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第17章:ミハエル救出
第1話:鼻つまみ者
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「では、頼みましたぞ、アンドレイ様。無事、次代の帝を保護してきてくだされ」
「はい。悪魔皇:サタンが旧マケドナルド王国へ先に向かっている以上、ニンゲンたちの手では負えません。私と旅の仲間でなんとかしてみせましょう。その代わりと言ってはなんですが、幼竜の世話はお任せします」
「うむっ。アンドレイ様の息子と思って、お世話させてもらいましょうぞ!」
ロビン=ブルースト卿の邸宅で一泊したアンドレイ=ラプソティたちは、悪魔皇:サタンが手ぐすね引いて待っている旧マケドナルド国へと向かおうとしていた。旅立ちの朝、ロビン=ブルーストは長子のルイ=ブルースト。そして、その息子である10歳のユリアン=ブルーストをアンドレイ=ラプソティに紹介するのであった。
これは唾つけルールと同様の行為であり、アンドレイ=ラプソティは苦笑する他無かった。ロビン=ブルーストはこれから起きる帝の世代交代に向けて、着々と準備を進めている真っ最中である。自分たち一族の地位を確かなモノにするには、アンドレイ=ラプソティ様に是非とも、次代の帝となる予定のミハエル=アレクサンダーを確保してもらわなければならない。
ダン=クゥガーなる男が宮廷で暴れてくれたおかげで、第3位以下の皇位継承権を持つ皇子たちは、ことごとく抹殺された。ミハエル=アレクサンダーの対抗馬として残されたのはレオン=アレクサンダー帝の元・正妻であるフローラ=アレクサンダーのとの間に出来た息子のブルー=アレクサンダーのみだ。レオン=アレクサンダー帝が残した子供たちは数知れずおれども、皇位継承権を与えられているのは、ほんの数名だけである。
第1位と第2位はともかくとして、それより下となると、ただのスペアとしての存在であるが、それでも非常事態の場合には役に立つことは確かだ。だが、レオン=アレクサンダー帝が一代で築いた大帝国は、第1位継承権を持つミハエル=アレクサンダー。そして、第2位継承権を持つブルー=アレクサンダーのみとなってしまった。
ここは是が非でも、ミハエル=アレクサンダーを手元に置いておかなければならないロビン=ブルーストであったが、やはり、悪魔皇:サタンが出現している地上界において、そこに介入することは、イコール死であることは否定できない。
そして、渡りに船とはまさにこのことで、レオン=アレクサンダー帝の右腕であるアンドレイ=ラプソティがミハエル=アレクサンダー救出の手をあげてくれた。ロビン=ブルーストは大義を手に入れたと同然であり、威厳を保ったまま、アンドレイ=ラプソティたちを送り出せたのである。
「あの爺さん。なかなかに食わせモノだな。喉から手が出るほどに、レオン=アレクサンダーの跡継ぎを手に入れたいだろうにさ」
「そういう言い方は止めなさいな。彼だって、レオン亡き後の立ち回りに苦労することになるのです。そのための一助になることは否めませんが、それでも後ろ盾の無いミハエル様やトモエ様にとっては、かけがえの無い人物となります」
アンドレイ=ラプソティたちは先を急ぐためにも、大空を飛んで移動していた。その道中、ベリアルがボソリと不平不満を零したところを、アンドレイ=ラプソティがまあまあ……とたしなめたのである。しかしながら、話はそこで終わらなかった。ツッコミを入れる存在がベリアル以外にも居たからである。
「でも、不思議なことでッチュウけど、アンドレイ様自身がそのミハエル坊やの後ろ盾になれば良いんじゃないでッチュウか?」
「ボクもそう思いマス。アンドレイ様を天界へ一度、連れ戻す役割を担っているボクとコッシローさんですが、天界裁判が終われば、アンドレイ様は晴れて自由の身なのデス。天界での用事が済んだ後でも、ミハエルさんとやらの後ろ盾になれば良いのデハ?」
コッシロー=ネヅとアリス=アンジェラのツッコミはまさに正論であった。しかしながら、アンドレイ=ラプソティは首級をフルフルと左右に振るのであった。そんな彼の所作をコッシロー=ネヅと共に首級を傾げたのがアリス=アンジェラであった。
「わらわが察するに、アンドレイ様が直接的にトモエ様を援護できない理由がありそうじゃな。旧マケドナルド王国に向かうのも、本当は嫌なのかもしれんのう?」
「ヨーコさん……。なかなか鋭いですね。確かに彼女とは因縁浅からぬ仲ですが、嫌われているまではいかないと思いたいところです」
コッシロー=ネヅの背中に乗っているヨーコ=タマモが意味有り気に、アンドレイ=ラプソティに探りを入れてみせる。もちろん、アンドレイ=ラプソティは返事に困ってしまう。彼女らのやり取りを見ていた、同じくコッシロー=ネヅの背中に乗っているミサ=ミケーンが大きくため息をつくのであった。
