【R18】聖女の思春期奇行列伝 ~創造主は痛みを快楽に変える変態を創り出す~

ももちく

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第18章:地上界の伏魔殿

第7話:悪魔将軍

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 悪魔皇:サタン、悪魔将軍:ルシフェル、悪魔宰相:ベルゼブブは魔城にある玉座の間において、モニター越しに魔城へと接近してきていた同胞と天界の十三司徒のひとり、そして、創造主:Y.O.N.Nの愛娘を観察し続けていた。しかしながら、その眼にふと、彼らに遅れずに必死についてきている半猫半人ハーフ・ダ・ニャンの存在に気づくのであった。

「ん? アンドレイが子種を仕込んだ小娘がまだ必死に喰らいついてるではないか」

「そうですワネ。身重なのだから、どこかで離脱させると思っていましたノニ」

「なかなかにひどい男だな、アンドレイという男は。われでも、身重の嫁を安全な場所へ避難させるぞ?」

 七大悪魔に『ひどい男』だと揶揄されているとは露も知らぬアンドレイ=ラプソティであった。アンドレイ=ラプソティはヘックショーーーン! と大きなくしゃみをする。その様子を見ていた七大悪魔たちは大爆笑してしまうのであった。

「おいおい。噂をすれば何とやらと言うが、ここまで素直な反応を示すモノなのか!?」

「プフッ。失敬。悪魔将軍ともあろう者が笑ってしまいました。アンドレイはアンドレイで何か考えがあってのことですよ」

「ただ単に嫁の言うことを蹴り飛ばせないだけだと思いマスワ。でも、今のくしゃみは面白すぎナノヨ」

 さすがは七大悪魔のひとりと、天界の十三司徒、そして、創造主:Y.O.N.Nの愛娘だ。自業自得で悪魔を召喚し続けているというのに、彼らの移動スピードはまったく衰えることなく、段々と魔城の入り口へと近づいてきていた。しかしながら魔城の玉座の間に居る面々は余裕しゃくしゃくと言った感じで、アンドレイ=ラプソティたちを観察し続けた。

「そろそろ出迎えてやったほうが良いか?」

「では、次は私が彼らの前に行ってきましょう」

「頼みましたワヨ、ルシフェル。でも、ワタクシが楽しむ分は残しておいてくだサイナ?」

「挨拶する程度ですよ。そこはご心配なく……」

 ルシフェルはそう言うなり、玉座の間から存在感を薄めていく。そして、完全に玉座の間から、彼の存在感が消えてしまうと、悪魔皇:サタンのニヤニヤ顔はますます強まるのであった。悪魔将軍:ルシフェルなら、この余興をもっと面白いモノにしてくれるという確信があったからでもあったのだ。

「やっと、魔城の入り口に到達したな。しっかし、これまたでかい鉄条門だ。まさに処女おとめの膣口みたいだぜっ!」

「相変わらず、品の無い表現をしますね。同じ七大悪魔とは思えないほどに品位に欠けます」

「おおう!? 悪魔将軍様じゃねえかっ! もう少し、登場が遅いと思っていたんだがな!?」

 処女おとめの卑肉のようにぴったりと閉じた鉄条門の前に突然現れたのは、ベリアルの上司に当たる悪魔将軍:ルシフェルであった。品位の欠片も持ち合わせていないベリアルが死神の大鎌デスサイズを肩に掛けながら、これまた品位の無い威圧をルシフェルに対して、おこなっていた。

 しかしながら、悪魔将軍:ルシフェルは左脇に兜を抱え込んだままの将軍らしい威圧を醸し出し、同じ七大悪魔として、見てほしくないと言いたげな威厳をその身体から溢れさせていたのである。

