【R18】聖女の思春期奇行列伝 ~創造主は痛みを快楽に変える変態を創り出す~

ももちく

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第4章:酒と天使

第4話:アンドレイの毒

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 アンドレイ=ラプソティはアリス=アンジェラとのやり取りで、創造主:Y.O.N.N様は自分が堕天する可能性を持っていると知りつつも、アリス=アンジェラの手で愛しのレオン=アレクサンダーから天命を回収させたことを察することになる。

(さすがはこの世の全てを創った御方なだけはあります。私の予感はほぼほぼ当たっていると思っておいて良いのでしょうね……)

 アンドレイ=ラプソティがレオン=アレクサンダーのことをアリス=アンジェラに語ったのは、少しでもアリス=アンジェラがレオン=アレクサンダーを殺めたことに関して、心に責を感じてほしいと思ったことが半分。もう半分はその手にかけた相手が一体、どういった人物であったと知っておいてほしいという願望であった。

 アリス=アンジェラにとって、創造主:Y.O.N.N様の御言葉が全てであり、その他に関しては、何の価値も感じていないように思えたのだ。それゆえに、彼女にはもっと世の中を知ってほしいと思うのである、アンドレイ=ラプソティは。創造主:Y.O.N.N様は確かに全てにおいて、最優先に考えなければならない御方ではある。しかし、世の中はそうでは無い。創造主:Y.O.N.N様に異を唱えねばならない時もあるのだ。そのために天使には『自由意志』を創造主:Y.O.N.N様から与えられているのである。

 しかし、それをどう言えば、アリス=アンジェラが理解してくれるのかがわからないアンドレイ=ラプソティである。アリス=アンジェラはカエルの面に小便と表現しても間違いでないくらいに平然な顔でアンドレイ=ラプソティに向かって、スープのおかわりを要求してくる。少しは躊躇してくれれば、ありがたいと思ってしまうが、期待するだけ無駄なようにも感じてしまうアンドレイ=ラプソティであった。

 都合、5杯目のおかわりをたいらげたアリス=アンジェラは、口に右手を当てつつ、ふあああと可愛らしいあくびをし始める。食欲が満たされたのならば、次に訪れるのは性欲か睡眠欲である。そして、アリス=アンジェラは女性であるがゆえに睡眠欲のほうがよっぽど大きいのか、こっくりこっくりと舟を漕ぎ始めるのであった。しかし、彼女が自分からおやすみなさいと言わないのは、アンドレイ=ラプソティがまだ何かを自分に語り掛けてきそうな雰囲気を察したからでもあった。

「アンドレイ様。アリスが出来ることがあれば、何でも言ってくだサイ。話相手が欲しいと言われれば、アリスは眠いのを我慢して、アンドレイ様のお話を聞かせてもらいマス」

「では、愛しきレオンを失って、寂しいと言ったら、アリス殿は私を慰めてくれるのですか?」

「膝枕をしてさしあげマス。そして、子守歌を歌ってみせまショウ」

「それは悪い提案ではありませんね。では、さっそく頼みましょうか」

 アンドレイ=ラプソティは毒を吐いて見せたが、アリス=アンジェラはまるで聖母のように接してくれると言ってくる。彼女を困らせるつもりで吐いた毒であったが、彼女はその毒気に気づきもしなかった。アンドレイ=ラプソティは機会を見つけて、男がそう言ったら、はねのけろと忠言しておこうと思うのであった。普通の男なら、女性に責任を押し付け、さらには裸にひん剥いて、秘部の奥底におちんこさんをねじ込ませろという発言なのである。

 しかし、アリス=アンジェラはそうとは全く気付いていない。アンドレイ=ラプソティはアリス=アンジェラがとんでもなく危うい存在だと思いながら、彼女が正座しているところへ恐る恐る自分の後頭部を彼女の太ももの上に乗せる。アリス=アンジェラはニッコリとアンドレイ=ラプソティに微笑みかけるが、アンドレイ=ラプソティとしては心をかき乱されてしょうがない。

 しかし、そんなささくれ気味のアンドレイ=ラプソティであったとしても、アリス=アンジェラの優しい子守歌を聞いているうちに、段々と深い眠りへと誘われる。自分がアリス=アンジェラに手玉に取られていると思いながらも、彼女の歌声が脳みそを溶かしていき、ついにはアンドレイ=ラプソティは一切の抗いを見せることなく、グーグーと寝息を立てて眠ってしまうのであった。

 アリス=アンジェラはアンドレイ=ラプソティの顔と身体全体から緊張が解けていくのを感じつつも、子守歌を歌い続けた。そして、完全に緊張の糸がほぐれ、さらには寝息を立てるアンドレイ=ラプソティを視認した後、彼の額におやすみなさいの接吻せっぷんをする。その後、アリス=アンジェラは自分の太ももの代わりにと、アンドレイ=ラプソティの頭の下に布を丸めただけの枕を置く。

 自由の身となったアリス=アンジェラはアンドレイ=ラプソティの身体に厚手の毛布を被せる。その後、コッシロー=ネヅの方をちらりと見て、次にベリアルの方を見て、はあああと軽くため息をつく。コッシロー=ネヅは寒いのか、頭まで被った毛布をさらに身体に巻き付かせるようにグルグル巻きのクロワッサンのようになっている。そして、ベリアルはそんなクロワッサン状態のコッシロー=ネヅの上に放り出した右足を乗せている状態となっていた。

 アリス=アンジェラはまず、ベリアルの右足をコッシロー=ネヅの上からどかし、蹴っ飛ばしている毛布をベリアルの身体に掛ける。そして、キョロキョロと周囲を見渡し、自分の寝床をどこにすべきかとようやく考え始める。

(コッシローさんを抱き枕にしたいのですが、あの状態のコッシローさんから毛布を剥ぎ取るのは面倒デス。何か良い具合の抱き枕があると助かるのデスガ……)

 アリス=アンジェラが快眠するために必須なアイテムがある。それが『抱き枕』であった。どうにもギュッと何かを抱きしめていないと、ぐっすり寝たという快感を得られないアリス=アンジェラである。キョロキョロと辺りを見回してみるが、ちょうど良さそうな物が見当たらない。

 天界に住んでいた時はそれこそ抱き枕に困ったことは無い。コッシロー=ネヅに始まり、天界にやってきたワン・シャンたちで溢れかえっているからだ。そんな小動物のもふもふを味わいながら寝るのが日常であったアリス=アンジェラにとって、この破壊しつくされた村では、アリス=アンジェラの抱き枕になりそうな物はすぐには見つかりそうもなかったのである。

(仕方無いのデス。寝足りなかった分は明日、コッシローさんの背中で存分に味わうのデス)

 アリス=アンジェラは瓦礫の上に厚手の毛布を敷き、そこに肉付きの良くない尻を乗せる。そして、足を崩しつつ木材の上に座った状態でようやく眠りへと入っていく。薄っすらと閉じたまぶたの隙間からチラチラと揺れ動く焚火の炎の光が入ってくる。アリス=アンジェラはその柔らかな緋色と熱を感じつつ、意識を黒くて冷たい沼の中へと沈めていく……。
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