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第四章 百日限りの旦那様

33 愚かな夜【4】♥

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 貴明は自身のすべてを納めさせて一度腰を止めると、深く息を吐いてから自分の前髪をかき上げる。

「これで全部だ。満足かい」

「は、はひ……ひぅ……」

 返事をしなければいけない気はしたが、みゆきはそれどころではない。

(お腹の中、いっぱい……いっぱい、で、びりびりしてて、勝手に、ぎゅうっとする……)

 今までそんなところに何かが入るなどということは、半信半疑だった場所。
 そこを目一杯押し広げて、貴明自身が納まっている。

 みゆきの肉は、初めてだというのに、侵入してきたものが愛しくてたまらないようだった。
 放っておいても貴明自身を締め付けようとするし、締め付けるたびにみゆきにもじわじわした快感が返ってくる。
 貴明はみゆきを見下ろし、かすかに笑った。

「初めてなのだから、よくわからないだろうね。……ゆっくりしよう」

 いつもの穏やかな貴明の様子をいくらか取り戻し、彼は緩やかに腰を引く。

「あ、ひっ……!」

 ずるぅ、と彼自身が出て行くとき、かえって彼の形がよくわかった。
 出っ張った部分が、みゆきの敏感な内部を丁寧に擦りあげて出て行く。
 切なくなるくらいに抜き出してから、貴明はもう一度同じ速度で己自身をみゆきの中に押しこんだ。

「く……ぅぅ」

「わかる? あなたの中に、俺が入っている」

 ゆっくり、ゆっくりとした抽挿は、優しくはあるが、絶え間なく続く。

「わ、かり、ます……なか、全部、擦ってぇ……っ!」

 どうにか答えようとするものの、どうしても語彙は跳ねた。
 拓かれたばかりのその場所は、すぐに元の慣れた形に閉じようとする。
 貴明はそんな彼女を慈しみながら、さっき指で探り当てた場所を念入りに擦り上げた。

「みゆきが好きなのは、このあたり」

「んっ⁉ やぁ、そこ、おかしい……っ、――――ッ!」

 前触れもなく快感が喫水線を超え、みゆきは目の前に白い火花が散るのを感じた。
 快楽が一気に全身に回り、呼吸がままならなくなる。
 貴明も自身をぎゅうぎゅうと抱きしめられて、荒い息を吐いた。

「痙攣するみたいに、震えて、絞めてくる……キツいな」

「あ、ご、めんなさ……」

 もうろうと謝罪するみゆきに、貴明は苦笑して、苦しい声で答える。

「あやまらないで。ものすごく、気持ちがいい」

「そ、です……? うれしい」

 みゆきは夢みる顔で、幼く笑った。
 自分の体が貴明をしあわせにできるなんて、これ以上のしあわせはない。
 ふわふわと快感と幸福感の中で漂っていると、貴明に額を撫でられる。

「う……?」

「すこし、我慢だよ」

「はい? んっ……」

 まだほのぼのと笑っていたみゆきだが、貴明が大きく腰を引いたので、快感に震えてぎゅっと目を閉じた。
 次の瞬間、ずどん、と、重い快楽が腹の底で爆発する。

「……あ……っ、あっ、な、なに」

 混乱して目を開いたものの、まだ火花が散っていて何も見えない。

「ここが行き止まりだ。これで全部、俺のものだ……」

 貴明が信じられないくらい低い声で囁いたのが聞こえた。
 さっきまでは達していなかったみゆきの最奥に、貴明自身がこすりつけられている。
 みゆきはもはや声も出せないが、貴明は怖いような顔でみゆきの奥を責め続ける。

「あ……あ……」

「みゆき。みゆき……」

 何度も名を呼ばれ、何度も口づけられる。
 その合間に姿勢を変えて、何度も奥をこねられる。
 全身の感覚がおぼろげになり、快感だけが波のように襲ってくる。

 呑みこまれては、引いて、また呑みこまれて。
 白く分厚い紗の向こうから、貴明の優しい声だけが響く。

(貴明さん、だけだ)

 みゆきは陶然と思う。
 ここには、貴明と自分しかいない。
 他には誰も入りこめない。

 やっと、ここまでたどり着いた。
 やっと、しあわせにたどり着けた……。

 この日々は、遠からず、終わってしまうのだけれど。
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