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雨晴れて覗く空の色
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「汚い、ねえ・・・・・・あんねえ、恵都君と結婚したいなら君自身の実力で黙らせるか、金の力で黙らせるしかあらへんのやけど。 そのどちらも嫌です出来ません、じゃあ、お話にならへんのやけどね」
こちらを睨む雛子を、環は呆れたように見ていた。こうやって話を続けても埒が明かないのは明白で、もう話を切っても良いだろうと考えた。
それに、環は彼女達に付き合って禁煙席に座っていたので、そろそろ煙草が吸いたくなってきたのだ。
「ねえ、桜さん。 君に聞きたいんやけど、君は恵都君と結婚したい、言うけどそのコトについて恵都君自身はどう言うてるん? 勿論、ふたりで話し合ったうえで此処に居るんやんね?」
そう言うと、初めて両隣に座る友人達ははっ、としたような顔をして雛子を見た。この三人は雛子から『ケイト君が変な人に付きまとわれてる。 むりやりつき合わされてかわいそうだから、何とかして助けてあげたい。だから、手伝って欲しい』と。勿論、自身と恵都は好き合っていると言う前提でこのような事を言われ、同情した三人はこうやって付いて来たのである。
もうここまで来ると流石に雛子が嘘を言っている、と言う疑惑は濃厚だった。まだ疑惑、なのは信じたい、と言う気持ちよりも、何もかもが噓だった時自分達が被る被害の事を考えたくない、と言う所から来ているからだ。
「聞いとるよ、君らん所のゼミの先生と、恵都君所の先生とサークルの部長さん、サークルのメンバーも巻き込んで話し合いしたらしいやん?」
「・・・・・・っ!」
何故知っているのか。青い顔で雛子は環を目を見開いて凝視した。
「え、え・・・どういう事? ヒナ、話し合い、って何?」
雛子のカーディガンの裾を軽く引きながら、本当に何も知らない稲葉は雛子を見上げた。しかし雛子は稲葉の手をパシンッ、と叩いて振り払う。
「・・・・・・っ! ちょ、ヒナ・・・・・・」
言いかけた稲葉は、雛子に涙目で睨まれて言葉を詰まらせた。
何よソレ・・・・・・っ!?
あんまりな態度に、稲葉は絶句しながらも、もうコイツの味方はしないと心に決めた。
「何で知ってるんや、って顔やね。 当たり前でしょう、恵都君が全部教えてくれたんやから」
普通に考えれば、そうだろう。
「僕は恵都君の婚約者なんやから、当事者のひとりとして知ってないとおかしいよね?」
計画、と言うのもおこがましいが、雛子の中で立てていた計画がもろくも崩れ去った瞬間だった。
何も知らない環に、雛子が恵都と自分は好き合っているのだから邪魔をするなと言えば、向こうが泣く泣く離れてくれるだろうと、考えていたのだ。
実際は、真逆な事が起こって自分が涙目になっている。普通に考えれば、当たり前の話だった。雛子達よりも一回りは年上の男が、年下の女の子に言いくるめられて婚約者と泣く泣く別れる、なんてあり得ない話である。
それに、本当に付きまとわれているのなら、警察か、弁護士に相談する案件である。
自分達のようなただの小娘がしゃしゃり出て、何が出来ると言うのか。本当に恵都が雛子の事を好きなら、好きな子を矢面に立たせるような真似はしないだろう。
今更ながら、稲葉は自分達が色々と間違えていた事に気付いてしまった。いや、気付けて良かったのかもしれない。
「あ、あの・・・・・・北條院、さん」
稲葉が何とか口を挿んだ。
「はい、何でしょ?」
今ならまだ間に合う、と思った稲葉はㇲッ、と立ち上がり頭を下げた。
「私たちどうやら雛子に嘘つかれてたみたいで、北條院さんの事誤解してました、本当に申し訳ありませんでした」
と、丁寧に頭を下げた。すると、山田、斎藤も慌ててそれに続いて立ち上がって頭を下げた。
