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薄氷の上でワルツを
六十七.
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暫くこれと言った動きのないまま月日は過ぎて、また冬がやって来た。
モディーリアの司祭が視察に来る日が漸く決まり、冬休みの少し前に視察に来るらしい事を聞いた。
「多分、冬休みの間に聖女判定の儀式をして、春花祭の頃に聖女の発表をしたいのでしょう」
教師の姿に扮したベリアドが推測を言う。
今、グィードは学園のカフェテリアで昼食をとっていた。学園の関係者であれば無料で利用できるので、沢山の生徒と共に教師も食事中だ。
だから教師めいた堅苦しい雰囲気のベリアドがしれっと混じってグィードと食事をしていても、誰もいちいち詮索をしなかった。
「ああ、成程・・・・・・ラウラの時に味を占めたんですかね? お祭りに乗じて派手に発表するのはありですね」
確かに、春花祭の頃に大々的にルイスの聖女認定を発表して、更にカルロとの婚約を結ぶ事が出来れば王国側としては完璧だろう。
ダリオとラウラの婚約発表の時も随分と盛り上がったのだ。次期国王であるカルロならばもっと盛り上がる筈だ。
しかし、グィードはその発表の前に全ての方を付ける積もりでいた。そう、自分が学園を卒業する前に全てを終わらせる気だった。
幸いな事に、カルロから聖女認定の儀に招待されたのだ。
ルイスを祝福するのに人数が多い事に越したことは無い、と言う事だそうで。
大臣職に就いている者、伯爵位以上の一部の貴族だけを呼んでいると教えてくれた。其処には勿論グィードとその父親でありバルディーニ家当主、ジュリオもそこに入っている。
もう既に招待状を受け取り、返信もした。
「当日が楽しみだなあ」
くすくすと忍び笑いを零しながら、彼から見て斜め前の席に座る三人をちらりと見やる。
三人は今日も仲良くカフェテリアで昼食をとっていた。グィードは少し離れた場所でその様子を見ていた。
相変わらず三人は仲睦まじくしている。
当日エリカがルイスを教会迄呼び出し、馬車に乗せて王城迄連れて来ると言う筋書きだと言う事もカルロはペラペラと喋った。
今迄さんざん敵視してくれていたと言うのに、今では随分と信用してくれているようだ。
まあ、敵視していたのはもう既に亡きあのふたりでカルロはどう考えていたのか分からないのだけれど。
グィードは気付いていないが、本人の人当たりの良さに加えて悪魔と契約したことにより無意識の魅了の様な力を発していた。本来であれば本人が気を付けなければ前の時間軸での学園全体を覆っていたルイスの瘴気の様になってしまうのだけれど、悪魔達が側に居てグィードの力をコントロールしている為そうはならない様にしていた。
しかし、極わずかに漏れる様にしている為に沢山の人間が徐々に魅了されてきている。
もしも必要とあらば魅了した人間を使って何なりとできる様にしている最中であった。本人は嫌がるだろうが、悪魔達からすればある種の保険のようなものの積もりで居た。
もし、グィードがその気になればこの場に居る者全員が彼の命令ひとつで生きるも死ぬも自由自在に操れる事だろう。
勿論、そんな事が起きないよう祈るばかりだ。
モディーリアの司祭が視察に来る日が漸く決まり、冬休みの少し前に視察に来るらしい事を聞いた。
「多分、冬休みの間に聖女判定の儀式をして、春花祭の頃に聖女の発表をしたいのでしょう」
教師の姿に扮したベリアドが推測を言う。
今、グィードは学園のカフェテリアで昼食をとっていた。学園の関係者であれば無料で利用できるので、沢山の生徒と共に教師も食事中だ。
だから教師めいた堅苦しい雰囲気のベリアドがしれっと混じってグィードと食事をしていても、誰もいちいち詮索をしなかった。
「ああ、成程・・・・・・ラウラの時に味を占めたんですかね? お祭りに乗じて派手に発表するのはありですね」
確かに、春花祭の頃に大々的にルイスの聖女認定を発表して、更にカルロとの婚約を結ぶ事が出来れば王国側としては完璧だろう。
ダリオとラウラの婚約発表の時も随分と盛り上がったのだ。次期国王であるカルロならばもっと盛り上がる筈だ。
しかし、グィードはその発表の前に全ての方を付ける積もりでいた。そう、自分が学園を卒業する前に全てを終わらせる気だった。
幸いな事に、カルロから聖女認定の儀に招待されたのだ。
ルイスを祝福するのに人数が多い事に越したことは無い、と言う事だそうで。
大臣職に就いている者、伯爵位以上の一部の貴族だけを呼んでいると教えてくれた。其処には勿論グィードとその父親でありバルディーニ家当主、ジュリオもそこに入っている。
もう既に招待状を受け取り、返信もした。
「当日が楽しみだなあ」
くすくすと忍び笑いを零しながら、彼から見て斜め前の席に座る三人をちらりと見やる。
三人は今日も仲良くカフェテリアで昼食をとっていた。グィードは少し離れた場所でその様子を見ていた。
相変わらず三人は仲睦まじくしている。
当日エリカがルイスを教会迄呼び出し、馬車に乗せて王城迄連れて来ると言う筋書きだと言う事もカルロはペラペラと喋った。
今迄さんざん敵視してくれていたと言うのに、今では随分と信用してくれているようだ。
まあ、敵視していたのはもう既に亡きあのふたりでカルロはどう考えていたのか分からないのだけれど。
グィードは気付いていないが、本人の人当たりの良さに加えて悪魔と契約したことにより無意識の魅了の様な力を発していた。本来であれば本人が気を付けなければ前の時間軸での学園全体を覆っていたルイスの瘴気の様になってしまうのだけれど、悪魔達が側に居てグィードの力をコントロールしている為そうはならない様にしていた。
しかし、極わずかに漏れる様にしている為に沢山の人間が徐々に魅了されてきている。
もしも必要とあらば魅了した人間を使って何なりとできる様にしている最中であった。本人は嫌がるだろうが、悪魔達からすればある種の保険のようなものの積もりで居た。
もし、グィードがその気になればこの場に居る者全員が彼の命令ひとつで生きるも死ぬも自由自在に操れる事だろう。
勿論、そんな事が起きないよう祈るばかりだ。
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