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第7章:淫蕩の王

エピローグ:星皇出撃

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「地上界にて突如、現れた淫蕩の王が完全に沈黙しました。しかし、それと同時にアリス=ロンド様とベル=ラプソティ様の生命活動が危険域にまで到達しています! このままでは2人は命を落とすことになりますl」

 地上界をモニタリングしていた通信士のミシュランが慌てながら、星皇:アンタレス=アンジェロにそう告げる。星皇は鋭い視線で、自分の席にあるモニターを睨みつけている。しかし、次の瞬間にはそのモニター自体が爆発を起こし、破片が飛び散り、星皇の丹精な顔を刻みまくる。だが、星皇はそうなったというのに、内側から爆ぜたモニターに視線を送り続けた。

「天使軍団の旗艦である天鳥船あめのとりふねはハイヨル混沌軍団の猛攻で中破。そして、地上界ではベルとアリスが瀕死。この状況を挽回するためには、私自身が出撃する他ないようですね」

 星皇は背もたれ付きの席から立ち上がり、総員退艦せよと命じる。しかしながら、星皇の言葉をそのまま鵜呑みにする者はこのブリッジ内には居なかった。そして、そのクルーたちを代表するかのように星皇の隣に立っている赤髪オカッパの男の娘が発言をする。

「ハイヨル混沌軍団に背を向ける臆病者は誰ひとりとして、いまセン。皆、星皇様と創造主:Y.O.N.N様の勝利を信じていマス」

「ジャンヌ。しかしだ。私のわがままに付き合うことで、これ以上、誰も犠牲になってほしくないのだよ」

 星皇はそう言うがジャンヌ=ロンドは静かに首級くびを左右に振り、さらには星皇の両手を外側から包み込み、出来る限り、顔に微笑みを顔にたたえて、星皇と共に逝くことを許してほしいと願い出る。

「ワタシはアリスにとって、不出来な姉デス。しかし、アリスがこの世で一番に大切だと思っている方を放っておくことはできまセンノ。ワタクシをどうか連れていってくださいマシ」

 ジャンヌ=ロンドのその言葉を受け、数十秒ほど思案に暮れることになる星皇:アンタレス=アンジェロであった。そして、ついに懇願する表情をしたジャンヌ=ロンドに押され、星皇はジャンヌ=ロンドに地獄行きの片道切符を手渡すことになる。

 星皇に了承を得たジャンヌ=ロンドを見守っていたクルーたちは、急いで星皇とジャンヌ=ロンドの出撃準備へと入る。ブリッジに居るクルーたちは天鳥船あめのとりふねの出撃口にいる作業員たちに手早く指示を送る。

「なんだって!? 最後の最後まで星皇様とジャンヌちゃんの出撃を援護するだと!? おめえら、狂ってんなっ! よおしっ! 俺たちも付き合ってやるぜっ!」

 天鳥船あめのとりふねの出撃ハッチ近くに居る作業員たちは、これが今生の最後の仕事だと言い合い、激しい戦闘を終えて帰ってきた戦闘員たちによって塞がってしまっている出撃カタパルトを開けるための作業に入る。

 2人1組となり、出撃カタパルトの上でウウ……と唸り声をあげている戦闘員たちをどかしにどかし、2本の出撃カタパルトを使用可能とする。それを為したとほぼ同時に紅を基調とした超一級天使装束に身を包むジャンヌ=ロンドと、金色を基調とした神衣カムイに身を包んだ星皇:アンタレス=アンジェロが現れる。

「星皇様! ヘルメットを被ってくださいよぉ!」

 出撃ハッチに居る作業員たちの主任天使が星皇にそう言うが、星皇は左右に顔を降り、主任天使の助言を拒むことになる。

「最後の最後まで裸眼で、私が護ろうとし、ベルやアリスが護ろうとしたジ・アースをこの眼に焼き付けておきたいからね」

 主任天使は右手で自分の頭をボリボリと掻く他無かった。星皇がそう言い出したら、それ以上は何も言えなくなってしまう。誰しもが絶望するしかない戦況の中、それでもわがままを突き通させてほしいと言ってくる星皇だ。その星皇の意を汲み、出撃ハッチに居る作業員たちは星皇とジャンヌ=ロンドを地上界へと送り出す準備を急ぐ。

「さあ、共に逝きましょう、ジャンヌ。私たちがベルやアリスのところまで辿り着ける可能性は0.0000001%程度です」

「ならば、成功したも同然デスワ。ワタクシが星皇様の剣となり、盾となりますノデ」

「まったく……。私がキミを地上界に送り届けるつもりだと言うのに、キミは私を地上界に送ろうとしている……」

 星皇が発射台に足を乗せたまま、やれやれと身体の左右に両腕を広げてみせる。しかし、オープン型フルフェイス・ヘルメット越しにクスクスと笑ってみせるのがジャンヌ=ロンドであった。

「お二人ともが神力ちからを合わせてくだせいやっ! さあ、泣いても笑っても、これが今生の別れですぜっ! 必ず、地上界に居るベル様とアリス様のところまで辿りついてくだせえっ! 星皇:アンタレス=アンジェロ、並びにジャンヌ=ロンドの出撃だっっっ!!」
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