7 / 7
雪解け前の雨
七.
しおりを挟む
こうしてふたりはこっそりとではあるが、先ずは友達として付き合う事が決まった。
「本当に無理だと思ったら・・・正直に言って欲しい。改善できそうな事なら直すし、ダメなら別れるから」
はっきりとそう告げて来た颯人に、ましろは好感が持てたのか大きく頷いていた。
「それなら、僕のコトも悪い所があれば教えてくださいね」
「ああ、お互い良い関係が築けるよう、頑張ろう」
そうしてその日はお互い固く手を握り合い、連絡先を交換して別れた。
ましろが家に帰り着くと携帯がタイミングよく震えたので、慌てて制服のポケットから取り出すとロック画面にリアルタイムでチャットが出来るSNSアプリから、颯人の友達招待の通知が来ている事を知らせるメッセージが。
ましろは急いでロックを外して画面を開くと、招待を受けるボタンをタップした。
すると、少しして颯人とのチャットルーム画面から今日はありがとうのメッセージがポン、と現れたのでましろもありがとうのメッセージと共に可愛い猫のイラストのスタンプを送った。
暫く玄関先で靴も脱がずにメッセージの遣り取りをしていたら、突然声を掛けられた。
「ちょっと、玄関先でなにやってんの?」
呆れを含んだ、やや険のある言い方だが確かに最もな事を言われ、ましろは慌てて靴を脱いだ。
「た、ただいま・・・夏兄。もう具合は良いの?」
二階から降りてきて、偶然居合わせたのは次兄の夏樹であった。
「ああ、まあね」
そう言ってふい、と去って行った。
「・・・・・・」
相変わらず夏樹は冷たく素っ気無い態度である。小さい頃はもう少し愛想があったような気もするが、もうそんな事も思い出せないくらいましろには無愛想な兄であった。
僕、何かしたのかな・・・・・・。
言ってくれなければ直すことも気を付ける事も出来ないのに、春人も夏樹も・・・・・・否、ましろの周りはましろに何も言ってくれない。
そう思うと、颯人のお互い歩み寄ろうとするその心がましろには沁みた。
ましろは二階に上がると自室へ向かい、制服から部屋着に着替えてダイニングに向かった。
ダイニングには既に春人も居て、夕飯の準備は整っていた。
「お帰り、ましろ」
「ただいま、春兄」
そう言いながら、ましろが食卓に着いて食事が始まった。矢張りと言うか、相変わらずお通夜のように静かな食事風景にましろは密かに嘆息していた。
夏樹はヒート開けなせいか、まだ気怠げな様子で小鳥のような量の食事を静々と食べている。
次兄の見た目は、日焼けを知らないような白肌に、本来は烏の濡れ羽色のような髪色だが今はほんのりとバイオレット味のある色に染めている。
険のある目鼻立ちをしているが、長い睫毛や日本人には珍しい、淡い空色の瞳を持っているやや女性的な印象の青年だった。
綺麗、だよね、とましろは思う。世間的に見ても美人だと大抵の者は言うだろう。実際、画像などのビジュアル要素を通じたコミュニケーションを行うSNSでは三万越えのフォロワーが居る。
実はましろもこっそりフォローしているが、夏樹の投稿はネイルだったり買った服だったりが主だが、たまに載せる自撮りだと万越えのいいねが付くので凄いと思っている。
とは言え、性格がちょっとキツイよね。
ましろには塩所か氷みたいに冷たい態度はましろも凍り付きそうである。
せめて春人のように当たり障りない態度で居てくれれば、と思うのだが、なぜこんなに自分を嫌うのか。
今はもう、自分で息をひそめて過ごすしかない。
息が詰まりそうな家が嫌なら母の居る離れへ行けば良いのだけれど、実は最近その離れから此方へ連れて来られたばかりだったのだ。
どうして離れ離れに暮らしているかと言うと、緋紗英がましろに体質に合わないヒート薬を小さな頃から飲ませていた事が判明して、そのまま一緒に暮らしているとましろの命に係わる為引き離されたのだ。
緋紗英自身も現在は、所謂精神的な安定剤等も処方されているので会いたいと言っても、具合が悪いからと言われて最近はあまり会えていない。
寂しいけど具合が悪いなら仕方ないもんね。
離れは現在緋紗英と女性のお手伝いふたり程が今は彼女の世話をしている。連絡手段は離れの内線電話だけだ。
内線に出るのはそのお手伝いの女性のどちらかで、大抵は面会を断られるので最近は連絡をしていない。
「本当に無理だと思ったら・・・正直に言って欲しい。改善できそうな事なら直すし、ダメなら別れるから」
はっきりとそう告げて来た颯人に、ましろは好感が持てたのか大きく頷いていた。
「それなら、僕のコトも悪い所があれば教えてくださいね」
「ああ、お互い良い関係が築けるよう、頑張ろう」
そうしてその日はお互い固く手を握り合い、連絡先を交換して別れた。
ましろが家に帰り着くと携帯がタイミングよく震えたので、慌てて制服のポケットから取り出すとロック画面にリアルタイムでチャットが出来るSNSアプリから、颯人の友達招待の通知が来ている事を知らせるメッセージが。
