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第1章:堕天
第2話:仇
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レオン=アレクサンダーの生死確認を行うために神聖マケドナルド帝国軍の本陣まで詰め寄せたインディーズ帝国軍は一目散にその場から逃げ出すことになる。だが、彼らの足には大量の蝗が絡みつく。
白い塩に覆われた大地であったが、今度は真っ白な布に墨汁をポタポタと垂らし続けているかのように黒が白を席巻していく。アンドレイ=ラプソティの背中に生える6枚羽から放射された銀色の鱗粉は地面に付着するや否や、真っ黒な蝗と化す。
その蝗は真っ白な地面を這いまわり、本陣へと殺到していたインディーズ帝国軍の兵士たちを襲い始める。蝗に身体を喰われた兵士たちは紅い血を白と黒が混ざる大地へと噴射し、のちに絶命する。
インディーズ帝国軍の兵士たちはまさに蜘蛛の子を散らすかのように逃げ惑うことになるが、一兵たりとも逃さぬとばかりに大量の蝗が30万のへ兵士たちを襲い続けることになる。
「さすがは『天界の十三司徒』のひとりデス。塩の大地に変えたかと思った次の瞬間には蝗の群れを飛ばし、大地を白と黒、そして紅に染め上げているのデス」
アンドレイ=ラプソティの前方5ミャートルの地点で立っているアリス=アンジェラはうっとりとした表情でアンドレイ=ラプソティの行う蛮行を眺め続けた。彼女はアンドレイ=ラプソティが無辜の兵士たちを殺戮しているというのに、彼の行為を一切止めようとはしなかった。
それもそうだろう。アリス=アンジェラが創造主:Y.O.N.Nから与えられた指令の中に、神聖マケドナルド帝国軍とインディーズ王国軍の兵士たちを護れという類のモノは一切なかったからだ。それゆえにアンドレイ=ラプソティが起こす奇跡の数々をただただ感嘆しながらその様子を見守るだけであった。
アンドレイ=ラプソティは背中に生える6枚羽から銀色の鱗粉をまき散らしながらも、一歩、また一歩、アリス=アンジェラに近づいていく。レオン=アレクサンダーの仇を討つべく、真に倒さなければならぬ存在を身体だけでなく、心も蹂躙してやろうと思ったのだ。
そんなアンドレイ=ラプソティに対し、アリス=アンジェラは身構えることすらもしない。憎しみの光を宿すアンドレイ=ラプソティの両目で睨みつけられながらも、アリス=アンジェラは動じる様子を一切見せない。その傲慢不遜な態度がアンドレイ=ラプソティの心をおおいにかき乱す。それゆえにアンドレイ=ラプソティは背中の6枚羽を大きく広げ、高圧的な態度で彼女に接することになる。
「レオン=アレクサンダーは私にとって、全てといっても良い存在だ。それに手をかけておきながら、何故、貴女はそう平然としていられる?」
「簡単なことデス。アンドレイ=ラプソティ様にこう言ってはなんですが、貴方ではボクに傷ひとつつけられないからデス」
アリス=アンジェラの余裕しゃくしゃくな態度の一因がわかった気がしたアンドレイ=ラプソティであった。『天界の十三司徒』と称される自分をもってしても、創造主:Y.O.N.Nが遣わしたこの存在に傷ひとつつけられないゆえだと。しかし、アンドレイ=ラプソティはそんなはずがないと思えた。100万の兵士たちを塩の柱に変え、さらには30万の兵士を蝗の餌にした。そんな異常も異常たる神力を持つ自分が眼の前の仇に傷ひとつつけれないわけがないと思えた。
「試してみてはどうデスカ? そうすればアンドレイ=ラプソティ様も納得してもらえると思うのデス」
「ならば一切の手加減なぞ要らぬ。準備運動は終わった。そして、この地で気にする相手も居ない今、私は全力を出せるっ!」
アンドレイ=ラプソティは両腕でしっかりとレオン=アレクサンダーの首級を抱えこんだまま、背中を丸くさせていく。そして、ますます背中の6枚羽を大きく羽ばたかせ、大量の羽根を空中にまき散らす。その舞い上がった羽根の一枚一枚にアンドレイ=ラプソティの意志が宿っているかのようであった。白い羽根群は怒りの色となり、鋭い短剣と化す。
