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澄清の空に混じる灰色
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「悪いけど、もう私達に話しかけないでね」
冷たく言い捨てて、稲葉は立ち去る。そしてその後ろを斎藤と山田が付いて行くように去っていった。
あらら・・・・・・先越されてしもたわ。・・・・・・まあ、しゃあないか。
このまま味方をしてもメリットは何一つとして無い事くらいは理解できるから、さっさと離脱したのは正解と言える。このまま桜雛子と言う泥船に乗って一緒に沈む意味は無い。
さて、僕も離脱しようかな。
「・・・さて、僕も帰らせてもらうわ、最後に言うとくけど、これ以上恵都君に付きまとうようやったら次はお父さんお母さん呼んで話し合いになるよ」
「・・・・・・・・・・・・」
流石に「卑怯ですっ!」とは叫ばないらしい。瞳に涙を溜めていたが、遂にはぽろりぽろりとこぼれ落ちていく。
しかし、それを見て慰めてくれる優しい人はそこにはおらず、俯く雛子を置いて環も伝票を手に取りレジへと向かった。
レジで会計を済ませ、外に出て駐車場に向かうと環の車の前に恵都が立って待っていた。
「・・・・・・っ、環さんっ!」
悲壮な顔をして待っていた婚約者に、環は安心させるように肩に手を置いた。
「来てくれてありがとう」
話し合いの前に、ファミレスでトイレに行く振りをして呼び出しておいたのだ。ただし、中には入らないように言って。
そうでなければ、雛子が興奮して余計に話にならない予感がしたからだ。恵都を介入させるのは最終手段のつもりだったのだ。
「何ちゅーか、恵都君が突入する前に終わってくれて良かったわ、桜さんのお友達様々やで」
雛子からすれば、友人達の裏切りにより話し合いは失敗した事になっている事だろう。
「何かあったんですか?」
「うん、それは今から話すわ」
環はそう言って恵都に車に乗るよう促した。
環が車の運転をして恵都のマンションに向かいつつ、車内であった事全てを話した。
「・・・・・・そうですか、人の話を聞かないのは相変わらずみたいだけど、流石に友達に手のひらを返されたのは堪えたみたいみたいですね」
苦笑いする恵都に、加熱式たばこを吸いながら運転をしていた環も小さく笑った。
「事前にある程度解決しててくれたから助かったわ、そうでなかったら多分もっと厄介やったと思うわ」
そう、恵都が先に色々な人を巻き込んで話し合ってくれたお陰で、雛子もあまり強く出れなかったのだろう。そうでなければ、今頃此方がどれ程言葉を重ねても、きっと聞く耳を持ってくれなかった筈だ。
もうこれ以上は親を呼ぶと警告をした。この警告の意味が分からないほど愚かでなければ、彼女はもう近付いて来ないだろう。
数日後────。恵都はサークルを辞めているし学部も違う為、雛子との接点は完全に切れていた。しかし時折親切な人が教えてくれるのだが、雛子は今はどうやら新しい恋に目覚めたようで、その相手を追いかけるのに忙しいらしくて恵都の事はどうやらそのまま忘れ去ってくれたようだった。
それから更に数か月の月日が流れ、恵都が最後に彼女を構内で見掛けたのは、必死に何処かへ向かって走って行く姿であった。それからは、色々と彼女に関する噂が流れたが、恵都と環にはもう、関係のない話であった。
環とのデートに思いを馳せながら、恵都は何時の間にか高くなった空を見上げた。
end.
冷たく言い捨てて、稲葉は立ち去る。そしてその後ろを斎藤と山田が付いて行くように去っていった。
あらら・・・・・・先越されてしもたわ。・・・・・・まあ、しゃあないか。
このまま味方をしてもメリットは何一つとして無い事くらいは理解できるから、さっさと離脱したのは正解と言える。このまま桜雛子と言う泥船に乗って一緒に沈む意味は無い。
さて、僕も離脱しようかな。
「・・・さて、僕も帰らせてもらうわ、最後に言うとくけど、これ以上恵都君に付きまとうようやったら次はお父さんお母さん呼んで話し合いになるよ」
「・・・・・・・・・・・・」
流石に「卑怯ですっ!」とは叫ばないらしい。瞳に涙を溜めていたが、遂にはぽろりぽろりとこぼれ落ちていく。
しかし、それを見て慰めてくれる優しい人はそこにはおらず、俯く雛子を置いて環も伝票を手に取りレジへと向かった。
レジで会計を済ませ、外に出て駐車場に向かうと環の車の前に恵都が立って待っていた。
「・・・・・・っ、環さんっ!」
悲壮な顔をして待っていた婚約者に、環は安心させるように肩に手を置いた。
「来てくれてありがとう」
話し合いの前に、ファミレスでトイレに行く振りをして呼び出しておいたのだ。ただし、中には入らないように言って。
そうでなければ、雛子が興奮して余計に話にならない予感がしたからだ。恵都を介入させるのは最終手段のつもりだったのだ。
「何ちゅーか、恵都君が突入する前に終わってくれて良かったわ、桜さんのお友達様々やで」
雛子からすれば、友人達の裏切りにより話し合いは失敗した事になっている事だろう。
「何かあったんですか?」
「うん、それは今から話すわ」
環はそう言って恵都に車に乗るよう促した。
環が車の運転をして恵都のマンションに向かいつつ、車内であった事全てを話した。
「・・・・・・そうですか、人の話を聞かないのは相変わらずみたいだけど、流石に友達に手のひらを返されたのは堪えたみたいみたいですね」
苦笑いする恵都に、加熱式たばこを吸いながら運転をしていた環も小さく笑った。
「事前にある程度解決しててくれたから助かったわ、そうでなかったら多分もっと厄介やったと思うわ」
そう、恵都が先に色々な人を巻き込んで話し合ってくれたお陰で、雛子もあまり強く出れなかったのだろう。そうでなければ、今頃此方がどれ程言葉を重ねても、きっと聞く耳を持ってくれなかった筈だ。
もうこれ以上は親を呼ぶと警告をした。この警告の意味が分からないほど愚かでなければ、彼女はもう近付いて来ないだろう。
数日後────。恵都はサークルを辞めているし学部も違う為、雛子との接点は完全に切れていた。しかし時折親切な人が教えてくれるのだが、雛子は今はどうやら新しい恋に目覚めたようで、その相手を追いかけるのに忙しいらしくて恵都の事はどうやらそのまま忘れ去ってくれたようだった。
それから更に数か月の月日が流れ、恵都が最後に彼女を構内で見掛けたのは、必死に何処かへ向かって走って行く姿であった。それからは、色々と彼女に関する噂が流れたが、恵都と環にはもう、関係のない話であった。
環とのデートに思いを馳せながら、恵都は何時の間にか高くなった空を見上げた。
end.
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この先の展開楽しみにしています✨
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