレイ=ラプソティは案の定、堕天移行状態真っ盛りであるし、彼の相方であるミサ=ミケーンの服には血糊がべったりと付いている。だがそれでも、何があったのか、よくわからないが、ミサ=ミケーンは2本の猫尾を持つ『ネコマタ』に魔進化しているので、ミサ=ミケーンの状態はそれほど深刻ではなさそうだと認識する。

「ちょうど良い感じに真打ち登場ってか! こりゃまだまだ怠けることは出来なさそうだな!?」

「ベリアル、遅いのデス! アンドレイ様が堕天移行状態から戻らないのデス! 角をベキッと折っただけではダメみたいなのデス!」

「あーーー。そりゃあ、アンドレイもご愁傷様だな……」

 ベリアルはナムナムとアンドレイ=ラプソティを拝むことになる。あの角をへし折るのは、相当の痛みを伴うことをわが身で知っている。アンドレイ=ラプソティ同様、ベリアルも堕天する時に額から悪魔化を示す角が生えてきた。鹿シッカの角同様、堕天移行状態が完全に済めば、あれは生え変わりのようにポロリと簡単に折れる。だが、その途中で折られるとなると、尋常ならざる痛みが身体中に走るのだ。

「かつては俺の堕天を止めようと、尽力してくれた女がいたな。つか、今思い出したら、とんでもねえことをしてくれたもんだぜっ!!」

「ほぅ……? わたくしは貴方に恨まれていたの? それは初耳よ?」

「ゲゲーーー! ミカエルゥゥゥ!!」

 ベリアルはその場から跳ね上がるように、後ずさりしてしまう。おろおろと慌てふためくベリアルは声がした方へと視線を向ける。そこには直径1ミャートルほどの光り輝く球体が、いつの間にか現出していたのである。

「ふんっ。同僚の危機に、今更、現れたか。もう少し早い到着を期待していたのだがな?」

 悪魔皇:サタンは胸の前で腕を組み、さらには踏ん反り帰りつつ、突然、この場に現れた光体に向かって質問を飛ばしてみせる。光体はフンッ! と鼻息だけで悪魔皇:サタンからの言葉を蹴り飛ばしてみせる。

「天界の十三司徒であるアンドレイ=ラプソティの身柄を拘束しにきただけよ。彼には色々と嫌疑がかけられているの。魔界に落っこちる前に、まずは天界裁判に出廷してもらうのよ。何か手順を間違えていまして?」

「間違いだらけだろう。そもそもとして、そこの小娘が、アンドレイを天界へと連れ戻すはずだったのだろう? 創造主:Y.O.N.Nにとって、不都合でも起きたのか?」

「貴方の質問に答える義務はありませんことよ。アリス。さっさともう1本の角を折ってさしあげて? それで、一時的にでも堕天移行状態は止まりますわ」

「は、はい! ミカエルお姉様! えええいっ!」

 この場に現れた光体は、アリス=アンジェラに命令を下すことは、さも自分の役目の如くに振る舞う。アリス=アンジェラは焦りまくりの状態で、アンドレイ=ラプソティの額から生えているもう1本の角を両手で鷲掴みにする。しかしながら、アンドレイ=ラプソティは、それを嫌がり、両手でアリス=アンジェラをドンッ! という音と共に押しのけるのであった。

 そうした後、アンドレイ=ラプソティはアリス=アンジェラや光体にも敵意を剥き出しにしつつ、自分の近くにいるミサ=ミケーンを護る姿勢を取るのであった。そんな状態のアンドレイ=ラプソティを見て、光体はあからさまにため息をつくのであった。

「心から護るべき対象がいれば、アンドレイ=ラプソティの堕天は食い止められると踏んでいたが、それを逆手に取るとは、さすがは卑怯で傲慢な悪魔皇らしいやり方ですこと」

「お褒めに預かり、光栄の限りだ。愛する者を奪われると思い込んでいる今のアンドレイ=ラプソティはどこの誰よりも不安定であり、強者であるぞ。さあ、如何する気だ?」

 悪魔皇:サタンは天界の十三司徒の頂点に立つ天使長:ミカエルが、この場に現れたというのに、傲慢とした態度を貫き通す。まさに傲慢の中の傲慢といった感じを決して崩そうとはしなかった。しかしながら、傲慢の対局にあるはずの天使長:ミカエルが次に取った行動で、さすがの悪魔皇:サタンも驚愕の表情となってしまう。

「傲慢の対義語は『謙虚』であろう!? そこはわれにかしずき、どうか、わたくしの身を好きなようにして良いから、アンドレイ=ラプソティを魔界に堕とさぬようにしてください、おちんこさんがほしいのぉぉぉ!! では無いのか!?」

「アホか。そこの天使生経験の足らぬアリス=アンジェラなら、間違って選んでしまいそうな選択を、大天使であり、同時に天使長であるわたくしが選ぶわけがありませんことよ。あと、悪魔に対して、何故に謙虚に振る舞わなくていけないのかしら?」

 ミカエルはアンドレイ=ラプソティと彼が護っているネコマタを光に包み、この場から、どこか遠くへと転送してしまったのである。この場が荒れる要因自体を取り除いたことで、ミカエルはアンドレイ=ラプソティのみならず、アリス=アンジェラの貞操の危機すらも排除してみせるのであった。

「さっすが大天使:ミカエルだなっ! 御大将! それじゃ、俺もここは退散させてもらうぜっ!」

「ベリアル、貴様はわれと同じ七大悪魔であろうがっ! 何故にミカエルと戦おうとせぬのだっ!」

「ミカエルには借りがあるんでなっ! アリス嬢ちゃん、とっとと逃げるぞっ!」

 ベリアルはアンドレイ=ラプソティとミサ=ミケーンが、この場から脱出できた途端、これ以上、ここに居る必要性は無いと断じ、さっさと自分たちも退散してしまおうとした。しかし、ベリアルから差し出された手を勢いよくパシーン! という音と共に弾いてしまうアリス=アンジェラであった。彼女のその所作を見て、あからさまに鼻を高くしてしまう光体であった。

「さすがは創造主:Y.O.N.N様の愛娘ね。いくら悪魔皇相手と言えども、尻尾を巻いて逃げるようなことをしてはいけないと、本能でわかっているみたいですわ」

「お、おい!? 何を感心してんだ!? アリス嬢ちゃんもアリス嬢ちゃんだっ! うちの御大将相手にやる気満々になってんじゃねえよ!?」

「うっさいのデス! 貴方は生来からの怠け者ゆえに、退いてはいけないところでも、あっさり退いてしまうダメ男かもしれまセン。でも、ボクは半天半人ハーフ・ダ・エンゼルと言えども、立派な天使なのデス!」

 アリス=アンジェラ。いや、天使なら誰しもがそうなのだが、天使が悪魔を前にして、何もせずに逃げるなど、天使としての存在価値を疑われることになる。そんなことをするくらいなら、頭の上に浮かぶ天使の輪を捨てて、とっとと堕天してしまったほうがよっぽどマシだと言える。

 アリス=アンジェラは龍剣ドラゴン・バスターを両手で握り直し、未だに踏ん反り返り続ける悪魔皇:サタンに対して。その鋭い切っ先を突きつける。見る見る内に、悪魔皇:サタンのコメカミには青筋が浮き上がってくる。それを見ているだけで、アリス=アンジェラの喉はカラカラに乾いていくのであった。
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