「アンドレイ様は、レオン=アレクサンダー様が正妻の座をフローラ=アレクサンダー様から奪い、トモエ=アレクサンダー様にお与えになる時に、最後までレオン=アレクサンダー様に異を唱えた人物ですニャン」
「なるほどのぅ。では、そうだと言うのならば、なおさら、ミハエル派になろうとしているロビン=ブルースト卿のお世話になるのは、間違っていることにはなりませんかな?」
ヨーコ=タマモはただ単に不思議に思うことを素直に口にしたまでであった。だが、思いの他、ミサ=ミケーンのため息が大きいモノであったために、何があったのだろう? と訝しむことになる。
「アンドレイ様は肩書はレオン=アレクサンダー帝の帝政における宰相という位置づけですけど、同時に軍師でもあったのですニャン。レオン=アレクサンダー帝がこの大帝国を築いた際に、アンドレイ=ラプソティ様が勲功一番となるのは当然の話ですニャン」
「いったい、何の話をしておるのじゃ? それがトモエ様と何か関係があることかえ?」
「大有りですニャン。『天界の十三司徒』であり、地上界の大帝国の宰相ですニャンよ。その功績を讃えられ、その功績に見合うだけの報奨があってしかるべきですニャン。でも、アンドレイ=ラプソティ様は帝都の郊外に質素な庵と数枚の畑のみをもらっただけですニャン」
ヨーコ=タマモはふむ……と息をつき、ミサ=ミケーンが言っている意味を理解しようとする。そして、辿り着いた答えはただひとつ。
「なるほどのぅ。わらわも経験有りじゃ。異様なほどの能力を持っていればいるほど、ヒトの世では住みにくくてしょうがないのう」
「そう言うことですニャン。レオン=アレクサンダー帝が一代で築いた大帝国における鼻つまみ者はトモエ様とそのご子息だけでは無いのですニャン。アンドレイ=ラプソティ様も同様なのですニャン」
ヨーコ=タマモは納得したという顔つきになる。だが、未だに事情を理解してなさそうな可憐で絶壁洗濯板美少女が首級を傾げまくっていたのである。そして、その絶壁洗濯板美少女はあろうことか、爆弾発言をしてしまうのであった。
「アンドレイ様が鼻つまみ者になってしまったのは残念ですが、鼻つまみ者同士なら、仲良くできるんじゃないんデス?」
「それを言ってしまうか、アリス殿。争いは同レベルでしか起きないという言葉を知らぬようじゃな……」
「世の中、アリスちゃんのような純心なヒトばかりだと良かったのですニャン。しかし、妬み嫉みが渦巻く地上界は決して、天界の住人には理解できないのですニャン」
「はい。悪魔皇:サタンが旧マケドナルド王国へ先に向かっている以上、ニンゲンたちの手では負えません。私と旅の仲間でなんとかしてみせましょう。その代わりと言ってはなんですが、幼竜の世話はお任せします」
「うむっ。アンドレイ様の息子と思って、お世話させてもらいましょうぞ!」
ロビン=ブルースト卿の邸宅で一泊したアンドレイ=ラプソティたちは、悪魔皇:サタンが手ぐすね引いて待っている旧マケドナルド国へと向かおうとしていた。旅立ちの朝、ロビン=ブルーストは長子のルイ=ブルースト。そして、その息子である10歳のユリアン=ブルーストをアンドレイ=ラプソティに紹介するのであった。
これは唾つけルールと同様の行為であり、アンドレイ=ラプソティは苦笑する他無かった。ロビン=ブルーストはこれから起きる帝の世代交代に向けて、着々と準備を進めている真っ最中である。自分たち一族の地位を確かなモノにするには、アンドレイ=ラプソティ様に是非とも、次代の帝となる予定のミハエル=アレクサンダーを確保してもらわなければならない。
ダン=クゥガーなる男が宮廷で暴れてくれたおかげで、第3位以下の皇位継承権を持つ皇子たちは、ことごとく抹殺された。ミハエル=アレクサンダーの対抗馬として残されたのはレオン=アレクサンダー帝の元・正妻であるフローラ=アレクサンダーのとの間に出来た息子のブルー=アレクサンダーのみだ。レオン=アレクサンダー帝が残した子供たちは数知れずおれども、皇位継承権を与えられているのは、ほんの数名だけである。
第1位と第2位はともかくとして、それより下となると、ただのスペアとしての存在であるが、それでも非常事態の場合には役に立つことは確かだ。だが、レオン=アレクサンダー帝が一代で築いた大帝国は、第1位継承権を持つミハエル=アレクサンダー。そして、第2位継承権を持つブルー=アレクサンダーのみとなってしまった。
ここは是が非でも、ミハエル=アレクサンダーを手元に置いておかなければならないロビン=ブルーストであったが、やはり、悪魔皇:サタンが出現している地上界において、そこに介入することは、イコール死であることは否定できない。
