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第十一章
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しおりを挟む「お待たせ~~」
後ろから突如と現れ、僕と大地を後ろからぎゅうっと抱き締める。
「わっ」
僕らは同時に声を上げたが、大地はその後ぷうっと頬を膨らませた。
「誘った人間が遅れるってどういうことっすかねー」
「あ、ごめんごめん。ちょっと家で揉めちゃってー」
振り返ると、明の白い頬が左側だけ赤くなっていた。
「え……っと」
何処をどう突っ込んでいいのかわからない。気の利いた言葉も出てこない
しかし、大地は。
「腫れてるぞっ。大丈夫かよ~」
自分の手で彼の頬を撫でる。
「冷たっ。でも、気持ち~」
「バカだなっ」
明が言ったことにはそう返したが、自分の手の上に手が重ねられたことには反撃はなし。
(ん……と。
ほんとに、二人仲良くなったんだな……)
そう思いつつもなんとなく違和感が。
何が、何処が、と問われたら、はっきり言葉には出来ない。
「ごめんね。せっかく楽しい日になりそうなのに、こんな顔でぇ~」
えへへとちょっと気まずげに蟀谷を指先で軽く掻く。
「そういうことは気にしてない。痛い思いしてるあんたが可哀想だとは思うけど」
うふふと本当に嬉しそうに大地の頭を撫でる。
それには顔を赤くして、手を払おうとする。
「もうやめろよ~」
十二月二十四日。
クリスマスイブ。そして、明日から冬休みというその日。
学校は午前で終わり、全部活活動なしで、僕らは一旦家に帰った。
イブは毎年家族で過ごしていたが、明に押し切られ、彼の提案に乗ることになった。
二十四日に友人と出かけることを母に伝え謝ると、逆にめちゃくちゃ喜ばれてしまった。
友人と出かけるなど、樹と離れて以来一度もなかったかららしい。そんな友人が僕に出来たことが、彼女は嬉しかったのだ。
母はいつも何も言わず見守っていてくれてるが、本当は凄く心配してくれていたのだろう。そのことが今になってわかり、嬉しいやら申し訳ないやらで、僕も胸がいっぱいになった。
「さて。行きますか」
私服に着替え、待ち合わせした場所は最寄り駅の南口。
いつも学校に行く時に通る場所だ。
学校から帰ってわざわざまた来たということになる。
(いったい、どこに……。)
これから行く場所の情報は何もない。
明に聞いても「お楽しみに」と最後に音符がつきそうなノリで答えるばかりだった。
(まさか……お酒だす場所じゃ……)
今日で十七歳になる明は、白いロングコートを着ていて、学校では結んでいるオレンジ色の髪も下ろし、年齢以上に大人っぽく見える。
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