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薄氷の上でワルツを
七十.
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冬休みに入って最初の土曜日。
ルイスは休みの筈なのに、朝早くから自室の姿見の前で身に着けた制服の身だしなみのチェックをしていた。
「・・・・・・うん、イイ感じ」
満足気に頷いて姿見から離れた。今日はエリカが世話になっている教会へ行き、その隣に併設されている孤児院に居る子供達の世話をしに行く日なのだ。
カルロは居ないが、一応心優しい女の子を演じる為仕方なく行くのである。
今日は何時もより少し早い時間を指定して来たので、遅刻しない様にわざわざ早起きをしてこうして準備していた。さあ、さっさと朝食をとって家を出ないといけない。
自室を出てダイニングへと向かうと既に両親も朝食を取ろうとしていた所だった。
「おはよう。パパ、ママ」
両親に挨拶をしてテーブルに着く。するとこの家の使用人の少女がルイスの前に紅茶、固焼きの目玉焼きとリンゴの入ったソーセージ、カリカリに焼いたベーコン。それから焼きトマトとマッシュルームにベイクドビーンズが乗った皿とトーストしたパンを一度に並べるとさっさと下がって行った。
ボリューミーな朝食だが、ルイスはソーセージや焼きトマトをひょいひょいと口に運んで行った。
そして全てをきれいに平らげてしまうと、軽やかに立ち上がった。
「・・・、っさて! じゃあ行ってきます」
「ああ、気を付けて行っておいで」
「あまり日が暮れないうちに帰って来るのよ」
ゆっくりと朝食を取る両親に声を掛けられながら、ルイスは家を出た。
綺麗に舗装された道を歩きながら、遠くに見える時計塔の時刻を見てまだ余裕がある事を確認してルイスは腹ごなししながら歩く。
取り敢えず、今日は子供達の相手で一日が潰れるだろう。
ああ言うところのゴハン、って質素で美味しくないんだよね。
舌の肥えたルイスは今日の昼食を思って唇を尖らせる。どうせ野菜くずとベーコンの欠片が入った薄いスープと黒パンだ。それに糞餓鬼の相手だって本当はしたくない。
ああ、こんなコトが無ければ今日は新しくできたスィーツの専門店へ行ってプティフールを摘まんだり、新しいワンピースを買いにだって行きたかったのに、と内心嘆いていた。
若くて綺麗な少女の身体を手に入れたルイス事魔女は、なんだかんだ言って大いに現状を謳歌していた。
やっぱりカルロに取り入るのを止めて適当な所で聖女の適正はありませんでした、と結果を出してアルバーノと手を切ろうかしらとまた考え始めていた。
女王何て柄ではないのだ。贅沢は好きだが女王になる事で伴う責任何て背負いたくない。
魔女はそれなりに生きてきて、貴族や王族がただ何もしないで贅の限りを尽くして良い生活をしている、なんて思っていないしどんなものかも知っている。
ただ人の不幸の手伝いや、大きな出来事を引っ掻き回すのが好きで今回嘴を突っ込んでみただけなのだ。
それで美味しい思いも出来たら最高だと。ただそれだけだった。
「え・・・・・・アレ、って」
そろそろ教会が見えてくる頃、簡単に木の枝で組み合わせた柵の前に豪華な馬車が乗り付けられていた。
白と金を基調にした馬車は王国所有の馬車だ。
カルロが来るとは聞いていないが、急に来る気になったのだろうかなどと暢気な事を考えながら近付くとエリカや子供達も馬車の近くに居るのが見えた。
「おはようございます、ルイスさん!」
「おはようございますエリカ先輩」
朝からテンション高いなあ、とルイスは半ば呆れながらエリカに近付いた。
「今日はカルロ殿下が来られてるんですか?」
と聞けばエリカはうふふと笑うと、ルイスの手を引いて馬車に乗るよう促してきた。
「え、えっ?何処に行くんですか」
焦るルイスに城からの迎えに来た御者が手を差し出し、乗り込むサポートをしてくれた。その際、やけににこにこしているのが引っ掛かったが大人しく乗り込んだ。
ルイスが座席に座るとエリカも乗って来た。そしてエリカの合図で馬車は舗装されていない道をゴトゴトと走り出す。
「エリカ先輩、今日は何かあるんですか?」
ルイスは焦れた様に、隣に座るエリカに聞いてみた。すると、エリカはルイスの手を取りにっこりと微笑んだ。
「今日は何と、貴女の聖女認定の儀をアマデオ司祭様がして下さる事になったんですよっ!」
アマデオ司祭が誰なのか、とか今日儀式をするだとかそんなの一切聞いていないルイスは素で叫んでいた。
「・・・、っはぁあああああっっっ!?」
