【R18】聖女の思春期奇行列伝 ~創造主は痛みを快楽に変える変態を創り出す~

ももちく

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第14章:首都攻防戦

第3話:ミサの戦い

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「うぉ! こりゃ、意外なところからの一撃だなっ! あんた、名前は何て言うだい!?」

 クリスティーナ=ベックマンはヨダレが口から零れ落ちそうになっていた。半龍半人ハーフ・ダ・ドラゴンである自分の肌を傷つけることが出来る天界の騎乗獣と出会えたこと自体が喜びに満ちた瞬間である。だが、それ以上に驚いたのはクラウチングスタートから走った自分に対応できる身のこなしを持つ忍者服姿の半猫半人ハーフ・ダ・ニャンに興味を根こそぎ持っていかれることになる。

シノビは名前を明かさないのニャン! でも、冥途の土産に、あちきの名前を教えておくニャン!」

 シノビは任務の都合上、名前を決して知らぬ相手に明かしてはならない掟がある。しかしながら、それにも一部例外がある。それは確実に殺す相手には名前を告げても良いのだ。半猫半人ハーフ・ダ・ニャンのくノ一はかの半龍半人ハーフ・ダ・ドラゴンを絶対に自分のあるじに近づけてはいけないという確信めいたモノがあった。

 それゆえに『絶対に殺す』と固く心に誓ったのである。半猫半人ハーフ・ダ・ニャンのくノ一は紅いスカーフを口元からずらし、はっきりとした口調で自分の名前を半龍半人ハーフ・ダ・ドラゴンに告げる。

「ミサ=ミケーンってか。ケッ! 良い名前だ。それに今日は死ぬにはもってこいの日だなぁ!!」

「それはどっちのことを言っているのですかニャン?」

「お前に決まってるじゃんかっ!」

 半龍半人ハーフ・ダ・ドラゴンのクリスティーナ=ベックマンは紅い竜眼をますますギラギラと輝かせ、ミサ=ミケーンに肉薄する。ミサ=ミケーンは片手に一本づつ短剣ダガーを持ち、次々と繰り出される貫手ぬきてを捌いていく。しかし、半龍半人ハーフ・ダ・ドラゴンの皮膚は地上界に存在する生物の中で、最も堅い。竜鱗に覆われてはいないモノの、クリスティーナ=ベックマンの貫手ぬきてはダイヤモンドすら紙のように貫いてしまうかのようなイメージを、ミサ=ミケーンの脳裏に焼き付ける。

 防戦一方となってしまったミサ=ミケーンは、この間合いを嫌い、懐から黒い玉を抜き出す。それを地面に向かって勢い良く叩きつけることで、その黒い玉から灰色の煙が大量に溢れるのであった。半龍半人ハーフ・ダ・ドラゴンはその灰色の煙を吸い込まぬように右腕で口と鼻を塞ぐ。だが、半龍半人ハーフ・ダ・ドラゴンは、この煙は身体にとって、無害であることを知り、少しだけ安堵の表情を浮かべることになる。

 だが、それこそ、クリスティーナ=ベックマンにとっての油断であり、纏わりつく灰色の煙の隙間を縫うように、クリスティーナ=ベックマンの側面へと躍り出るのがミサ=ミケーンであった。

 ミサ=ミケーンは左手に持つ短剣ダガーの刃をクリスティーナ=ベックマンの首へと当てる。ミサ=ミケーンは確かにこの瞬間、クリスティーナ=ベックマンの命を刈り取ったと思った。しかし、そう思ったのはクリスティーナ=ベックマンの首に当てた短剣ダガーの刃に亀裂が走るまでであった。

 ギョッとした表情になったミサ=ミケーンは急いでその場から離れようとする。しかし、身を離していくミサ=ミケーンを追うように、クリスティーナ=ベックマンは左足で前蹴りを繰り出す。ミサ=ミケーンは蹴られた腹を抑えながら、地面を数度バウンドしながら、転げまわることになる。

「女の子のお腹を蹴っちゃダメだと、親に教えられていないのかニャン!?」

「おめえこそ、女の子の首に短剣ダガーを押し当てて良いって、親に教わったのかい!?」

 クリスティーナ=ベックマンは左手を首に当て、薄っすらと斬り筋が付いたそこを軽く揉むのであった。薄っすらと血が滲みだしていたが、彼女が左手で摩ると、その斬り傷はスゥ……と砂地に書いた線のように掻き消えてしまうのであった。しかしながら、流れた血自体は消えていないらしく、クリスティーナ=ベックマンは左手に付着した紅い血をペロリと舌で舐め上げるのであった。

 久方ぶりに自分の血の味を知ったクリスティーナ=ベックマンの身体の奥底から熱が浮かび上がることになる。彼女の興味心はますます膨れ上がることになり、その興味心はそのまま、クリスティーナ=ベックマンの戦闘力へと変換される。クリスティーナ=ベックマンは貫手ぬきて攻撃だけでなく、両足も絡めた攻撃をミサ=ミケーン相手にお見舞いし始める。

 ギンギィィィンッ! とクリスティーナ=ベックマンの攻撃を受ける度に、ミサ=ミケーンの両手に1本づつ持つ短剣ダガーが軋む音が辺りに響き渡ることになる。クリスティーナ=ベックマンの攻撃に合わせて、ミサ=ミケーンは短剣ダガーの刃を沿えることで、クリスティーナ=ベックマンが着ている拳法着の裾をボロボロにしていく。

 だが、ミサ=ミケーンがボロボロに出来るのは、クリスティーナ=ベックマンの拳法着と、左手に持つ短剣ダガーの刃のみである。10合、20合とクリスティーナ=ベックマンの手足とミサ=ミケーンが両手に1本づつ持つ短剣ダガーが交差していく。しかしながら、ついにミサ=ミケーンが左手で握っている短剣ダガーが根元からポッキリと折れ飛んでしまうのであった。

 ミサ=ミケーンはその場で後方へと跳躍し、両手をまだ無事な短剣ダガーの柄へと添える。そして、なるべくその短剣ダガーを柔らかく持ち、どんな攻撃がクリスティーナ=ベックマンから放たれようが、それに対処できるようにと身構える。

「どうやら、万策尽きたって感じになってるじゃんか。シノビの七つ道具は使わないのかい?」

「あちきが毒の類を使うのは、ご主人様の許可があってこそのことですニャン!」

「だとよ。おーーーい。明らかにおめえさんの従者が不利な状況だぞ? 毒の使用を許可してやっても良いんだぞ?」

 クリスティーナ=ベックマンは余裕しゃくしゃくといった雰囲気を醸し出しながら、眼の前の敵が守護対象としている6枚羽の熾天使セラフィムに対して、そう言ってのける。クリスティーナ=ベックマンは半龍半人ハーフ・ダ・ドラゴンである。象がかすり傷を受けただけで、絶命してしまうような猛毒でも、自分は少しだけ身体に痺れを覚える程度で済む毒耐性を持っている自負があった。

 そして、自分が相手をしているのは、明らかに『シノビ』と呼ばれる暗殺組織に所属している人物だということを、自覚している。だからこそ、持てるシノビすべの全てを用いて、自分と対峙するようにと、半猫半人ハーフ・ダ・ニャンに命じる。

 しかし、半猫半人ハーフ・ダ・ニャン自身もそうであるが、彼女の上司である6枚羽の熾天使セラフィムはついに、半龍半人ハーフ・ダ・ドラゴンを毒殺しようなどとはしなかった……。
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