「チンピラと偉大な将軍様くらいに品位に差がありますニャン」

「見た目だけで、ベリアルが負けてますね」

「顔だけはナイスミドルですが、中身はドチンピラですカラ、ベリアルは。残念中年とはまさにこのとこデス」

「うっせえ、お前ら、小声で耳打ち合っているみたいだが、我輩は地獄耳なんだからなっ!?」

 ベリアルはルシフェルから目線を切ってまで、こそこそと耳打ちし合う仲間たちにツッコミを入れる。ルシフェルもつられて、クスクスと紳士らしく笑いだすのであった。ベリアルとしては、こんなに面白くないことはなかった。確かに皆の言う通り、悪魔将軍:ルシフェルは一見、紳士面をしている。

 しかしながら、こいつの示す策略は、腹黒さ全開である。性格の悪さが滲み出ているのだ。その事実をアリス嬢ちゃんたちに事細かく説明してやりたいが、そうしたところで、ルシフェルが軽く躱すことくらい予想済みである。

 だからと言って、ベリアルは上司に当たるルシフェルに対して、ガラの悪い態度を改めようとしなかった。ズボンのポケットに両手を突っ込んだまま、ヤンキーよろしくといった感じを出しつつ、ルシフェルのつま先から頭のてっぺんまで舐めるように見回す。

「そんなに毛嫌いしなくても良いでしょう。私は貴方が娘として迎え入れたいと言っているアリス殿に何かしにきたわけではないのですから」

「それは『今は』だろ? 違うか?」

「ふむ。さすがに鋭い。なら、こぶしを交えて、語り合いましょうか?」

「上等っ!!」

 ベリアルはまんまと策に嵌められたと思った。だが、アリス=アンジェラの名前を出されて、引っ込んでいられるほど、ベリアルは大人では無い。身体の内側から魔素を噴き出し、それを背中に伝播させる。そうすることで、ベリアルの背中には黒と黄色を基調とした6枚の悪魔羽が生える。

 対して、ルシフェルは左脇に抱えていた兜を頭に装着し、その後、背中から黒と蒼を基調とした6枚の悪魔羽を現出させる。そうした後、ルシフェルは腰に佩いた鞘から、細身の剣を抜き出す。

「おいおい。いきなり薔薇乙女の細剣ローズヴァージン・レイピアを抜くのか!? ちょっと早すぎやしないか!?」

 悪魔将軍:ルシフェルが鞘から抜いた細剣レイピアには薔薇のような花弁の鍔、そして、その薔薇の蒼さを象徴するように蒼い刃であった。蒼い薔薇は地上界や天界で咲くことは無い。だが、魔界では別であった。魔界の薔薇は蒼色である。そして、天界の住人の血を吸うことで、朱に染まるのであった。

「今宵の薔薇乙女の細剣ローズヴァージン・レイピアは血を吸いたがっています。さあ、ベリアル。貴方の心臓から流れる蒼い血で、私の細剣レイピアをますます蒼く染め上げてくださいっ!」

「チッ! これだから、ルシフェルに刃物って言われるんだよっ! 正気に戻りやがれっ!」

 ルシフェルは憤怒の権現様だ。普段は冷静沈着で、魔界一の紳士とも呼べる男である。しかし、彼の性格を一変させるスイッチが存在した。そう、それはまさにルシフェルの手に武器の類が握られる時である。ルシフェルは今までの紳士さからかけ離れた、ギラギラとした目つきで、ベリアルの懐へと飛び込む。

 ベリアルはチッ! と盛大に舌打ちし、バックステップしながら、死神の大鎌デスサイズを振るい、胸元へと吸い込まれてくる薔薇乙女の細剣ローズヴァージン・レイピアを弾いてみせる。

 だが、ルシフェルの突きは、その一度きりではなかった。眼にも止まらぬ速さとはまさにこのことであり、アリス=アンジェラですら、眼で追えなくなってしまう。そんな状況に持っていかれたベリアルはとことん嫌気を感じ、どうやっても肉薄してくるルシフェルのみぞおちに右足を添えて、無理やりに前方へと、その右足を押し込むのであった。
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