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第十八章
1
しおりを挟むあの心臓が破れそうな程どきどきした日。
そして、僕が自分の本当の気持ちに、やっと気がついた日。
あの日から。
樹に少し変化が起きたような気がした。
何処が? と言われれば説明できない程の、気のせい? と言えばそうなのかも知れない程の。
周りから見ればいつも通りの二人。
授業で自由にグループを作る時は必ず一緒だし、クラスで樹から話し掛ける相手は僕くらいなものだし。
でも何かが違う。
前と同じようで、一瞬躊躇するような仕草が挟まるそんな感じがする。
★ ★
昼休み。
売店に寄る樹と別れて二階テラスに先に向かう。
廊下や教室は昼休みを過ごす生徒たちで賑やか。
女子の集団はかなり苦手。
横をささっと通り過ぎようとすると、
「えー! 樹くん彼女出来たの?!」
そんな声が耳に入る。
樹はもてる。通りすがりに樹の名を耳にすることも良くあることだ。
でも今日は立ち止まってしまった。
(え? いっくんに彼女?)
初耳だった。
中学の時は短期間で彼女が入れ替わっていたのを、明と大地に聞いていた。その後は──彼女ではないけど……そういう話も聞いた。
それはまだ僕ら四人の関係が始まる前で、その後はそんな話はまるでなかった。
「樹くんから聞いたわけじゃないけど。BITTER SWEETに来る女子大生が騒いでた。その彼女も女子大生だって」
見ると、その集団の中にBITTER SWEETで見掛けたことのある女子が数人混じっていた。
「あ!」
その中の一人が僕を見て声を上げた。
(わっ。見ててごめんなさいっ)
心の中で謝って、さっさとその場を去ろうとした。
「ちょっと待ってよ」
追いかけてくる。他の女子も一緒について来るのが怖い。取り敢えず言われるまま止まった。
「あんた、樹くんの友だちでしょ。たまにBITTER SWEETに来てるよね?」
「え……まぁ……」
「え~嘘でしょ。樹くんに全然合わない~」
「三組の友だちが言ってた。樹くんが唯一自分から話し掛ける男子がいるって」
一斉にわいわい言われて、『樹の彼女説』に立ち止まってしまったことを激しく後悔した。
「ねぇ、樹くんに彼女出来たってほんと?」
「え……し、知らない」
そう言うのがやっとだ。
「ほんとに?」
こくこくっと頷く。
「あんた、ほんとに友だち?」
「樹くんに纏わりついてるだけじゃないの?」
「ほんと、僕知らないから~」
たまらず逃げ出した。
後方でわいわい言ってるけど、追いかけて来る様子はなくほっとする。
(いっくんに彼女……)
その言葉をずっと反芻しながら二階のテラスに着くと、明と大地の姿が見えた。
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