その鋭い短剣群が雨あられのようにアリス=アンジェラに向かって降り注ぐ。アリス=アンジェラの上空360度の方向から鋭い短剣と化した羽根が散々にアリス=アンジェラの身体へと吸い込まれていく。アンドレイ=ラプソティはククッ! と口の端を歪ませてしまう。所詮、口だけだったと思わざるをえなかったのだ。しかし、次の瞬間にはアンドレイ=ラプソティは驚愕の表情へと変わってしまう。
「変わり身の術デス。位相転換天使術を使わせてもらいまシタ。貴方が穿ったのはボクでは無く、レオン=アレクサンダーの死体デス」
「私を愚弄するかっ! 私の手でレオンを傷つけさせることが望みかっ!」
「いえ。ただ単に変わり身の術を発動させるための肉ある物質がそこに転がっていたレオン=アレクサンダーの死体だっただけデス。特に悪意はありまセン」
1000本を越える鋭い短剣の餌食になったのはアリス=アンジェラでは無く、自分の愛するレオン=アレクサンダーの亡骸であった。真っ赤な短剣はレオン=アレクサンダーの亡骸が身に着けている黄金色の全身鎧を散々に突き破り、その遺体の中に残されていた血が流れ出て、ますます短剣は紅く染まることになる。
アンドレイ=ラプソティはグッ! と唸りつつ、あとで丁重に亡骸の処置をさせてもらいますと心の中でレオン=アレクサンダーに詫びた後、そうなる原因を作ったアリス=アンジェラの声がする方向に身体を向ける。アリス=アンジェラはアンドレイ=ラプソティに向かってにっこりと微笑み、さも自分には攻撃が届かなったでしょ? と言いたげであった。
それがますますアンドレイ=ラプソティの心をかき乱すことになり、またもや位相転換天使術を使われる可能性があったにも関わらず、背中の6枚羽をおおいに羽ばたかせ、空中に赤色に変わりつつある羽根を散々にまき散らす。
アリス=アンジェラはアンドレイ=ラプソティの取った行動を見て、軽く嘆息する。そうした後、右手をアンドレイ=ラプソティのほうに突き出し、その右手の中指と親指を用いて、パチンッ! とひと際大きく音を鳴らしてみせる。アンドレイ=ラプソティは何故、アリス=アンジェラがそのような所作をしたのかがわからなかった。注意をその右手に集中させたいだけなのかと思ったアンドレイ=ラプソティであった。
「今のはアンドレイ=ラプソティ様が正気に戻ってほしいと思ったまでの所作デス」
「貴女は私を舐めているのか!?」
「いえ、舐めてはいまセン。でも、ボクたちが相争うことに意味など無いと理解してほしいだけなのデス。もう一度、指を鳴らしまショウカ?」
白い塩に覆われた大地であったが、今度は真っ白な布に墨汁をポタポタと垂らし続けているかのように黒が白を席巻していく。アンドレイ=ラプソティの背中に生える6枚羽から放射された銀色の鱗粉は地面に付着するや否や、真っ黒な蝗と化す。
その蝗は真っ白な地面を這いまわり、本陣へと殺到していたインディーズ帝国軍の兵士たちを襲い始める。蝗に身体を喰われた兵士たちは紅い血を白と黒が混ざる大地へと噴射し、のちに絶命する。
インディーズ帝国軍の兵士たちはまさに蜘蛛の子を散らすかのように逃げ惑うことになるが、一兵たりとも逃さぬとばかりに大量の蝗が30万のへ兵士たちを襲い続けることになる。
「さすがは『天界の十三司徒』のひとりデス。塩の大地に変えたかと思った次の瞬間には蝗の群れを飛ばし、大地を白と黒、そして紅に染め上げているのデス」
アンドレイ=ラプソティの前方5ミャートルの地点で立っているアリス=アンジェラはうっとりとした表情でアンドレイ=ラプソティの行う蛮行を眺め続けた。彼女はアンドレイ=ラプソティが無辜の兵士たちを殺戮しているというのに、彼の行為を一切止めようとはしなかった。
それもそうだろう。アリス=アンジェラが創造主:Y.O.N.Nから与えられた指令の中に、神聖マケドナルド帝国軍とインディーズ王国軍の兵士たちを護れという類のモノは一切なかったからだ。それゆえにアンドレイ=ラプソティが起こす奇跡の数々をただただ感嘆しながらその様子を見守るだけであった。
アンドレイ=ラプソティは背中に生える6枚羽から銀色の鱗粉をまき散らしながらも、一歩、また一歩、アリス=アンジェラに近づいていく。レオン=アレクサンダーの仇を討つべく、真に倒さなければならぬ存在を身体だけでなく、心も蹂躙してやろうと思ったのだ。
