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第11章:竜皇の宮殿

第5話:竜族の問題

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「面白いことを言う半猫半人ハーフ・ダ・ニャンだ。その面白さに免じて、このクソ古龍の発言は聞き流しておいてやろう」

「あ、ありがとうございますニャン?」

 ミサ=ミケーンはコロコロと表情と雰囲気が変わる悪魔だと思わざるをえなかった。『怠惰』を司るベリアルの方がまだ真面目だと思ってしまうほどである。しかしながら、ミサ=ミケーンは不可思議に思っているが、アンドレイ=ラプソティと紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンにとっては、これが彼なりの自然体なのだと思ってしまうのであった。

「一見、情緒不安定に見えますけど、『傲慢』の権現様ですからね、サタン殿は。傲慢な態度に出る紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンをねじ伏せようと、さらに傲慢な態度に出ているだけなのです」

「あっ、なるほどですニャン。クソ生意気って言う強い言葉を使いまくるのは、そのためですニャンね……」

「カッカッカ! われより偉ぶる奴は、例え創造主:Y.O.N.Nとても、許しはしねえっ! よっく覚えておけよっ、そこの半猫半人ハーフ・ダ・ニャン! われの名はサタン! 近いうちに創造主:Y.O.N.Nの首級くびを取るものだっ!」

 悪魔皇;サタンは再び上機嫌になりながら、竜の住処ドラゴン・テリトリー内から立ち去ろうとする。しかしながら、その存在感を薄らいでいきながらも、パチンッ! と力強く左手の親指と人差し指で音を奏でるのであった。ミサ=ミケーンんは思わず、両手で猫耳を抑えてしまう。

「片腕が塩化じゃ、バランスが取れんだろう。左腕も相応しい形にしておいてやったぜ」

 悪魔皇はそう言った後、完全に『竜の住処ドラゴン・テリトリー』内部から存在感を消してしまう。ミサ=ミケーンは彼が残した言葉の意味を知るためにも、紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンの方を見る。ミサ=ミケーンは眼を丸くするだけ、丸くしてしまい、さらには口を金魚ゴールデン・フィッシュのようにパクパクとさせてしまう。

「グヌゥ……。あの者と対話を試みること自体に対価を払うことになる……のか?」

「ご愁傷様としか言いようがありません。でも、捻じられ折り畳まれただけなら、すぐ再生できるでしょう」

「むむ!? 塩化された右腕はすぐには再生できぬのか!?」

「創造主:Y.O.N.N様が許しを与えてくれるかどうかってところでしょう。魂の形を変えてしまっているので、いくら古龍と言えども、右腕の再生は遅れると思います」

 紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンはゾゾゾ……と背中に怖気を感じてしまう。今しがた、悪魔皇の気まぐれで左腕を肩口辺りまでねじ折られたのだが、そちらは本当に気まぐれなために、すぐにでも再生できるだろうと考えていた。しかし、アンドレイ=ラプソティの御業で塩とされてしまった右腕は再生出来るかどうか怪しいと言われてしまう。

 踏んだり蹴ったりとはまさにこのことであるが、そもそも、アンドレイ=ラプソティに喧嘩を売ったのは、紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンの方であった。自業自得だと言われれば、その通りであるが、何かが納得できない紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンであった。

 結局、天使も悪魔も信用できないという結論に至る紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンである。だが、天使からも悪魔からも重要な情報を仕入れることが出来た。この情報を元に、ドラゴン族の間に置いて、どう立ち振る舞うかが、紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンにとっての課題でもあった。

「そろそろ、『竜の住処ドラゴン・テリトリー』を解いてもらって良いでしょうか?」

 アンドレイ=ラプソティは思案に暮れる紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンにそう問いかける。だが、紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンは渋い表情になり、このまま、ここに居た方が、その半猫半人ハーフ・ダ・ニャンにとっても良いことだと言い始める。

「なんでですか? ミサ殿の身の安全から言えば、このまま、ここに匿ってもらうのも悪くないのかもしれませんが」

「天界や魔界が、この度の竜皇様の状態に関わっていないのなら、これはドラゴン族の間での問題となる。そして、われがこの騒動に決着をつけることこそが肝要なはずだ。客人は客人らしく、生き証人になってくれねばな」

「はぁ……。ドラゴン族の問題なので、私がどうこう言う筋合いはありませんけど……。問題はアリス殿が竜皇様に接触したのではなかろうかという危惧がありましてですね……」

 アンドレイ=ラプソティは何となくではあるが、紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンの目論見を察していた。竜皇が竜皇で無くなろうとしているこの間際に立ち会っていること自体が、創造主:Y.O.N.N様の手のひらの上で踊っていることになりかねないのだが、それは紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンには告げずじまいであった。紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンは両腕が無い状態だと言うのに、アンドレイ=ラプソティとミサ=ミケーンの2人を残し、『竜の住処ドラゴン・テリトリー』の外へと出ていく。

「ミサ殿はどう思います?」

「う~~~ん。アリスちゃんはぶっとんでいますから、もしかすると、紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンがどうにかする前に、決着をつけちゃうんじゃないですニャン?」

「そう……ですよね。竜皇亡き後を引き継ごうという意思を彼から感じましたけど、ちゃぶ台返しで定評のあるアリス殿ですから。さらに間の悪いことに七大悪魔のベリアルも向こう側です」

「あちきのことは構わずに、アンドレイ様はアリスちゃんのところに向かったほうが良いと思いますニャン」

 逡巡するアンドレイ=ラプソティの背中を押すために、ミサ=ミケーンがそう言うが、それはアンドレイ=ラプソティにとっては逆効果であった。度重なる心労と身体へのダメージでまともに動けなくなってしまっているミサ=ミケーンである。そんな彼女をひとり残していくほど、アンドレイ=ラプソティは紳士の道から外れていない。

「アリス殿とベリアルは心配ですが、そこはコッシロー殿がついています。コッシロー殿頼みになりますが、なんとかしてくれるでしょう」

「アンドレイ様……。そんなこと言ったら、たくさん甘えたくなっちゃうのですニャン」

「ミサ殿の治療がまだ終えてませんしね。だけど、エッチなことは厳禁です。大人しく、横になっていてください」

「チッ。さすがは紳士のアンドレイ様ですニャン。そこは弱った女の子でも襲っちゃうだぞっ! って言ってほしいところですニャン!」

 アンドレイ=ラプソティはミサ=ミケーンのこの一言を受けて、苦笑せざるをえなかった。そんな彼女の身体を抱き起し、少しでも自分の身体から熱を分け与えようとするアンドレイ=ラプソティであった。
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