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第15章:ダン=クゥガー
第9話:残る謎
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アリス=アンジェラの両の拳とダン=クゥガーが展開した魔法陣との間から稲光が四方八方へと発散していた。その稲光がダン=クゥガーが展開している剣と魔法の闘技場の壁面にぶち当たり、さらに稲光が四方八方へと広がっていく。そのまばゆい光が堕天移行状態となっていたアンドレイ=ラプソティの眼をも刺激する。
「美しいです……ね」
「ああ、美しいな。意地と意地の張り合い。これこそが戦いの醍醐味だろう」
「わたしも誰かと、このような鍔競り合うような戦いをしたいものです」
「お前ほどの実力者となると、七大悪魔の誰かになるんだろうな。ちなみに、我輩は同じテーブルで酒を酌み交わした仲とはやり合うつもりは無い」
「それは怠惰ゆえですか? それとも、友情ゆえですか?」
「どっちでも好きなほうに捉えてくれ。考えるのは『怠惰』な我輩の役目ではない」
『天界の十三司徒』と『七大悪魔』との間に、友情という言葉はそもそも存在しない。そんなことは百も承知であるアンドレイ=ラプソティであった。しかし、それでも聞いておかねばならないと、この時、思ったのである。アンドレイ=ラプソティは段々と正気を取り戻しつつあった。黒く染まった6枚中、2枚の羽も白に近づいていた。剣と魔法の闘技場の中を走る稲光が強まれば強まるほど、アンドレイ=ラプソティはただただ、その光景を美しいとしか思えなくなっていた。
そんな剣と魔法の闘技場の中で戦う男女の決着がつこうとしていた。アリス=アンジェラは両手を突き伸ばせるだけ、突き伸ばす。ダン=クゥガーは展開している魔法陣に亀裂が走ろうとも、そこに呪力を注入しつづけた。そして、ついにダン=クゥガーが展開している魔法陣全体に亀裂が縦横無尽に走り、ついにガラス瓶が内側から爆ぜるように破裂してしまう。
ダン=クゥガーの顔には満足感が漂っていた。厭世観漂う男の身体には、もはや、そう言った雰囲気は一切出ていなかった。呪力と神力の勝負に決着がつき、ダン=クゥガーの顔はギラギラとした表情から晴れやかな表情へと移行していた。
「てめえの勝ちだ。さあ、思う存分、俺様を殴れ……」
「ハイ! では、遠慮ナクッ!!」
「そこはお互いによくやったと言うべきところだろぉぉぉ!? ぶべぇぇぇぇぇ!!」
「クズ男の性根は一発殴ったところで、治らないのデス! さあ、怒涛のラッシュの始まりなのデス!」
アリス=アンジェラの辞書に『容赦』という言葉は無い。その辞書から、その言葉を削った張本人であるベリアル自身ですら、笑うしか無かった。百獣の王はウサギ一匹にでも本気を出さねばならぬと教えたベリアルであったが、事ここに至っては、さすがにダン=クゥガーなる男が可哀想に思えて仕方が無かった。
「あのぅ。ダン=クゥガー様にもはや未練も何も無いのじゃが……。さすがに身体を重ねた男があそこまでボロ雑巾にされるのは、見ていて忍びないのじゃ……」
「あちきも、もし、アンドレイ様がクズ男だから、制裁してほしいと思うことがあったとしても、あそこまでボコボコにしなくても良い気がしますニャン」
ダン=クゥガーの元・軍師である半狐半人のヨーコ=タマモは周りの皆に陳情を訴えかける。それに伴い、半猫半人のミサ=ミケーンも、さすがにアリス=アンジェラはやりすぎだと主張する。だが、徒党の男連中は、首級を左右に振り、今の昂っているアリス=アンジェラを止める術は持たないと主張するのであった。
「よく考えろ。お前らだって気付いているだろ? 今のアリス嬢ちゃんを止めに入ったら、我輩らも一緒にボコられるって」
「そう……ですね。好敵手と思える相手との戦いを制した時は、どうしても、その昂りを抑えることは出来ません。私ですら、アリス殿と同じ立場であれば、相手をボコっていたことでしょう」
「チュッチュッチュ。ダン=クゥガーには悪いでッチュウけど、もう少し、アリスちゃんにボコられてもらうのでッチュウ……」
