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吹き荒れる雨の如く
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環は北條院家の生まれでオメガである為、政略結婚の駒として使われる事はある程度覚悟はしていたが、流石に自身の弟として見ても歳が下過ぎる恵都との婚約は恵都に対して申し訳ないなあ、と長年思っていた。
最初は、諏訪家の長男で年が一つ上の亜嵐と婚約が結ばれるはずだったのだが、色々あって一度流れた。それから三年程経ってから恵都と婚約した。
最初は子供子供した恵都だったが、最近はしっかりして来たと言うか大人っぽくなってきた。見た目は華奢だが、脱げば中々鍛え上げられた引き締まった身体つきと、大人っぽくなってきたがまだまだアイドル系のベビーフェイスと言うアンバランスさにアルファのカリスマ性が出てきて魅力度が増したのか、最近更にモテるようになってきた。
ただ遠くからキャーキャー言ってる間は良いが、色々と調べあげて(しかしそう言うのに限って、中途半端な調べ方をする)環とカレカノ的なお付き合いをしていると勘違いした女の子達が、勝手に”恵都君可哀そう物語”を作り上げてこちらに攻撃を仕掛けてくるのにはうんざりしていた。
目の前に居る彼女達はまさにその典型である。たまに恵都を大学迄車で送り迎えしているのを見たりして、色々と妄想していたのだろうが、叔父と甥だとか兄弟では無いふたりの親密さに何か気付いてしまったのだろう。
そやったらそのまま婚約まで気付いて欲しかったわ。
と、環は思った。いや、もし気付いたとしてもあらぬ方向に考えが飛びそうだから一緒かもしれない。
「えー・・・っと、桜さん・・・やったっけ?恵都君と別れて欲しいて言うてるけど、僕と恵都君は君らが思てるようなフツーのカレカノみたいなお付き合いをしてるのとは訳が違うんよ」
極力、声を荒げず穏やかに話しかけた。そしておつむに白みそか八丁味噌しか詰まってない彼女にも分かりやすいように喋ってみた。
「・・・・・・所謂婚約言うもんなんやけど・・・・・・分かる?」
両隣に座るベータの娘達はやっぱり、と言った雰囲気でハイ・・・と神妙に頷く。
「婚約言うても・・・敢えてこう言わせてもらうけど、一般人の君らがするような口約束みたいな婚約とは訳が違って、家同士で決めた事やから僕の一存では別れられないんよ」
「そんな・・・そんなのおかしいですっ!」
雛子が声を荒げた。そんなに声を荒げる場面だろうか、と環達の周辺に座るファミレス客達が怪訝な顔をした。
「イイ大人なんだから、自分達で決められないなんて変ですっ!そんなにケイト君と別れたくないんですかっ!」
・・・・・・当たり前では?と皆が思わず心の中で突っ込んでいた。
環もそう来たかー、と斜め上四十五度な発言をした雛子に遠い目をしかけた。
「困ったなあ、そんな風に言われても僕らの結婚は家同士の結婚でもあるからそう簡単には行かんのやけど」
私は○○君と結婚したのであって××家に嫁いだ訳ではありません、と啖呵を切る話をどこかで聞いたことがあるが、そんなの、どちらの家とも縁を切って自分達でやっていける者だけが言えるセリフである。
環も恵都もそんな事をしたら日本では生きていけないだろうが。
ああでもこの子やったら言いそうやなあ・・・・・・。
きっと鼻息荒くカッコ良くキメたつもりで言ってくれそうである。可愛らしいアタシがいっせいいちだいのおおみえを切って見せるのだ。大人達はきっと感心してアタシを可愛がってくれるに違いないのだ、と。
彼女はアタシは人から愛されて当然、と言うより他人に向けられた愛情を横から搔っ攫って貪る方に関心があるような気がする、と思った。
「なあ、そんなに君は恵都君と結婚したいん?」
と、思わず聞いてみた。
最初は、諏訪家の長男で年が一つ上の亜嵐と婚約が結ばれるはずだったのだが、色々あって一度流れた。それから三年程経ってから恵都と婚約した。
最初は子供子供した恵都だったが、最近はしっかりして来たと言うか大人っぽくなってきた。見た目は華奢だが、脱げば中々鍛え上げられた引き締まった身体つきと、大人っぽくなってきたがまだまだアイドル系のベビーフェイスと言うアンバランスさにアルファのカリスマ性が出てきて魅力度が増したのか、最近更にモテるようになってきた。
ただ遠くからキャーキャー言ってる間は良いが、色々と調べあげて(しかしそう言うのに限って、中途半端な調べ方をする)環とカレカノ的なお付き合いをしていると勘違いした女の子達が、勝手に”恵都君可哀そう物語”を作り上げてこちらに攻撃を仕掛けてくるのにはうんざりしていた。
目の前に居る彼女達はまさにその典型である。たまに恵都を大学迄車で送り迎えしているのを見たりして、色々と妄想していたのだろうが、叔父と甥だとか兄弟では無いふたりの親密さに何か気付いてしまったのだろう。
そやったらそのまま婚約まで気付いて欲しかったわ。
と、環は思った。いや、もし気付いたとしてもあらぬ方向に考えが飛びそうだから一緒かもしれない。
「えー・・・っと、桜さん・・・やったっけ?恵都君と別れて欲しいて言うてるけど、僕と恵都君は君らが思てるようなフツーのカレカノみたいなお付き合いをしてるのとは訳が違うんよ」
極力、声を荒げず穏やかに話しかけた。そしておつむに白みそか八丁味噌しか詰まってない彼女にも分かりやすいように喋ってみた。
「・・・・・・所謂婚約言うもんなんやけど・・・・・・分かる?」
両隣に座るベータの娘達はやっぱり、と言った雰囲気でハイ・・・と神妙に頷く。
「婚約言うても・・・敢えてこう言わせてもらうけど、一般人の君らがするような口約束みたいな婚約とは訳が違って、家同士で決めた事やから僕の一存では別れられないんよ」
「そんな・・・そんなのおかしいですっ!」
雛子が声を荒げた。そんなに声を荒げる場面だろうか、と環達の周辺に座るファミレス客達が怪訝な顔をした。
「イイ大人なんだから、自分達で決められないなんて変ですっ!そんなにケイト君と別れたくないんですかっ!」
・・・・・・当たり前では?と皆が思わず心の中で突っ込んでいた。
環もそう来たかー、と斜め上四十五度な発言をした雛子に遠い目をしかけた。
「困ったなあ、そんな風に言われても僕らの結婚は家同士の結婚でもあるからそう簡単には行かんのやけど」
私は○○君と結婚したのであって××家に嫁いだ訳ではありません、と啖呵を切る話をどこかで聞いたことがあるが、そんなの、どちらの家とも縁を切って自分達でやっていける者だけが言えるセリフである。
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ああでもこの子やったら言いそうやなあ・・・・・・。
きっと鼻息荒くカッコ良くキメたつもりで言ってくれそうである。可愛らしいアタシがいっせいいちだいのおおみえを切って見せるのだ。大人達はきっと感心してアタシを可愛がってくれるに違いないのだ、と。
彼女はアタシは人から愛されて当然、と言うより他人に向けられた愛情を横から搔っ攫って貪る方に関心があるような気がする、と思った。
「なあ、そんなに君は恵都君と結婚したいん?」
と、思わず聞いてみた。
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