そして、渡りに船とはまさにこのことで、レオン=アレクサンダー帝の右腕であるアンドレイ=ラプソティがミハエル=アレクサンダー救出の手をあげてくれた。ロビン=ブルーストは大義を手に入れたと同然であり、威厳を保ったまま、アンドレイ=ラプソティたちを送り出せたのである。
「あの爺さん。なかなかに食わせモノだな。喉から手が出るほどに、レオン=アレクサンダーの跡継ぎを手に入れたいだろうにさ」
「そういう言い方は止めなさいな。彼だって、レオン亡き後の立ち回りに苦労することになるのです。そのための一助になることは否めませんが、それでも後ろ盾の無いミハエル様やトモエ様にとっては、かけがえの無い人物となります」
アンドレイ=ラプソティたちは先を急ぐためにも、大空を飛んで移動していた。その道中、ベリアルがボソリと不平不満を零したところを、アンドレイ=ラプソティがまあまあ……とたしなめたのである。しかしながら、話はそこで終わらなかった。ツッコミを入れる存在がベリアル以外にも居たからである。
「でも、不思議なことでッチュウけど、アンドレイ様自身がそのミハエル坊やの後ろ盾になれば良いんじゃないでッチュウか?」
「ボクもそう思いマス。アンドレイ様を天界へ一度、連れ戻す役割を担っているボクとコッシローさんですが、天界裁判が終われば、アンドレイ様は晴れて自由の身なのデス。天界での用事が済んだ後でも、ミハエルさんとやらの後ろ盾になれば良いのデハ?」
コッシロー=ネヅとアリス=アンジェラのツッコミはまさに正論であった。しかしながら、アンドレイ=ラプソティは首級をフルフルと左右に振るのであった。そんな彼の所作をコッシロー=ネヅと共に首級を傾げたのがアリス=アンジェラであった。
「わらわが察するに、アンドレイ様が直接的にトモエ様を援護できない理由がありそうじゃな。旧マケドナルド王国に向かうのも、本当は嫌なのかもしれんのう?」
「ヨーコさん……。なかなか鋭いですね。確かに彼女とは因縁浅からぬ仲ですが、嫌われているまではいかないと思いたいところです」
コッシロー=ネヅの背中に乗っているヨーコ=タマモが意味有り気に、アンドレイ=ラプソティに探りを入れてみせる。もちろん、アンドレイ=ラプソティは返事に困ってしまう。彼女らのやり取りを見ていた、同じくコッシロー=ネヅの背中に乗っているミサ=ミケーンが大きくため息をつくのであった。
「アンドレイ様は、レオン=アレクサンダー様が正妻の座をフローラ=アレクサンダー様から奪い、トモエ=アレクサンダー様にお与えになる時に、最後までレオン=アレクサンダー様に異を唱えた人物ですニャン」
「なるほどのぅ。では、そうだと言うのならば、なおさら、ミハエル派になろうとしているロビン=ブルースト卿のお世話になるのは、間違っていることにはなりませんかな?」
ヨーコ=タマモはただ単に不思議に思うことを素直に口にしたまでであった。だが、思いの他、ミサ=ミケーンのため息が大きいモノであったために、何があったのだろう? と訝しむことになる。
「アンドレイ様は肩書はレオン=アレクサンダー帝の帝政における宰相という位置づけですけど、同時に軍師でもあったのですニャン。レオン=アレクサンダー帝がこの大帝国を築いた際に、アンドレイ=ラプソティ様が勲功一番となるのは当然の話ですニャン」
「いったい、何の話をしておるのじゃ? それがトモエ様と何か関係があることかえ?」
「大有りですニャン。『天界の十三司徒』であり、地上界の大帝国の宰相ですニャンよ。その功績を讃えられ、その功績に見合うだけの報奨があってしかるべきですニャン。でも、アンドレイ=ラプソティ様は帝都の郊外に質素な庵と数枚の畑のみをもらっただけですニャン」
ヨーコ=タマモはふむ……と息をつき、ミサ=ミケーンが言っている意味を理解しようとする。そして、辿り着いた答えはただひとつ。
「なるほどのぅ。わらわも経験有りじゃ。異様なほどの能力を持っていればいるほど、ヒトの世では住みにくくてしょうがないのう」
「そう言うことですニャン。レオン=アレクサンダー帝が一代で築いた大帝国における鼻つまみ者はトモエ様とそのご子息だけでは無いのですニャン。アンドレイ=ラプソティ様も同様なのですニャン」
ヨーコ=タマモは納得したという顔つきになる。だが、未だに事情を理解してなさそうな可憐で絶壁洗濯板美少女が首級を傾げまくっていたのである。そして、その絶壁洗濯板美少女はあろうことか、爆弾発言をしてしまうのであった。
「アンドレイ様が鼻つまみ者になってしまったのは残念ですが、鼻つまみ者同士なら、仲良くできるんじゃないんデス?」
「それを言ってしまうか、アリス殿。争いは同レベルでしか起きないという言葉を知らぬようじゃな……」
「世の中、アリスちゃんのような純心なヒトばかりだと良かったのですニャン。しかし、妬み嫉みが渦巻く地上界は決して、天界の住人には理解できないのですニャン」
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