「すいませんでした」
「す、すいませんでしたっ」
そして稲葉は雛子を横目で見ると、彼女をやんわりと押しのけ伝票を手に取った。
こちらを睨む雛子を、環は呆れたように見ていた。こうやって話を続けても埒が明かないのは明白で、もう話を切っても良いだろうと考えた。
それに、環は彼女達に付き合って禁煙席に座っていたので、そろそろ煙草が吸いたくなってきたのだ。
「ねえ、桜さん。 君に聞きたいんやけど、君は恵都君と結婚したい、言うけどそのコトについて恵都君自身はどう言うてるん? 勿論、ふたりで話し合ったうえで此処に居るんやんね?」
そう言うと、初めて両隣に座る友人達ははっ、としたような顔をして雛子を見た。この三人は雛子から『ケイト君が変な人に付きまとわれてる。 むりやりつき合わされてかわいそうだから、何とかして助けてあげたい。だから、手伝って欲しい』と。勿論、自身と恵都は好き合っていると言う前提でこのような事を言われ、同情した三人はこうやって付いて来たのである。
もうここまで来ると流石に雛子が嘘を言っている、と言う疑惑は濃厚だった。まだ疑惑、なのは信じたい、と言う気持ちよりも、何もかもが噓だった時自分達が被る被害の事を考えたくない、と言う所から来ているからだ。
「聞いとるよ、君らん所のゼミの先生と、恵都君所の先生とサークルの部長さん、サークルのメンバーも巻き込んで話し合いしたらしいやん?」
「・・・・・・っ!」
何故知っているのか。青い顔で雛子は環を目を見開いて凝視した。
「え、え・・・どういう事? ヒナ、話し合い、って何?」
雛子のカーディガンの裾を軽く引きながら、本当に何も知らない稲葉は雛子を見上げた。しかし雛子は稲葉の手をパシンッ、と叩いて振り払う。
「・・・・・・っ! ちょ、ヒナ・・・・・・」
言いかけた稲葉は、雛子に涙目で睨まれて言葉を詰まらせた。
何よソレ・・・・・・っ!?
あんまりな態度に、稲葉は絶句しながらも、もうコイツの味方はしないと心に決めた。
「何で知ってるんや、って顔やね。 当たり前でしょう、恵都君が全部教えてくれたんやから」
普通に考えれば、そうだろう。
「僕は恵都君の婚約者なんやから、当事者のひとりとして知ってないとおかしいよね?」
計画、と言うのもおこがましいが、雛子の中で立てていた計画がもろくも崩れ去った瞬間だった。
何も知らない環に、雛子が恵都と自分は好き合っているのだから邪魔をするなと言えば、向こうが泣く泣く離れてくれるだろうと、考えていたのだ。
実際は、真逆な事が起こって自分が涙目になっている。普通に考えれば、当たり前の話だった。雛子達よりも一回りは年上の男が、年下の女の子に言いくるめられて婚約者と泣く泣く別れる、なんてあり得ない話である。
それに、本当に付きまとわれているのなら、警察か、弁護士に相談する案件である。
自分達のようなただの小娘がしゃしゃり出て、何が出来ると言うのか。本当に恵都が雛子の事を好きなら、好きな子を矢面に立たせるような真似はしないだろう。
今更ながら、稲葉は自分達が色々と間違えていた事に気付いてしまった。いや、気付けて良かったのかもしれない。
「あ、あの・・・・・・北條院、さん」
稲葉が何とか口を挿んだ。
「はい、何でしょ?」
今ならまだ間に合う、と思った稲葉はㇲッ、と立ち上がり頭を下げた。
「私たちどうやら雛子に嘘つかれてたみたいで、北條院さんの事誤解してました、本当に申し訳ありませんでした」
と、丁寧に頭を下げた。すると、山田、斎藤も慌ててそれに続いて立ち上がって頭を下げた。
「すいませんでした」
「す、すいませんでしたっ」
そして稲葉は雛子を横目で見ると、彼女をやんわりと押しのけ伝票を手に取った。
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