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第二十三章
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「まだ、繋がってたのか、お前ら」
ちっと樹が舌打ちをする。
「樹は極端なんだよぉ。抜けると言ったら、連絡手段全部絶っちゃうだもん。まあ、連絡したのはタキさんになんだけどね~。まさか、龍惺さんまで来るとは。お気に入りの樹の名前を出したかいはあったわけだ」
そう明が言えば、
「そうだよ。龍惺さん、お前のこと諦め切れないんだから。一緒に走れとは言わないから、たまには連絡してやれよ」
とタキが捕捉する。
(この二人、めちゃめちゃ気が合いそうだなぁ。っていうか、なんか雰囲気に似てる?)
「お前、余計なことを」
龍惺も、ちっと舌打ちをする。
(こっちの反応も何だか似てる?)
「『ストーカー』の件も本当は誤解だってわかってんだろ。確かにあの店の店員に何回か声掛けたけど、脈なしとわかった時点で手を引いた。あとは……」
「龍惺さんをリスペクトとする下の人間が勝手にやった──ですね、タキさん」
タキの言葉を明が引き取った。
「だなー、だから、たまには連絡してやってくれ。久しぶりに会ったって、あのコンビニでの話をした時の龍惺さんの顔ったら、自分がその場にいたかったって感じだったよ」
二人でにこにこ笑い合っているが、樹と龍惺は同じような苦い顔をしている。
「それでも、俺は龍惺さんには会いたくなかったんだ。昔の駄目な自分を思い出す」
「俺は──思い出したくない過去なのか」
龍惺が少し切なげに言う。
「そうだな……でも、あの頃の自分には救いだった」
過去を思い出して語り始めた二人。
周りは皆置いてきぼりだ。
「ま、そういうわけで、今日はもうお開きだ。おめぇらの処遇は追って沙汰する」
タキが苦笑いしながら、上手くその場を切り上げようとする。
(『追って沙汰する』って、また、なんていうか時代がかった……)
呑気にそんなことを考えていたけれど。
更に時代劇の悪役よろしく動き始めた人間がいた。
それは今僕に背を向けて事の成り行きを見守っていた男だ。
「くそっ」
と一言恨みがましい声を漏らすとくるっと僕のほうを向いた。
その手には鉄パイプがいつの間にか握られていた。参戦していた男たちが手を離して転がって来たのかも知れない。
「もう、どうでもいいっ」
そんな低い呟きは少し離れた彼らには聞こえているだろうか。
先は見えているがどうにか一矢報いてやる──そんな時代劇定番の展開。
男は鉄パイプを振り上げた。
まだ手足を縛られたままの僕は、驚きもあって全く身動きが取れなかった。
ガンッと片腕に衝撃。
「つっ」
痛みが走る。
もう一度振り上げるのが見えた。
今度こそ、頭とかに来るんじゃないかと、ぎゅっと目を瞑った。
ガツンッと音はした。
しかし、何の衝撃も来ない。
代わりに何か熱いものに包み込まれた。
ちっと樹が舌打ちをする。
「樹は極端なんだよぉ。抜けると言ったら、連絡手段全部絶っちゃうだもん。まあ、連絡したのはタキさんになんだけどね~。まさか、龍惺さんまで来るとは。お気に入りの樹の名前を出したかいはあったわけだ」
そう明が言えば、
「そうだよ。龍惺さん、お前のこと諦め切れないんだから。一緒に走れとは言わないから、たまには連絡してやれよ」
とタキが捕捉する。
(この二人、めちゃめちゃ気が合いそうだなぁ。っていうか、なんか雰囲気に似てる?)
「お前、余計なことを」
龍惺も、ちっと舌打ちをする。
(こっちの反応も何だか似てる?)
「『ストーカー』の件も本当は誤解だってわかってんだろ。確かにあの店の店員に何回か声掛けたけど、脈なしとわかった時点で手を引いた。あとは……」
「龍惺さんをリスペクトとする下の人間が勝手にやった──ですね、タキさん」
タキの言葉を明が引き取った。
「だなー、だから、たまには連絡してやってくれ。久しぶりに会ったって、あのコンビニでの話をした時の龍惺さんの顔ったら、自分がその場にいたかったって感じだったよ」
二人でにこにこ笑い合っているが、樹と龍惺は同じような苦い顔をしている。
「それでも、俺は龍惺さんには会いたくなかったんだ。昔の駄目な自分を思い出す」
「俺は──思い出したくない過去なのか」
龍惺が少し切なげに言う。
「そうだな……でも、あの頃の自分には救いだった」
過去を思い出して語り始めた二人。
周りは皆置いてきぼりだ。
「ま、そういうわけで、今日はもうお開きだ。おめぇらの処遇は追って沙汰する」
タキが苦笑いしながら、上手くその場を切り上げようとする。
(『追って沙汰する』って、また、なんていうか時代がかった……)
呑気にそんなことを考えていたけれど。
更に時代劇の悪役よろしく動き始めた人間がいた。
それは今僕に背を向けて事の成り行きを見守っていた男だ。
「くそっ」
と一言恨みがましい声を漏らすとくるっと僕のほうを向いた。
その手には鉄パイプがいつの間にか握られていた。参戦していた男たちが手を離して転がって来たのかも知れない。
「もう、どうでもいいっ」
そんな低い呟きは少し離れた彼らには聞こえているだろうか。
先は見えているがどうにか一矢報いてやる──そんな時代劇定番の展開。
男は鉄パイプを振り上げた。
まだ手足を縛られたままの僕は、驚きもあって全く身動きが取れなかった。
ガンッと片腕に衝撃。
「つっ」
痛みが走る。
もう一度振り上げるのが見えた。
今度こそ、頭とかに来るんじゃないかと、ぎゅっと目を瞑った。
ガツンッと音はした。
しかし、何の衝撃も来ない。
代わりに何か熱いものに包み込まれた。
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