ましろは急いでロックを外して画面を開くと、招待を受けるボタンをタップした。
すると、少しして颯人とのチャットルーム画面から今日はありがとうのメッセージがポン、と現れたのでましろもありがとうのメッセージと共に可愛い猫のイラストのスタンプを送った。
暫く玄関先で靴も脱がずにメッセージの遣り取りをしていたら、突然声を掛けられた。
「ちょっと、玄関先でなにやってんの?」
呆れを含んだ、やや険のある言い方だが確かに最もな事を言われ、ましろは慌てて靴を脱いだ。
「た、ただいま・・・夏兄。もう具合は良いの?」
二階から降りてきて、偶然居合わせたのは次兄の夏樹であった。
「ああ、まあね」
そう言ってふい、と去って行った。
「・・・・・・」
相変わらず夏樹は冷たく素っ気無い態度である。小さい頃はもう少し愛想があったような気もするが、もうそんな事も思い出せないくらいましろには無愛想な兄であった。
僕、何かしたのかな・・・・・・。
言ってくれなければ直すことも気を付ける事も出来ないのに、春人も夏樹も・・・・・・否、ましろの周りはましろに何も言ってくれない。
そう思うと、颯人のお互い歩み寄ろうとするその心がましろには沁みた。
ましろは二階に上がると自室へ向かい、制服から部屋着に着替えてダイニングに向かった。
ダイニングには既に春人も居て、夕飯の準備は整っていた。
「お帰り、ましろ」
「ただいま、春兄」
そう言いながら、ましろが食卓に着いて食事が始まった。矢張りと言うか、相変わらずお通夜のように静かな食事風景にましろは密かに嘆息していた。
夏樹はヒート開けなせいか、まだ気怠げな様子で小鳥のような量の食事を静々と食べている。
次兄の見た目は、日焼けを知らないような白肌に、本来は烏の濡れ羽色のような髪色だが今はほんのりとバイオレット味のある色に染めている。
険のある目鼻立ちをしているが、長い睫毛や日本人には珍しい、淡い空色の瞳を持っているやや女性的な印象の青年だった。
綺麗、だよね、とましろは思う。世間的に見ても美人だと大抵の者は言うだろう。実際、画像などのビジュアル要素を通じたコミュニケーションを行うSNSでは三万越えのフォロワーが居る。
実はましろもこっそりフォローしているが、夏樹の投稿はネイルだったり買った服だったりが主だが、たまに載せる自撮りだと万越えのいいねが付くので凄いと思っている。
とは言え、性格がちょっとキツイよね。
ましろには塩所か氷みたいに冷たい態度はましろも凍り付きそうである。
せめて春人のように当たり障りない態度で居てくれれば、と思うのだが、なぜこんなに自分を嫌うのか。
今はもう、自分で息をひそめて過ごすしかない。
息が詰まりそうな家が嫌なら母の居る離れへ行けば良いのだけれど、実は最近その離れから此方へ連れて来られたばかりだったのだ。
どうして離れ離れに暮らしているかと言うと、緋紗英がましろに体質に合わないヒート薬を小さな頃から飲ませていた事が判明して、そのまま一緒に暮らしているとましろの命に係わる為引き離されたのだ。
緋紗英自身も現在は、所謂精神的な安定剤等も処方されているので会いたいと言っても、具合が悪いからと言われて最近はあまり会えていない。
寂しいけど具合が悪いなら仕方ないもんね。
離れは現在緋紗英と女性のお手伝いふたり程が今は彼女の世話をしている。連絡手段は離れの内線電話だけだ。
内線に出るのはそのお手伝いの女性のどちらかで、大抵は面会を断られるので最近は連絡をしていない。
20
お気に入りに追加
49
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

使命を全うするために俺は死にます。
あぎ
BL
とあることで目覚めた主人公、「マリア」は悪役というスペックの人間だったことを思い出せ。そして悲しい過去を持っていた。
とあることで家族が殺され、とあることで婚約破棄をされ、その婚約破棄を言い出した男に殺された。
だが、この男が大好きだったこともしかり、その横にいた女も好きだった
なら、昔からの使命である、彼らを幸せにするという使命を全うする。
それが、みなに忘れられても_


どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。
彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。
だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。
どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。


前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。


囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる