春まだ遠く

 鷹藤ましろはオメガだ。
 オメガはアルファ優位社会に於いてその希少性から大事に扱われるはずなのに、しかしましろの周囲は彼に対して冷たくよそよそしい。
 長男でアルファの春人は優しいが常に味方では無いし、次男でオメガの夏樹はあからさまに刺々しく接して来る。
 そして父親は仕事にかまけて帰って来ないしたまに会えば高圧的で怖いばかりだ。
 唯一の味方は母親だけ。

 皆から虐げられながらも、健気に生きてきたましろの前にひとりのアルファの青年が現れた。

 彼はましろが小さな頃、幼馴染同士だった親達が「お互い子供が生まれたら結婚させよう」と言う約束の為に婚約した者同士だったと言う。

 しかし彼────本城颯人がましろに大怪我をさせて婚約は半ば立ち消え、出禁になった。

 それから颯人は心身を鍛え、大きくなったらもう一度謝って関係をやり直したいと思って頑張ってきた事を真摯に訴えてきた。

 それを聞いて心打たれたましろはその気持ちに応えるべく、許して颯人と関係を再構築する為周囲には内緒で付き合い始める。

 初めて自分をちゃんとオメガとして認め、付き合ってくれる颯人にどんどん惹かれていくましろ。

 しかし、周囲はそんなふたりに冷たい現実を突き付けるのであった────。
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