はじまりの朝

さくら乃

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第十二章 

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 いつも通り、ひと騒ぎしたところで、
「じゃあ。行きますか」
 と、ウィンク。
 大地じゃないけど、最初からこっちだったら怖くなかったかも知れない。
 イケメン度も増している。
 

(そんなこともないかな)
  

 あの得体の知れなさ。
 きっと髪色落ち着いてても初対面の印象は変わらなかっただろう。
 今はそれら全てが、明自身を『守るもの』ではないかとなんとなくわかる。
 明が強引に入り込んで来て始まったつき合いだけど、そのお陰で明の人柄を知ることができた。
 オレンジ色の髪でももう怖くない。だからもう髪色なんて関係ないんだ。


 公園から神社の正面にゆっくり歩きながら。
「メイさん……あの、いっくんて……」
 さっきから気になっていたことをやっと口にした。
「あー。樹、今日バイトだって」
「もうバイトしてるの?」
「あそこ、モーニングもやってるからね。元旦の朝はけっこう混んだらしいよぉ。昨日は休みだったみたいだけど、ボクのほうがダメだったから」
 明はボクの顔を覗き込んで「ごめんね」と眉尻を下げる。
 明が謝ることでもない。
 僕はぶんぶんと頭を横に振った。

 朝早いとはいえ、正月三日の神社はやはり人が多い。参拝するのにも少し並ぶ。
 

(何をお願いしよう)


 神頼みで何とかなるとは流石に思わないけど、それでも神社に来ると何かしら願いごとを考える。
 今の学校生活にそれ程不満もない。
 思いも寄らず、友だちも出来た。一年生で受験のことはまだ遠い。


(やっぱり……いっくんのことかな)


 そんなことを考えている間に自分の番がやってきた。
 三人揃って並び、作法に則って礼をし、手を合わせる。
 お賽銭は少し奮発。 


(いっくんと。
 えっと。

 もっと話が出来ますように。

 学校以外でも会えますように。

 昔みたいに、仲良くできますように…………。

 
 ーー仲良くって、子どもか)


 最後は自分にツッコミを入れて目を開けると、隣はもう違う人が祈っていた。
 慌てて一礼をして階段を下りる。
 階段の横で二人がにやにやしながら待っていた。
「ずいぶん熱心に拝んでたなー」
「え? そう」
 気持ち顔が熱くなる。
 恥ずかしいことをしてしまった気がした。
「樹のことかな~~」
「えっ。ちがっちが……っっ」
 図星過ぎて一人であわあわする。
 更に顔に熱が。
「ふーん」
 大地はやや不満げに鼻を鳴らし、明はにこにこと微笑んでいた。


「おみくじとかやる?」
「いっすねー」

 僕らは境内でおみくじをやり、お守りを買った後、徒歩十分程の場所にある商業施設に移動した。
 ぷらぷら店内を回り、ゲームセンターで遊び、フードコートで昼食を食べた。


(友だちっていいな)


 僕はすごく幸せな気分になった。
 樹と離れてしまってから、こんな日が自分に来るとは思わなかった。


(欲を言えば。

 ここにいっくんがいたらなぁ……)

    
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