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第10章:アルピオーネ山脈
第9話:紅い三日月
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アンドレイ=ラプソティはイク寸前の間際に、横穴の奥からベリアルたちの驚く声が届いたと同時に、正気に帰ることになる。それによって、固さを急速に失ってしまったおちんこさんをさももったいなさそうに見つめるミサ=ミケーンであった。
「アンドレイ様ぁ。ことの最中に他のことに注意を持っていかれるのは、アンドレイ様の悪癖ですニャン」
「そんなことを言っている場合では無いでしょう!? ミサ殿の耳にもはっきりと聞こえたはずです。ベリアルはともかくとして、アリス殿たちを助けに行かないとっ!」
アンドレイ=ラプソティは敷布団代わりにしていた寝袋から立ち上がり、パンツとズボンを元の位置へとずり上げる。そして、ミサ=ミケーンの機嫌が悪いのも承知の上で、あの娘たちを助けてほしいと願い出る。
「しょうがないですニャン。では、後程、改めて3倍返しをお願いするニャン」
「それはホワイトデーに限った話ではありませんか!?」
「ホワイトデーには白いモノを30倍出してもらいますニャン。そんなことより、アリスちゃんたちがピンチで危険ですニャン!」
ミサ=ミケーンは着崩した忍者服をさっと着直し、アンドレイ=ラプソティよりも先に横穴の奥へと向かっていく。しかしながら、アンドレイ=ラプソティはイク寸前だったため、足取りがおぼつかなく、ミサ=ミケーンに待ってください……と情けないことを言いつつ、彼女の後を必死に追いかける。
しかしながら、そのミサ=ミケーンは横穴を突っ切ったは良いが、この横穴の奥に広がっているヒカリゴケが夜空に瞬く星々のように輝いている洞窟へと足を踏み入れそうになったところで、足を止めてしまう。彼女に遅れること十数秒後、アンドレイ=ラプソティがこの場にやってくる。アンドレイ=ラプソティは苦い表情になり、キョロキョロと辺りを見回す。
「これはベリアルが残した呪力の残滓ですね。これを辿れば、アリス殿の下へと行けそうです!」
「よく、こんな薄暗い中で見分けることが出来ますニャン! さすがは6枚羽を持つ熾天使様ですニャン!」
「褒めるのは後です。結構、洞窟の深いところまで続いているようですね……。ミサ殿。周囲の警戒は任せましたっ!」
先ほどまでミサ=ミケーンが先頭をスタスタと小走りに進んでいたのだが、広大な洞窟に辿りつくや否や、アンドレイ=ラプソティが先頭を進むことになる。コケ類で覆われた地面を注意深く歩きながら、アンドレイ=ラプソティはベリアルが残した呪力の残滓を辿っていく。アンドレイ=ラプソティの後ろをついてくるミサ=ミケーンの猫耳は前後左右にクルクルと回ることになる。
そして、アンドレイ=ラプソティがさらに洞窟の奥へと進もうとした時、彼の服を引っ張って止めたのがミサ=ミケーンであった。アンドレイ=ラプソティがどうしたのです? とミサ=ミケーンに言うが、彼女は口をパクパクと金魚のようにパクつかせ、薄暗い洞窟のある一点に右手の人差し指を突き出すのであった。
ミサ=ミケーンが指し示す先には、不気味な紅い三日月がふたつあった。しかし、その紅い三日月の少し下からは真っ白な冷気がフゴーフゴーと不気味な音を奏でながら、噴き出していたのである。
「こんなところに紅玉眼の蒼き竜がいるなんて、私は聞いていませんよ!?」
「これはヤバイですニャン! この洞窟は彼らの巣だったのですニャン!!」
ミサ=ミケーンの言う通り、彼女らが一晩寝泊まりしていた横穴は、竜の巣に直結していたのである。多分であるが、この竜の巣に設けられた空気穴のひとつであろうという結論を抱くアンドレイ=ラプソティであった。ミサ=ミケーンが感じ取った感覚では、この広大な洞窟には大小10を数えるほどの竜が存在しているかのように思えた。
そして、今、アンドレイ=ラプソティたちをじっくりねっとりと品定めでもしているかのように視線を送ってくる紅玉眼の蒼き竜はこの地上界に存在する竜の中でも『古龍』に含まれる。
