【R18】聖女の思春期奇行列伝 ~創造主は痛みを快楽に変える変態を創り出す~

ももちく

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第8章:トルメキア王国

第6話:食べ盛りの娘

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「どこか身体に異変でもあるのデス? アンドレイ様、しっかり食べておいたほうが良いデスヨ?」

「いえいえ。貴女がたの食べっぷりを見ていたら、こちらはお腹だけでなく、心も満腹になってしまって……」

「そう……なんデスカ?」

 アリス=アンジェラの表情は先ほどとは違い、影が落ちていた。ここまでの道中、アリス=アンジェラは食に困ったことなど、ほとんど無かった。それも、アンドレイ様が自分の分もどうぞとばかりに、食い足りないアリス=アンジェラにご飯をおすそ分けしてくれたからである。しかしながら、今考え直すと、そもそもアンドレイ様の食がかなり細く感じてしまっている。

 だからこそ、アリス=アンジェラは動いた。服のポケットからガマ口財布を取り出し、その中にある金貨を1枚取り出し、屋台の店主である半狼半人ハーフ・ダ・ウルフに手渡す。

「ちょっと、お嬢ちゃん、こんな大金もらっても、お渡しするだけの商品がございませんぜっ!」

 それもそうだろう。銅貨1000枚で銀貨1枚。銀貨1000枚で金貨1枚の価値なのだ。この屋台に並んでいる商品1つは1番高い物でも、銀貨1枚枚もしないくらいである。そこに金貨1枚を渡されたら、どうお返ししようか、店主が悩んでしまうのは当然でもあった。

 アリス=アンジェラは1週間前の出来事でも、同じことをしている。それゆえに自分がとんでもない間違いを犯しているのもわかっている。だが、どうにかして、アンドレイ様にお腹いっぱいご飯を食べてもらいたい気持ちであった。

「店主さんがお返し出来ない分は、店主さんの息子さんや娘さんにお返ししてもらいマス!」

「いや……。そりゃいったい……。まあ、何が言いたいのかはわからないが、貸し出しはしても人身売買までする気はないぞ? うちの息子はどこに出しても恥ずかしくないくらいだからな?」

 屋台の店主には可愛い盛りの男の子がいる。今年で12歳となるが、時々、自分ですら実は女の子だった……か? と思い悩んでしまうほどの息子だ。しかしながら、手渡された金貨をそのまま突っ返すのも惜しいと思ってしまうのが、ニンゲンの悲しいさがである。

「じゃあ、こうしよう。一晩だけ、うちの息子を好きにしてくれ。あと、あんたらが泊まっている宿屋に後で豪勢な食事を届けることも約束しよう」

「ありがとうございマス! ボクたちが泊まっている宿屋はここから……」

 アリス=アンジェラはここまで来た道順を店主に告げる。店主は、ああ、あの宿屋なら、ちょうどうちが肉を卸している食堂の近くだな……と、アリス=アンジェラの拙い説明でも理解してくれるのであった。

「アリス殿。私は大丈夫ですから……」

「いえ、ダメデス! アンドレイ様はこの地上界で為すべきことがあるんですヨネ!? それを為す前に倒れられたら、こっちも困るんデス!」

「アンドレイ様、アリスちゃんだけでなく、我輩もここまでアンドレイ様と旅をしてきたのでッチュウ。道半ばで倒れられたら、我輩たちは今まで何をしてきたのか、わからなくなってしまうのでッチュウ」

 アンドレイ=ラプソティはムムム……と唸るが、しばらくして観念したのか、ハァァァ……と息を吐き、アリス=アンジェラの提案を飲むことにする。アンドレイ=ラプソティはアリス=アンジェラの可愛らしさで、気持ちもお腹もいっぱいになっていたのは、決して嘘では無かった。だからこそ、宿屋に戻った後、ベリアルでも誘って、その辺りの酒場で飲みにいけば良いと思っていたのである。

