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第二十三章
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しおりを挟む情勢は均衡状態だった。
確かに二人は強い。
でも無傷なわけでもないし、多勢を相手にしていればいずれ力尽きてしまうだろう。
そうなったら……。
悪いほうにしか考えられない。
(どうしたらいいんだろう……)
そんなふうに思っていたら。
「はいっ! おしまいっ!」
パンパンと手を二回叩く音と共に、よく通る声がした。
入口付近にまた新たな男たちが。
(あの人! タキさん! それから──誰っ?!)
タキの横に、今ここにいる誰よりも背も高く大柄な男が立っていた。
しかも、かなりのイケメン。悪な感じで、立ってるだけで迫力満点。
「りゅ、龍惺さんっ」
目の前男がぐっと喉を詰まらせる。
(リュウセイ? あの人が。あの、噂の?)
僕が思い浮かべたのは『ストーカー』という言葉。梨麻に声を掛ける姿。
「いやいや、ないない」と心の中で首を横に振った。
それよりも、いかにも屈強そうな男に不安が煽られる。
(ワンチャンこっちの加勢かと思ったら、ラスボス登場?!)
タキの声で数人が動きを止めた。
しかし、すぐ反応出来なかったのか、それとも加勢に来たと思ったか、まだ二人を攻撃してくる者もいる。
ある男は、樹に吹っ飛ばされてタキの目の前に転がっていった。
その男の腹をタキが足下にする。足下にされた男はぐえっと呻いた。
「いい加減にしろよぉぉっ! おめぇらぁぁぁっ!」
さっきの学校の先生的な口調とは違う。ドスの利いた怒鳴り声に、今度こそぴたっと全員が動きを止める。
けして、加勢に来たわけではないという意図が伝わって来る。
「勿論わかってると思うが、加勢に来たわけじゃない。いつまでも終わらねぇからだ」
周りが静まり返ったからか、またタキの声音が変わった。けして怒鳴るわけでもないのに良く通る声。
演劇の発声法でもやってそうだ。
「一般市民巻き込みやがって。しかもたった二人と同等とか、ダサッ」
周りがしゅんとなりだした。
「ったく、来なくていいって言ったのに。たまたま連絡貰った時にいた龍惺さんまで一緒に来ちゃったじゃないかっ。お前らただで済むと思うなよ」
(あ、ついて来ちゃっただけなんですか? それはまたなんだか可愛い感じが……)
と思ってもう一度顔を見た。
(いやいや、全然可愛くないっ)
「樹、困ってるなら、早く俺に連絡すればいいものを」
背筋に響く低音がした。
これまで全く口を開かなかった『リュウセイ』さんだ。
イケメンに似合うイケボだった。
「あんたの手は借りたくなかった」
樹が苦々しく答える。
「連絡したのはボクちゃんだよぉ」
そう言ったのは勿論、明。
(あ、『関係者に連絡した』。そう言えば、さっきそんなふうに言ってた)
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