そもそもとして、ダン=クゥガーが展開している領域は、未だ解かれていなかった。そのせいもあって、男連中がアリス=アンジェラを止めに行くことは不可能であった。この強固なタイマン用決闘フィールドに他者が足を踏み入れることは出来ないのだ。その事実に男連中が気づいたのは、ダン=クゥガーの顔の形が茹蛸のようになった後であった。
「おいおい。どうすんだ!? いい加減、アリス嬢ちゃんを止めないと、撲殺案件になるぞ!?」
「あのぉ……。アリス殿。ダン=クゥガーは、私と因縁がある形なので、出来るなら、トドメは私に取っておいてもらえると」
「チュッチュッチュ。どうしたものでッチュウか? って悩んでいる間にも、アリスちゃんが満足したのか、ダン=クゥガーを殴る手を止めてくれたのでッチュウ」
「ふぅ……。一命は取りとめてくれたようじゃが……。しかし、おかしいのう? この剣と魔法の闘技場を創り出しているダン=クゥガー様があそこまでボコられれば、自動的に解除される仕組みだと聞いておるのじゃが……」
ダン=クゥガーの元・軍師であるヨーコ=タマモは、それとなく、ダン=クゥガーから剣と魔法の闘技場の仕組みについて、聞かされていた。しかしながら、この領域の本質については、彼の口から直接聞かされたことは無い。
ダン=クゥガー様が実際に、この領域を展開し、その中で相手を嬲りモノにしてきた過程を見てきたことで、それとなく、この剣と魔法の闘技場の全容を把握したつもりになっていた。だが、実際のところ、未だに、この領域は解除されていない。
(ダン=クゥガー様の対戦相手が再起不能レベルでボコられれば、この剣と魔法の闘技場は次の対戦相手をその内側へと入れる仕組みなのじゃ。まさかと思うが、この領域内には、他に侵入者が居るということかえ??)
ヨーコ=タマモはとある推測を立てることになる。そもそもとして、この領域は謎の部分が多かった。一番の疑問として、もし、タイマン勝負にダン=クゥガー様が負けてしまった場合、自動的にこの領域が解除されるのか? という疑問がつきまとっていた。
だが、この剣と魔法の闘技場内において、ダン=クゥガー様は絶対王者であった。ダン=クゥガー様はこの領域内において、自身の呪力を数百倍に引き上げることが出来るのだ。だからこそ、堕天移行状態のアンドレイ=ラプソティですら、手玉に取ってみせた。
そんなダン=クゥガー様を神力技でねじ伏せたアリス=アンジェラには脱帽する他無かった。だが、アリス=アンジェラの勝利により、前から持っていた疑問が解けない謎として、残されることになる……。
「美しいです……ね」
「ああ、美しいな。意地と意地の張り合い。これこそが戦いの醍醐味だろう」
「わたしも誰かと、このような鍔競り合うような戦いをしたいものです」
「お前ほどの実力者となると、七大悪魔の誰かになるんだろうな。ちなみに、我輩は同じテーブルで酒を酌み交わした仲とはやり合うつもりは無い」
「それは怠惰ゆえですか? それとも、友情ゆえですか?」
「どっちでも好きなほうに捉えてくれ。考えるのは『怠惰』な我輩の役目ではない」
『天界の十三司徒』と『七大悪魔』との間に、友情という言葉はそもそも存在しない。そんなことは百も承知であるアンドレイ=ラプソティであった。しかし、それでも聞いておかねばならないと、この時、思ったのである。アンドレイ=ラプソティは段々と正気を取り戻しつつあった。黒く染まった6枚中、2枚の羽も白に近づいていた。剣と魔法の闘技場の中を走る稲光が強まれば強まるほど、アンドレイ=ラプソティはただただ、その光景を美しいとしか思えなくなっていた。
そんな剣と魔法の闘技場の中で戦う男女の決着がつこうとしていた。アリス=アンジェラは両手を突き伸ばせるだけ、突き伸ばす。ダン=クゥガーは展開している魔法陣に亀裂が走ろうとも、そこに呪力を注入しつづけた。そして、ついにダン=クゥガーが展開している魔法陣全体に亀裂が縦横無尽に走り、ついにガラス瓶が内側から爆ぜるように破裂してしまう。
ダン=クゥガーの顔には満足感が漂っていた。厭世観漂う男の身体には、もはや、そう言った雰囲気は一切出ていなかった。呪力と神力の勝負に決着がつき、ダン=クゥガーの顔はギラギラとした表情から晴れやかな表情へと移行していた。
「てめえの勝ちだ。さあ、思う存分、俺様を殴れ……」
「ハイ! では、遠慮ナクッ!!」
「そこはお互いによくやったと言うべきところだろぉぉぉ!? ぶべぇぇぇぇぇ!!」