今直ぐこの馬車から飛び降りたい衝動に駆られたが、そんな事が出来る訳も無くルイスは城へと運ばれて行った。
ルイスは休みの筈なのに、朝早くから自室の姿見の前で身に着けた制服の身だしなみのチェックをしていた。
「・・・・・・うん、イイ感じ」
満足気に頷いて姿見から離れた。今日はエリカが世話になっている教会へ行き、その隣に併設されている孤児院に居る子供達の世話をしに行く日なのだ。
カルロは居ないが、一応心優しい女の子を演じる為仕方なく行くのである。
今日は何時もより少し早い時間を指定して来たので、遅刻しない様にわざわざ早起きをしてこうして準備していた。さあ、さっさと朝食をとって家を出ないといけない。
自室を出てダイニングへと向かうと既に両親も朝食を取ろうとしていた所だった。
「おはよう。パパ、ママ」
両親に挨拶をしてテーブルに着く。するとこの家の使用人の少女がルイスの前に紅茶、固焼きの目玉焼きとリンゴの入ったソーセージ、カリカリに焼いたベーコン。それから焼きトマトとマッシュルームにベイクドビーンズが乗った皿とトーストしたパンを一度に並べるとさっさと下がって行った。
ボリューミーな朝食だが、ルイスはソーセージや焼きトマトをひょいひょいと口に運んで行った。
そして全てをきれいに平らげてしまうと、軽やかに立ち上がった。
「・・・、っさて! じゃあ行ってきます」
「ああ、気を付けて行っておいで」
「あまり日が暮れないうちに帰って来るのよ」
ゆっくりと朝食を取る両親に声を掛けられながら、ルイスは家を出た。
綺麗に舗装された道を歩きながら、遠くに見える時計塔の時刻を見てまだ余裕がある事を確認してルイスは腹ごなししながら歩く。
取り敢えず、今日は子供達の相手で一日が潰れるだろう。
ああ言うところのゴハン、って質素で美味しくないんだよね。
舌の肥えたルイスは今日の昼食を思って唇を尖らせる。どうせ野菜くずとベーコンの欠片が入った薄いスープと黒パンだ。それに糞餓鬼の相手だって本当はしたくない。
ああ、こんなコトが無ければ今日は新しくできたスィーツの専門店へ行ってプティフールを摘まんだり、新しいワンピースを買いにだって行きたかったのに、と内心嘆いていた。
若くて綺麗な少女の身体を手に入れたルイス事魔女は、なんだかんだ言って大いに現状を謳歌していた。
やっぱりカルロに取り入るのを止めて適当な所で聖女の適正はありませんでした、と結果を出してアルバーノと手を切ろうかしらとまた考え始めていた。
女王何て柄ではないのだ。贅沢は好きだが女王になる事で伴う責任何て背負いたくない。
魔女はそれなりに生きてきて、貴族や王族がただ何もしないで贅の限りを尽くして良い生活をしている、なんて思っていないしどんなものかも知っている。
ただ人の不幸の手伝いや、大きな出来事を引っ掻き回すのが好きで今回嘴を突っ込んでみただけなのだ。
それで美味しい思いも出来たら最高だと。ただそれだけだった。
「え・・・・・・アレ、って」
そろそろ教会が見えてくる頃、簡単に木の枝で組み合わせた柵の前に豪華な馬車が乗り付けられていた。
白と金を基調にした馬車は王国所有の馬車だ。
カルロが来るとは聞いていないが、急に来る気になったのだろうかなどと暢気な事を考えながら近付くとエリカや子供達も馬車の近くに居るのが見えた。
「おはようございます、ルイスさん!」
「おはようございますエリカ先輩」
朝からテンション高いなあ、とルイスは半ば呆れながらエリカに近付いた。
「今日はカルロ殿下が来られてるんですか?」
と聞けばエリカはうふふと笑うと、ルイスの手を引いて馬車に乗るよう促してきた。
「え、えっ?何処に行くんですか」
焦るルイスに城からの迎えに来た御者が手を差し出し、乗り込むサポートをしてくれた。その際、やけににこにこしているのが引っ掛かったが大人しく乗り込んだ。
ルイスが座席に座るとエリカも乗って来た。そしてエリカの合図で馬車は舗装されていない道をゴトゴトと走り出す。
「エリカ先輩、今日は何かあるんですか?」
ルイスは焦れた様に、隣に座るエリカに聞いてみた。すると、エリカはルイスの手を取りにっこりと微笑んだ。
「今日は何と、貴女の聖女認定の儀をアマデオ司祭様がして下さる事になったんですよっ!」
アマデオ司祭が誰なのか、とか今日儀式をするだとかそんなの一切聞いていないルイスは素で叫んでいた。
「・・・、っはぁあああああっっっ!?」
今直ぐこの馬車から飛び降りたい衝動に駆られたが、そんな事が出来る訳も無くルイスは城へと運ばれて行った。
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