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第二章
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しおりを挟むそれから僕らは毎日のように一緒に遊ぶようになった。
この辺りでは夕方誰でも知っている童謡の曲が流れる。僕らはそれ“鐘が鳴る”と言っている。子どもたちはそれを目安に家へ帰る。九月いっぱいは五時半に、それから三月末までが四時半に鳴る。
僕が保育園から帰るのが五時過ぎで、夏期の今でさえ鐘が鳴るまでには三十分にも満たない。それでも樹は僕が帰って来るのを待ち構えていた。僕は家にも入る間もなく、目の前の空き地に連れて行かれる。
土日は一日中一緒、なんてことも多く、少し歩いたところの公園へも行く。
初めは気が進まなかった僕もひと月経てば慣れてしまう。樹と遊ぶことが、一緒にいることが自然になったきた。
その頃になると、樹は僕のことを『ななせ』から『ナナ』と呼ぶようになる。
保育園の友だちも呼ばない呼び方に、更にぐっと親しさが増したような気がして、擽ったいようなどきどきするようななんとも言えない気持ちになった。
僕は、と言えば、『いつきって呼べよー』という彼の要望にはなかなか応えられず、なんとか『いっくん』で留めるのを納得して貰えた。
外ばかりではなく、互いの部屋でも遊ぶようになった。休みの前日には僕の家に泊まりに来ることも。独りっ子の樹は、僕の年の離れた姉とも仲良くなった。
樹の家に泊まるにはまだ勇気がいるし、それに樹の父親がそういうことを余り好まないらしい。
僕らの仲は急速に深まり、もう何年も前から一緒にいるような気さえした。僕にそういう友だちが出来るとは、自分でも思ってもみなかった。
そうやって半年を過ごし、僕らは同じ小学校に入学した。
予想通り保育園での友だちは誰一人いなかった。僕の知り合いは、樹だけ。運が良かったのか、学校側での配慮なのか、一、二年は樹と同じクラスになった。
僕と違って友だちの多い樹といることで、自分から話に行かない僕にも話しかけてくれるクラスメイトもいて、この二年間は割りと快適だったと思える。
それに、どんなに友だちが多くても樹が僕を最優先に扱ってくれることに、密かに優越感もあった。
出逢った頃が信じられないくらいに、樹は僕にとってなくてはならない存在になったんだ。
でも。
樹が何故自分とは全く性格の違う、一緒にいても面白くもなさそうな僕を、一番の友だちにしてくれていたのか。
それは今思い返しても、謎でしかない。
三年から六年までは樹とはクラスが別れてしまった。
そうなると人見知りな僕は、なかなか自分から話しかけられる友だちも出来ず、かといって苛めに合うこともなく、ある意味平穏な学校生活を送っていた。
樹のような友だちができなくても、特に寂しいとは思わなかった。
放課後や、休日には相変わらず樹と一緒に過ごしていたから。
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