「クズ男の性根は一発殴ったところで、治らないのデス! さあ、怒涛のラッシュの始まりなのデス!」
アリス=アンジェラの辞書に『容赦』という言葉は無い。その辞書から、その言葉を削った張本人であるベリアル自身ですら、笑うしか無かった。百獣の王はウサギ一匹にでも本気を出さねばならぬと教えたベリアルであったが、事ここに至っては、さすがにダン=クゥガーなる男が可哀想に思えて仕方が無かった。
「あのぅ。ダン=クゥガー様にもはや未練も何も無いのじゃが……。さすがに身体を重ねた男があそこまでボロ雑巾にされるのは、見ていて忍びないのじゃ……」
「あちきも、もし、アンドレイ様がクズ男だから、制裁してほしいと思うことがあったとしても、あそこまでボコボコにしなくても良い気がしますニャン」
ダン=クゥガーの元・軍師である半狐半人のヨーコ=タマモは周りの皆に陳情を訴えかける。それに伴い、半猫半人のミサ=ミケーンも、さすがにアリス=アンジェラはやりすぎだと主張する。だが、徒党の男連中は、首級を左右に振り、今の昂っているアリス=アンジェラを止める術は持たないと主張するのであった。
「よく考えろ。お前らだって気付いているだろ? 今のアリス嬢ちゃんを止めに入ったら、我輩らも一緒にボコられるって」
「そう……ですね。好敵手と思える相手との戦いを制した時は、どうしても、その昂りを抑えることは出来ません。私ですら、アリス殿と同じ立場であれば、相手をボコっていたことでしょう」
「チュッチュッチュ。ダン=クゥガーには悪いでッチュウけど、もう少し、アリスちゃんにボコられてもらうのでッチュウ……」
そもそもとして、ダン=クゥガーが展開している領域は、未だ解かれていなかった。そのせいもあって、男連中がアリス=アンジェラを止めに行くことは不可能であった。この強固なタイマン用決闘フィールドに他者が足を踏み入れることは出来ないのだ。その事実に男連中が気づいたのは、ダン=クゥガーの顔の形が茹蛸のようになった後であった。
「おいおい。どうすんだ!? いい加減、アリス嬢ちゃんを止めないと、撲殺案件になるぞ!?」
「あのぉ……。アリス殿。ダン=クゥガーは、私と因縁がある形なので、出来るなら、トドメは私に取っておいてもらえると」
「チュッチュッチュ。どうしたものでッチュウか? って悩んでいる間にも、アリスちゃんが満足したのか、ダン=クゥガーを殴る手を止めてくれたのでッチュウ」
「ふぅ……。一命は取りとめてくれたようじゃが……。しかし、おかしいのう? この剣と魔法の闘技場を創り出しているダン=クゥガー様があそこまでボコられれば、自動的に解除される仕組みだと聞いておるのじゃが……」
ダン=クゥガーの元・軍師であるヨーコ=タマモは、それとなく、ダン=クゥガーから剣と魔法の闘技場の仕組みについて、聞かされていた。しかしながら、この領域の本質については、彼の口から直接聞かされたことは無い。
ダン=クゥガー様が実際に、この領域を展開し、その中で相手を嬲りモノにしてきた過程を見てきたことで、それとなく、この剣と魔法の闘技場の全容を把握したつもりになっていた。だが、実際のところ、未だに、この領域は解除されていない。
(ダン=クゥガー様の対戦相手が再起不能レベルでボコられれば、この剣と魔法の闘技場は次の対戦相手をその内側へと入れる仕組みなのじゃ。まさかと思うが、この領域内には、他に侵入者が居るということかえ??)
ヨーコ=タマモはとある推測を立てることになる。そもそもとして、この領域は謎の部分が多かった。一番の疑問として、もし、タイマン勝負にダン=クゥガー様が負けてしまった場合、自動的にこの領域が解除されるのか? という疑問がつきまとっていた。
だが、この剣と魔法の闘技場内において、ダン=クゥガー様は絶対王者であった。ダン=クゥガー様はこの領域内において、自身の呪力を数百倍に引き上げることが出来るのだ。だからこそ、堕天移行状態のアンドレイ=ラプソティですら、手玉に取ってみせた。
そんなダン=クゥガー様を神力技でねじ伏せたアリス=アンジェラには脱帽する他無かった。だが、アリス=アンジェラの勝利により、前から持っていた疑問が解けない謎として、残されることになる……。
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