古龍たちは天魔大戦において、欠かせない存在であった。彼らの竜力は並の竜の1万倍以上であり、神と等しき竜力を持っているとも言われている。その古龍の中でも、有名どころの紅玉眼の蒼き竜にじっとりねっとりと見られことは、とんでもない負荷を精神に負わされるのと同義であった。
アンドレイ=ラプソティは半猫半人のミサ=ミケーンが精神崩壊してしまわないように、彼女のための盾となる。ミサ=ミケーンの前に立ち、紅玉眼の蒼き竜からの目力を和らげる。ミサ=ミケーンは自分に降り注がれる眼に見えぬ竜力というプレッシャーが和らいだことに、胸を撫でおろすことになる。
「紅玉眼の蒼き竜様は、あちきたちに何の用なのですニャン??」
「わかりません。でも、何かを推し量っている感覚を受けますね。敵対しようか、それとも見逃そうか。もしくは友好的に接しようか。しかしながら、あちらの気分次第なのは変わらないでしょう」
洞窟の宙に浮かぶふたつの紅い三日月は細くなったり太くなったりしていた。その動きから、アンドレイ=ラプソティたちに興味はあるが、そうだからといって、今すぐ、どうにかしようという動きを見せてはいなかった。紅玉眼の蒼き竜側もまた、戸惑っている。そんな雰囲気をアンドレイ=ラプソティは感じ取ったのだ。
そんな膠着状態に等しい状況を打破するかのように、洞窟の奥底からもう1度、ベリアルたちの叫び声が聞こえてくることになる。アンドレイ=ラプソティたちがベリアルたちの叫び声が聞こえた方へと顔を向けることになる。それと同時に洞窟の宙に浮いている紅い三日月もそちらに向きを変えるのであった。
アンドレイ=ラプソティは紅玉眼の蒼き竜の気が逸れたと同時に、ミサ=ミケーンの右手を自分の左手で掴む。そして、彼女を引っ張り、その場から走り出す。しかしだ。不意を突かれたと思った紅い三日月はアンドレイ=ラプソティの方へと向き直し、自分の前から逃げていこうとする生物に向かって、口から冷気を噴き出すのであった。
その冷気を振り払うためにも、アンドレイ=ラプソティはミサ=ミケーンと繋がっていた左手を離す。そして、両手を構え、真っ赤に燃える槍を神力によって、現出させるのであった。アンドレイ=ラプソティが今、両手で持っているのは、救世主との戦いの時に用いた紅き竜の槍であった。それを用いねばならぬほどの冷気がアンドレイ=ラプソティたちに向かって、降り注がれたのである……。
「アンドレイ様ぁ。ことの最中に他のことに注意を持っていかれるのは、アンドレイ様の悪癖ですニャン」
「そんなことを言っている場合では無いでしょう!? ミサ殿の耳にもはっきりと聞こえたはずです。ベリアルはともかくとして、アリス殿たちを助けに行かないとっ!」
アンドレイ=ラプソティは敷布団代わりにしていた寝袋から立ち上がり、パンツとズボンを元の位置へとずり上げる。そして、ミサ=ミケーンの機嫌が悪いのも承知の上で、あの娘たちを助けてほしいと願い出る。
「しょうがないですニャン。では、後程、改めて3倍返しをお願いするニャン」
「それはホワイトデーに限った話ではありませんか!?」
「ホワイトデーには白いモノを30倍出してもらいますニャン。そんなことより、アリスちゃんたちがピンチで危険ですニャン!」
ミサ=ミケーンは着崩した忍者服をさっと着直し、アンドレイ=ラプソティよりも先に横穴の奥へと向かっていく。しかしながら、アンドレイ=ラプソティはイク寸前だったため、足取りがおぼつかなく、ミサ=ミケーンに待ってください……と情けないことを言いつつ、彼女の後を必死に追いかける。
しかしながら、そのミサ=ミケーンは横穴を突っ切ったは良いが、この横穴の奥に広がっているヒカリゴケが夜空に瞬く星々のように輝いている洞窟へと足を踏み入れそうになったところで、足を止めてしまう。彼女に遅れること十数秒後、アンドレイ=ラプソティがこの場にやってくる。アンドレイ=ラプソティは苦い表情になり、キョロキョロと辺りを見回す。
「これはベリアルが残した呪力の残滓ですね。これを辿れば、アリス殿の下へと行けそうです!」
「よく、こんな薄暗い中で見分けることが出来ますニャン! さすがは6枚羽を持つ熾天使様ですニャン!」
「褒めるのは後です。結構、洞窟の深いところまで続いているようですね……。ミサ殿。周囲の警戒は任せましたっ!」
