はじまりの朝

さくら乃

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第七章

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「あ、そうだ。ボクも誕生日プレゼント。急だったから、ちゃんと選べなかったんだけど」
 そう言ってボクの手をそっと取って、何かを握り込ませた。
「来年はちゃんと考えて選ぶから、ね」
 とウィンク。
 開くと、ヒーローものの小さいフィギュアだった。
「え」
 どうコメントしていいのかわからない。
 でも、昔樹が観ていた、虫を象ったヒーローに似ている。


(懐かし……)


「げっなんだ、それ。さっきコンビニで買ってたのそれかー。っていうか! 来年もなんて、図々し過ぎじゃないすかー」
「だいくん、いちいちうるさいよー」
「だいくんってゆーなー」

「ありがとうございます、メイさん」
「いえいえ、どういたしまして──あ、そう言えば、樹も明日、誕生日だっけ。呼んで一緒に祝っちゃう~?」
「え、城────」
「えっ。だめだめっっ、いっくん絶対に来ないから~むりむりむりむりむり~~っ。あ…………」

 二人が固まっている。


(あー。
 今まで気をつけてたのに)
 

「いっくん?!」
 二人同時に。


(あ、やっぱり。気づいちゃった)


「やっぱ、ただのご近所さんじゃなかったんじゃないっ」
「あ、はいっ! ごめんなさいっ」
 かなり食い気味で詰め寄られて、つい深々と頭を下げてしまう。
 それについての様々なことを黙っていたせいで、明が樹に殴られたわけだし、言いたいこともあるだろう。
「ま、いいけど。きっと何かあるんだよね──それ、樹へのプレゼントでしょ?」
 顎をしゃくって机の上を示す。


(出しっぱなしだった……。
 メイさん、目敏いなぁ)
 

「小学校上がる前に僕の家がここに越してきて、それからずっと友だちだった。十二歳の誕生日まで一緒にお祝いしてて──でも、その後渡せなくなって。それなのに、毎年プレゼントと用意しちゃうんだ……」

 さっきまでの楽しい気持ちが萎んで、部屋の中にもしんみりした雰囲気が漂ってしまう。
 明は気遣わしげに僕を見ていて、大地は何故かムッとしている。

「何かあったんだ?」

 何だか気持ちがいっぱいいっぱいで。
 全部話してしまいたくなった。



 僕は簡単に事実だけを語った。
 話を聞いている明が、次第に顔色を変え、顎に手を当て考え込み始めた。
 すべてを話終えると。

「ごめんっ」

 土下座した。

「え……っ。メイさん?」
「金森先輩?」

 僕も大地も吃驚して明を凝視した。

「それ、オレらだわ」
 急に一人称が変わる。動揺してるのだろうか。
「あん時、倒れた子が動かなくなって、樹が駆け寄って助け起こした。そしたら、顔中血だらけで、オレら怖くなって逃げたんだっ」
「っだってぇ──かぁ……っなもりぃーっ!!」
 床に頭を擦りつけたまま話していた明の肩を、大地がぐっと掴んで起こす。今にも殴りそうな勢いだ。

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