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A Dream Within a Dream
しおりを挟む「……か、……りか。茉莉花……」
遠くで誰かの声。だんだんはっきりしてくる。
私を呼んでる?
「茉莉花ちゃん」
肩を揺さぶられて、はっと眼を開ける。
上品そうな綺麗な顔が、私を覗き込んでいた。
「あ……お母……」
お母さん、と小さく口の中で言ってから、言い直す。
「ママ」
変なの。お母さんなんて、呼んだことないのに。
「──ここ、何処? 病院?」
「茉莉花ちゃん、何言ってるの。あなたの部屋じゃないの」
不思議そうな表情。
起き上がって見回すと、ママの言う通り、確かにそこは見慣れた自分の部屋だった。
「私……交通事故に遭ったんじゃ……」
「ふふっ、茉莉花ちゃんたら、夢でも見たんじゃないの?」
「夢……」
夢だったの……?
でもね。
痛いんだ。すごく、身体が。
車にぶつかって飛ばされて、何台も私の上を通り過ぎて行く。
手とか足とか千切れて、引き摺られて……。
「!」
一瞬血溜まりのなかにいるように見えた。
白いパジャマも掛かっている布団も全部真っ赤に。
でも──瞬きした後にはもうなくなっていた。
「茉莉花ちゃん、早くしないとご飯食べる時間なくなっちゃうわよ。それとも、具合悪いの? こんな時間まで起きて来ないなんて珍しいし」
「ううん、大丈夫。具合悪くないよ。急いで着替えるね」
優しいママに心配かけないように、何もなかった振りをする。
「そう? じゃあ、下に行ってるわね」
「はぁい」
きっと、寝ぼけてたんだ。
アレもただの夢。
「それにしても……夢の中で、夢を見るなんてね」
すべてをただの夢にして、私はベッドから降りた。
★ ★
「案外、この世界も夢だったりしてね。ふっふっふっ」
あーやがわざとらしく笑う。
『夢のすべてが現実。現実のすべてが夢』理論を持つ親友の綾に、今朝のことを話した途端に、この台詞。めちゃくちゃ楽しそうに言う。
「やだなぁ、もう、あーやは」
あーやはすぐに私を怖がらせようとする。
「じょーだん、じょーだん」
あはははと、明るく笑っておきながら、最後に少し真剣な顔をして、ぽつり……。
「でも、実際……これが、夢じゃないなんて保証は、どこにもないよね……」
私にではない。何処か遠い世界に向かって言っているように見えた。
「…………」
あーやのその言葉は、私をぞくりとさせた。
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