 その辺りをアリス=アンジェラたちに察してもらえなかったのは、アンドレイ=ラプソティの不手際でもある。今度からは気をつけようと思う他無かったアンドレイ=ラプソティであった。

 アリス=アンジェラたちは店主と契約を取り交わした後、少しだけ、この街を散策する。店主の半狼半人ハーフ・ダ・ウルフが言うには、2時間後くらいにアリス=アンジェラが泊まる宿屋に豪勢な肉料理を運ぶと言ってくれた。それゆえに、アンドレイ=ラプソティはそれらを肴にして飲むためにも、酒の類を求めたのである。

「ベリアルは辛口のお酒。私はどちらかと言えば、辛すぎずかといって甘すぎずですね。アリス殿も飲みます?」

「いえ。ボクはお酒を飲むとやらかす方なので、今日は遠慮しておきます」

「やらかす? まあ、よくはわかりませんけど、たしなむ程度なら大丈夫でしょう」

「いえ、本当に大丈夫ですカラ! って、キレイな瓶なのデスゥゥゥ」

 アンドレイ=ラプソティたちは今、酒屋に足を運んでいた。そこの棚に並んでいる酒瓶を眺めながら、どのお酒を買おうか悩んでいる最中であった。アリス=アンジェラは1週間前ほど前の聖地:エルハザムで晒した失態を思い出し、遠慮がちであった。だが、星々が夜空に煌めいてるような装飾が為された小瓶が眼に映る。アリス=アンジェラはそれを手に取り、うっとりとした表情で眺めてしまう。

「アリス殿はそれで良いんですね?」

「うぅ……。お願いしマス」

 アリス=アンジェラは手に取っていたキレイな装飾が為された小瓶をアンドレイ=ラプソティに手渡す。アンドレイ=ラプソティは一升瓶を3つとその小瓶を持って、酒屋のレジに行き、会計を済ますのであった。その後、宿屋に向かい、そこでベリアルと合流するのであった。

「おう、遅かったじゃねえか。これからどっか飲みに行くか?」

「いえ、そこはご心配なく。アリス殿が食品販売地区で、色々と手配してくれたので」

 アンドレイ=ラプソティは昼寝から起きたベリアルに、食品販売地区で起きた出来事を話す。怠惰の権現様であるベリアルとしては珍しく、真摯な態度でアンドレイ=ラプソティの話に聞き入るのであった。

「なるほどな。そりゃ、アンドレイが悪い。アリス嬢ちゃんに要らぬ気を使わせたんだからな」

「そこは猛省すべきところですね。ただ、アリス殿が美味しそうに食べていたら、自分の分もおすそ分けしたくなるんですよ」

「その気持ちは痛いほどわかるっ。アリス嬢ちゃんの喰いっぷりはこっちも見てるだけで嬉しくなっちまうもんなぁ」

 食の細いヒトほど、気持ち良く食べる人物が隣で食事をしていると、自分の気持ちも満たされるといった経験をお持ちのはずである。アンドレイ=ラプソティやベリアルにとっては、アリス=アンジェラは可愛い自分の娘のように映るのだ。そんな可愛い盛りの娘が元気はつらつでご飯を食べている姿はなんとも微笑ましい。

 そんな話で盛り上がっていたところに、くだん半狼半人ハーフ・ダ・ウルフとその息子が豪勢な肉料理を宿屋のリビングに運び入れてくれたのであった。

「時間の許す限り、なんとか手が込んだ料理を準備させてもらいましたぜ。後、うちの息子を置いていきますので、給仕係でも何でも申しつけくださせえ」

「え? 息子?」

「言った通り、女の子と見間違えるくらいに可愛い息子でしょ? ほら、自己紹介しろっての。大口のお客様だぞっ!」

「は、はいですぅ。僕はニコルですぅ……。パパからしっかりお役目を果たせと言われているんですぅ。今日はよろしくおねがしますぅ……」
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