先ほどまでミサ=ミケーンが先頭をスタスタと小走りに進んでいたのだが、広大な洞窟に辿りつくや否や、アンドレイ=ラプソティが先頭を進むことになる。コケ類で覆われた地面を注意深く歩きながら、アンドレイ=ラプソティはベリアルが残した呪力の残滓を辿っていく。アンドレイ=ラプソティの後ろをついてくるミサ=ミケーンの猫耳は前後左右にクルクルと回ることになる。
そして、アンドレイ=ラプソティがさらに洞窟の奥へと進もうとした時、彼の服を引っ張って止めたのがミサ=ミケーンであった。アンドレイ=ラプソティがどうしたのです? とミサ=ミケーンに言うが、彼女は口をパクパクと金魚のようにパクつかせ、薄暗い洞窟のある一点に右手の人差し指を突き出すのであった。
ミサ=ミケーンが指し示す先には、不気味な紅い三日月がふたつあった。しかし、その紅い三日月の少し下からは真っ白な冷気がフゴーフゴーと不気味な音を奏でながら、噴き出していたのである。
「こんなところに紅玉眼の蒼き竜がいるなんて、私は聞いていませんよ!?」
「これはヤバイですニャン! この洞窟は彼らの巣だったのですニャン!!」
ミサ=ミケーンの言う通り、彼女らが一晩寝泊まりしていた横穴は、竜の巣に直結していたのである。多分であるが、この竜の巣に設けられた空気穴のひとつであろうという結論を抱くアンドレイ=ラプソティであった。ミサ=ミケーンが感じ取った感覚では、この広大な洞窟には大小10を数えるほどの竜が存在しているかのように思えた。
そして、今、アンドレイ=ラプソティたちをじっくりねっとりと品定めでもしているかのように視線を送ってくる紅玉眼の蒼き竜はこの地上界に存在する竜の中でも『古龍』に含まれる。
古龍たちは天魔大戦において、欠かせない存在であった。彼らの竜力は並の竜の1万倍以上であり、神と等しき竜力を持っているとも言われている。その古龍の中でも、有名どころの紅玉眼の蒼き竜にじっとりねっとりと見られことは、とんでもない負荷を精神に負わされるのと同義であった。
アンドレイ=ラプソティは半猫半人のミサ=ミケーンが精神崩壊してしまわないように、彼女のための盾となる。ミサ=ミケーンの前に立ち、紅玉眼の蒼き竜からの目力を和らげる。ミサ=ミケーンは自分に降り注がれる眼に見えぬ竜力というプレッシャーが和らいだことに、胸を撫でおろすことになる。
「紅玉眼の蒼き竜様は、あちきたちに何の用なのですニャン??」
「わかりません。でも、何かを推し量っている感覚を受けますね。敵対しようか、それとも見逃そうか。もしくは友好的に接しようか。しかしながら、あちらの気分次第なのは変わらないでしょう」
洞窟の宙に浮かぶふたつの紅い三日月は細くなったり太くなったりしていた。その動きから、アンドレイ=ラプソティたちに興味はあるが、そうだからといって、今すぐ、どうにかしようという動きを見せてはいなかった。紅玉眼の蒼き竜側もまた、戸惑っている。そんな雰囲気をアンドレイ=ラプソティは感じ取ったのだ。
そんな膠着状態に等しい状況を打破するかのように、洞窟の奥底からもう1度、ベリアルたちの叫び声が聞こえてくることになる。アンドレイ=ラプソティたちがベリアルたちの叫び声が聞こえた方へと顔を向けることになる。それと同時に洞窟の宙に浮いている紅い三日月もそちらに向きを変えるのであった。
アンドレイ=ラプソティは紅玉眼の蒼き竜の気が逸れたと同時に、ミサ=ミケーンの右手を自分の左手で掴む。そして、彼女を引っ張り、その場から走り出す。しかしだ。不意を突かれたと思った紅い三日月はアンドレイ=ラプソティの方へと向き直し、自分の前から逃げていこうとする生物に向かって、口から冷気を噴き出すのであった。
その冷気を振り払うためにも、アンドレイ=ラプソティはミサ=ミケーンと繋がっていた左手を離す。そして、両手を構え、真っ赤に燃える槍を神力によって、現出させるのであった。アンドレイ=ラプソティが今、両手で持っているのは、救世主との戦いの時に用いた紅き竜の槍であった。それを用いねばならぬほどの冷気がアンドレイ=ラプソティたちに向かって、降り注がれたのである……。
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