【R18】聖女の思春期奇行列伝 ~創造主は痛みを快楽に変える変態を創り出す~

ももちく

文字の大きさ
上 下
111 / 202
第11章:竜皇の宮殿

第9話:ダンスホール

しおりを挟む
 アリス=アンジェラは不思議な空間に居た。コッシローさんが食べられたっ! と慌てて、竜皇の口を無理やり開き、その奥へと飛び込んだは良いが、そこは内蔵が迷路を作っている場所では無く、どこかの立派過ぎる宮殿の中だったからだ。しかし、立派過ぎる宮殿だというのに、そこで宮仕えしているはずのニンゲンはひとひとりとしていなかった。

 アリス=アンジェラはその大理石で出来た宮殿の中へと恐る恐る入っていく。しかし、どこを見渡しても、人っ子一人とて出会わず、段々と薄気味悪さのほうが勝ってきたのである。

「ここはどこなのデス? 誰かいませんカーーー!?」

 アリス=アンジェラは孤独に耐えきれなくなり、宮殿内で大声を張り上げる。すると、アリス=アンジェラの声に反応するかのように宮殿の奥へと続く大扉がゴゴゴ……と重低音を奏で始める。アリス=アンジェラはビクンッ! と可愛らしく跳ね上がるが、少し頬を赤らめた後、それを隠すような仕草をする。

「誰かが見ているわけではないのに、びっくりした姿を見られたと思ったのデス」

 アリス=アンジェラはテヘッと可愛らしく舌をチロッと出した後、開け放たれた大扉の奥へと歩いて進んでいく。そこは舞踏会が催されていると思える広間でった。天井にはガラス製の照明灯シャンデリアが規則正しく吊るされている。そして、2階から立ち見が出来るようにと通路が設置されていた。赤い絨毯がこのフロアを縦断していたが、残念なことに、実際にダンスを踊っている者はひとりも居なかった。

 アリス=アンジェラは思わず、ハァァァ……とため息をついてしまう。しかし、いきなり背中側から声を掛けられ、アリス=アンジェラは背中が強引に真っ直ぐとなりながら、その場で軽く跳ね上がってしまう。

「ハハッ。驚かせてしまったようだね。竜皇の宮殿へようこそ、お嬢さん」

「とっても驚いたのデス! でも、竜皇の宮殿だというのに、貴方ひとりしかいないのデスカ?」

「これは手厳しいことを言ってくれますね。実のところ、竜皇の宮殿は店じまいなのですよ。この宮殿のあるじに死期が迫ってます。しかしながら、そのあるじはそのことに関して、抗う気力を見せようとはしていません……」

 アリス=アンジェラに声を掛けてきたハンサムな半龍半人ハーフ・ダ・ドラゴンの青年は、アリス=アンジェラに苦笑しながら、そう告げる。そして、このダンスホールには昔はたくさんの来客が訪れ、各々方が楽しんでいったと、少し寂し気な表情でアリス=アンジェラにそう言うのであった。

 アリス=アンジェラはそんな憂い顔に変わりつつある青年に対して、にっこり微笑み

「ボクの名はアリス=アンジェラ。貴方のお名前をお聞かせください」

「おっと、これは失礼しました。淑女レディから先に名を名乗らせるのは紳士としてはあるまじき行為です。私の名はクォール=コンチェルト。この宮殿の管理をあるじから一任されています」

 クォール=コンチェルトと名乗った半龍半人ハーフ・ダ・ドラゴンの青年は、うやうやしくアリス=アンジェラに頭を下げる。アリス=アンジェラも戦乙女ヴァルキリー・天使装束のスカートの裾を両手で軽く持ち、淑女レディらしいお辞儀をする。

 クォール=コンチェルトはクスッと軽く笑った後、一曲どうですか? と右手をアリス=アンジェラに差し伸べる。アリス=アンジェラは左手を差し出し、クォール=コンチェルトの右手の上にその左手をそっと乗せる。するとだ、クォール=コンチェルトはアリス=アンジェラの左手をグイッと引っ張り、アリス=アンジェラの身体全体を自分の身体へと接近させたのである。

「最初はステップからいきましょうか」

「大丈夫デス。創造主:Y.O.N.N様からダンスの手ほどきを受けていマス」

 クォール=コンチェルトは相手にしているのがじゃじゃ馬であることをこの短い会話で察することになる。相手が気兼ねなくどうぞと言ってくれるのであれば、自分も遠慮することは無いだろうと思い、左手の指でパチンッ! と軽快に慣らし、このダンスホールに舞踊曲を流させる。

 クォール=コンチェルトはリード役となり、アリス=アンジェラを舞わせる。しかしながら、アリス=アンジェラはリードを任せっぱなしは癪だとばかりにクォール=コンチェルトを振り回そうとしてくる。互いが互いを小生意気だと思いながらも、小悪魔的な笑みを浮かべつつ、ダンスホールを独占するのであった。そして、曲が終わりを告げるや否や、誰もいないはずの観客たちに向かって、アリス=アンジェラは一礼をするのであった。

「なかなかやりますね。女性にリード役を奪われかけたのは初めてかもしれません」

「貴方もアリスを御しきるとは思わなかったのデス。アリスは創造主:Y.O.N.N様以外の方に縛られる気はないのデス」

 クォール=コンチェルトはもう1曲踊って、この生意気な小娘に実力の差を見せつけてやろうと思っていたが、それは叶わぬことになる。アリスと手を結んでいる右手から紫色の煙が立ち上り、肉が溶けだしてしまったのだ。

「申し訳ない。時間が差し迫ってきているようです。あるじあるじで無くなるように、私も私で居られる時間が無くなってきました」

「クォールさん……。アリスに出来ることはありますか?」

 アリス=アンジェラは一曲を共にしたクォール=コンチェルトの願いを聞こうとした。しかし、クォール=コンチェルトは骨が剥き出しになってしまった右手を額に当て、ギラギラとした眼つきへと変わっていく。

「貴方の乳首が引きちぎれるほどに吸ってやりた……、ええい! そうじゃないっ!」

 クォール=コンチェルトは自分の心臓を鷲掴みにしてくるドス黒い感情を振り払おうとする。しかしながら、骨が剥き出しの右手を当てている額にも紫色の煙が噴き出し、額の肉が溶けていく。それと共に清浄な思考も溶け落ちていく感覚を受け、代わりにドス黒い欲望が脳へと入り込んでくる。

 先ほどまで身体を密着させて踊っていた貧相な体つきのアリス=アンジェラをこのドス黒い感情と同じようにけがしてやりたい気持ちでいっぱいになってしまう。少なからず残された理性で、クォール=コンチェルトはアリス=アンジェラに頼み事をする。

「どうか、どうか。本当に私が私で居られなくなる前に、私を殺してください。私はクォール=コンチェルトとあると同時に、竜皇:バハムート様の良心そのものなのです」

 クォール=コンチェルトの顔の半分から肉が溶け落ちていた。剥き出しとなった頭蓋骨が恐怖心を誘うはずであったが、アリス=アンジェラはまるで聖女おとめのような穏やかな表情をその顔に讃えていた。

 そして、アリス=アンジェラはクォール=コンチェルトの頼みだとばかりに、戦乙女ヴァルキリー・天使装束の上着をずり降ろし、断崖絶壁の洗濯板を惜しみなくさらけ出すのであった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...