はじまりの朝

さくら乃

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第十二章 

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 昼食の後またのんびり歩きながら、神社に戻ってくる。
 明が神社の駐輪場にバイクを置いてきたからだ。


(メイさん、バイクで来たんだ。
 じゃあ、大くんとは別々に……)


 と思いきや、黒いぴかぴかの大きめのバイクだった。てっきり原付だと思っていたのに。
 しかし、明の今日の装いを見ると今更ながら納得してしまう。
 

「駅まで行ける? 送って行こうか」
 と心配そうな明。
 時々僕を幾つだと思っているのかという扱いをする。
「ごめんな。金森先輩がどうしてもこれで行こうっていうから」
「えっ。だいくんそれ酷くない?」
 二人のやり取りにくすっと笑みが零れる。
「大丈夫。駅までそんな遠くもないし。──今日誘ってくれてありがとうございました。楽しかったです」 
「ななちゃ~~ん」
 明が抱きついて来ようとするところを、大地が間に入って抱きついてくる。
「俺も楽しかった。七星が来てくれて良かったよ」
「だいくんだけずるいっ」
 大地の後ろからそんな声が聞こえた。

「じゃあ、また新学期に」
 そう言って二人はバイクに乗って走り去って行く。もちろん大地は明の後ろだ。


(仲良しだな。いいなー)


 樹もああいうバイクに乗るのだろうかと、二人を見送りながら想像する。


(かっこいいだろうなぁ。
 それであんなふうに、後ろに乗せて貰えたら)


 そこまで想像して自分がにやにやしているのに気づき、恥ずかしくなった。誰か見てやしないかと周りを見て、近くに誰もいなかったことにほっとする。


(そんなことあるわけないか。それにいっくんちにバイクが置いてあるのなんか見たことないし)



 駅に向かって歩きながら、さっき二人と別れた時にふと思いついたことを、ずっと考えていた。
 ターミナルの家方面行きのバス停前まで来たところで、また悩む。
 このまま帰るか、それとも……。
 今日もしかしたら樹に会えるかと思っていたことが、帰る今になってまた燻り始めた。
 バスが来るまでもう少し。バスに乗る人の列はだいぶ伸びていて、それを眺めながら考える。


(やっぱり、行こう)


 僕はその列には並ばず、足早に駅に向かった。
 ここは駅の北側。階段を上り、改札の前を通り過ぎ、南側に下りて行く。
 それから学校に向かう大通りを歩き、途中で住宅街の中に入って行く。
 それから。 
 ……それから。


(ん~?
 この後、どっち行くんだっけ?)


 かなり入り組んだ道だった。思い出そうとしたが、ほぼ明の後ろを着いて行っていただけなので、ほんやりとしかわからない。
 それに夜と昼とではまた印象も違う。
 よくよく考えて見たら、店の名前もわかっていなかった。


(これじゃ、スマホでも調べられない。
 すぐわかるなんて、どっから来た自信なんだろ)


「ナナ?」
 どちらにも動けず立ち尽くしていると、後ろから聞き覚えのある声がした。

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