こちら聴霊能事務所

璃々丸

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サバゲと廃墟と怨霊と

三.

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 何度かカメラを切り替えて行くと、最奥を映すカメラに切り替わった時に映った少年の背後から悪霊がすす、っと近付き腕を掴むのが見えた。
 少年は驚いて暴れるが、何故か逃げられず倒れてのたうち回りながら徐々に顔を真っ赤にし、そのうち黒ずんでいきながら痙攣している様子が映し出されていた。
 その間に、音声が入っていないため分からないが、多分悲鳴を聞き付けて集まったであろう仲間がその様を見て暫く唖然としていた。それから漸く一人が我に返り、一緒に居た仲間を引っ張って逃げ出した。
 それから二階と一階に居た仲間を連れて走り去っていた。そこから田中達に助けを求める所へと繋がるのだろう。
「・・・・・・で、真っ赤になった子、証言じゃ皮膚が爛れて水膨れも出来てるみたいだから多分・・・・・・」
「ああ、身体の内側から燃やされてるな」
 あの廃墟に居る怨霊は中学生で、焼身自殺をしている。いじめを苦にした自殺であった。
 ただ、自殺したのはこの廃墟では無い。なのに何故か居座っている。
、可哀そうだけど除霊するしかないね」
「ああ・・・・・・まあ、本当は最初から除霊した方が良かったんだがな」
 人が霊を呼ぶのか、霊が人を呼ぶのか。実は大きな商業施設では、幽霊が住み着いても直ぐには除霊しない場合がある。よくは分からないが不思議と集客数が上がる事があるのだと言う。
 そのせいか、今回のように悪霊は封印して人間に危害を加えられないようにして集客に繋げようとする事もある。
 当然、こう言う危険性を大いに孕んでいるし、真逆の現象も起こり得るため余りお勧めできる方法ではない。
 青司も当然その危険性は耳に胼胝たこが出来るくらい説明した。今回は天井部分の札が外されていないため、外にはまだ出ていないので人死には出はしたが、まだ被害は小さく済んでいる方だ。
 会場に辿り着くと、駐車場には参加者達が数人たむろしているのが見えた。と、同時に警察の車両も数台停まっているのが見え、三人は否応なしに別の緊張感が生まれた。
「蜜、お前先に廃墟に行け」
 兄の命令に蜜色はうん、と頷いて装備を整えた彼は半ば飛び出す様に車から出て行った。
 次に乙和が着替え始めたので青司は下りて待つ事にした。
「聴さんっ!」
 スタッフ腕章を身に着けた田中の妻、由依子が青司に近づいて来た。
「由依子さん?」
「はい、由依子です。今回はすいませんでした」
 青司が全盲である事を知っていた由依子は青司の質問にきちんと答え、次に謝罪した。
「いえ・・・・・・謝る事では無いですよ」
「でも、青司さん達は危険だって言ってくれてたのに・・・・・・」
 由依子は溜息を吐いた。暫くして、着替えを終えた乙和がエアガンを担ぎながら降りてきたので三人は連れ立って廃墟に向かった。
 廃墟には警察が待機状態で待っていた。三人が現れるとじろりと皆から睨まれるように見られる。
 バリケードテープを超えた所に、田中と蜜色がスーツ姿の刑事と立っていた。
「あ、聴さぁん・・・・・・」
 田中は情けない声を上げた。
「アンタが聴さん?」
 スーツの中年が青司をぎろりと睨んだ。ベテランの、鋭い眼光。普通の者なら震えあがるような鋭さだが、青司はどこ吹く風、とばかりに涼しい顔をしている。
 全盲だから分からない、とかではなく本当に物ともしていない感じだ。
「ええ、聴霊能事務所代表の聴青司です」
 穏やかで、聞く者を安心させる優しくも頼もしい声音で答えた。
 
 
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みんなの感想(2件)

碧絃(aoi )
2023.08.22 碧絃(aoi )

本当は新作を読んだ方がいいのかも知れない、と思いつつ、こちらを。

代金が回収できなかったのは、残念でしたね(・_・;
でも厄介ごとに巻き込まれるよりは……。
面白かったです!

2023.08.23 璃々丸

読んでくださりありがとうございます!
ほんのりギャグ風味の、不穏多めで書いてます。
続き……頑張ります(*>_<*)ノ

解除
2021.12.11 ユーザー名の登録がありません

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