そんなアンドレイ=ラプソティに対し、アリス=アンジェラは身構えることすらもしない。憎しみの光を宿すアンドレイ=ラプソティの両目で睨みつけられながらも、アリス=アンジェラは動じる様子を一切見せない。その傲慢不遜な態度がアンドレイ=ラプソティの心をおおいにかき乱す。それゆえにアンドレイ=ラプソティは背中の6枚羽を大きく広げ、高圧的な態度で彼女に接することになる。
「レオン=アレクサンダーは私にとって、全てといっても良い存在だ。それに手をかけておきながら、何故、貴女はそう平然としていられる?」
「簡単なことデス。アンドレイ=ラプソティ様にこう言ってはなんですが、貴方ではボクに傷ひとつつけられないからデス」
アリス=アンジェラの余裕しゃくしゃくな態度の一因がわかった気がしたアンドレイ=ラプソティであった。『天界の十三司徒』と称される自分をもってしても、創造主:Y.O.N.Nが遣わしたこの存在に傷ひとつつけられないゆえだと。しかし、アンドレイ=ラプソティはそんなはずがないと思えた。100万の兵士たちを塩の柱に変え、さらには30万の兵士を蝗の餌にした。そんな異常も異常たる神力を持つ自分が眼の前の仇に傷ひとつつけれないわけがないと思えた。
「試してみてはどうデスカ? そうすればアンドレイ=ラプソティ様も納得してもらえると思うのデス」
「ならば一切の手加減なぞ要らぬ。準備運動は終わった。そして、この地で気にする相手も居ない今、私は全力を出せるっ!」
アンドレイ=ラプソティは両腕でしっかりとレオン=アレクサンダーの首級を抱えこんだまま、背中を丸くさせていく。そして、ますます背中の6枚羽を大きく羽ばたかせ、大量の羽根を空中にまき散らす。その舞い上がった羽根の一枚一枚にアンドレイ=ラプソティの意志が宿っているかのようであった。白い羽根群は怒りの色となり、鋭い短剣と化す。
その鋭い短剣群が雨あられのようにアリス=アンジェラに向かって降り注ぐ。アリス=アンジェラの上空360度の方向から鋭い短剣と化した羽根が散々にアリス=アンジェラの身体へと吸い込まれていく。アンドレイ=ラプソティはククッ! と口の端を歪ませてしまう。所詮、口だけだったと思わざるをえなかったのだ。しかし、次の瞬間にはアンドレイ=ラプソティは驚愕の表情へと変わってしまう。
「変わり身の術デス。位相転換天使術を使わせてもらいまシタ。貴方が穿ったのはボクでは無く、レオン=アレクサンダーの死体デス」
「私を愚弄するかっ! 私の手でレオンを傷つけさせることが望みかっ!」
「いえ。ただ単に変わり身の術を発動させるための肉ある物質がそこに転がっていたレオン=アレクサンダーの死体だっただけデス。特に悪意はありまセン」
1000本を越える鋭い短剣の餌食になったのはアリス=アンジェラでは無く、自分の愛するレオン=アレクサンダーの亡骸であった。真っ赤な短剣はレオン=アレクサンダーの亡骸が身に着けている黄金色の全身鎧を散々に突き破り、その遺体の中に残されていた血が流れ出て、ますます短剣は紅く染まることになる。
アンドレイ=ラプソティはグッ! と唸りつつ、あとで丁重に亡骸の処置をさせてもらいますと心の中でレオン=アレクサンダーに詫びた後、そうなる原因を作ったアリス=アンジェラの声がする方向に身体を向ける。アリス=アンジェラはアンドレイ=ラプソティに向かってにっこりと微笑み、さも自分には攻撃が届かなったでしょ? と言いたげであった。
それがますますアンドレイ=ラプソティの心をかき乱すことになり、またもや位相転換天使術を使われる可能性があったにも関わらず、背中の6枚羽をおおいに羽ばたかせ、空中に赤色に変わりつつある羽根を散々にまき散らす。
アリス=アンジェラはアンドレイ=ラプソティの取った行動を見て、軽く嘆息する。そうした後、右手をアンドレイ=ラプソティのほうに突き出し、その右手の中指と親指を用いて、パチンッ! とひと際大きく音を鳴らしてみせる。アンドレイ=ラプソティは何故、アリス=アンジェラがそのような所作をしたのかがわからなかった。注意をその右手に集中させたいだけなのかと思ったアンドレイ=ラプソティであった。
「今のはアンドレイ=ラプソティ様が正気に戻ってほしいと思ったまでの所作デス」
「貴女は私を舐めているのか!?」
「いえ、舐めてはいまセン。でも、ボクたちが相争うことに意味など無いと理解してほしいだけなのデス。もう一度、指を鳴らしまショウカ?」
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