復讐はショコラよりも甘い

璃々丸

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天国への階段を下りる

四十一.

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  その日、バルディーニ邸では朝からラウラだけでなく、グィードもガーデンパーティーに参加する為の準備で忙しそうにしていた。
 トレンティノ王国王妃、アナスタージアからのガーデンパーティーの招待を兄妹で受けたのだ。
 一体何故、とグィードは思ったがよくよく考えれば、自分の息子の親友とトラブルを起こした相手である。釘を刺す為か、或いはどんな相手か見極める為だろうなと考えた。
 それに、妹の方は未来の王子妃になるかもしれない娘である。王妃にしてみれば、見極める必要がある話だった。
 パーティーは、兄妹だけでなく上位貴族の令息令嬢がほぼ呼ばれているらしい。
 自分達は今日、トレンティノ王国の貴族達からどの様なものか見定められる、と言う事になる。
 好きなだけ見定めたら良いさ。
 グィードは隙や弱みを見せたりはしないし、自分が悪いと言う証拠は何処にも無いからだ。
 今日のグィードは、ラウラと色を合わせて白いジャケットにその下はブルーグリーンのベスト。そして白いスラックスを履いていた。
 ラウラはブルーグリーンのドレスにサファイアのアクセサリーも付けていた。
 そしてこのブルーグリーン、実はバルディーニ家の色でもあった。侯爵、又は公爵家は王族と並ぶ権力を持っている者や王家の血筋の者も居る為、王族以外は使えない『ロイヤルブルー』に並ぶ侯爵(公爵)家にしか使えないカラーが存在した。
 バルディーニ家の場合はこのブルーグリーンである。
 深く濃い色合いのそれはバルディーニ家の者だけが使うことを許されたカラーだ。なのでバルディーニ家以外は絶対使ってはならないので、もし、使ってしまった場合はバルディーニ家を騙った罪などで詐欺罪、又は不敬罪で処せられる事になる。
 ふたりが準備を終え、玄関ホールに向かうとジュリオが現れた。
「ふたり共、気を付けて行ってきなさい」
「はい、お父様」
「行ってきます、父上」
 父に見送られ、ふたりは馬車に乗り込み王城へと向かった。
 盛夏の候、梅雨が明け、もう既に夏本番と言った暑さが照り付けている今、このお茶会がどのようなものになるのかグィードにも分からなかった。
 何せ前回は招待されなかったので、未知の経験になるからだ。
「やれやれ、とんでもない暑さだな・・・・・・」
 うんざりするように呟くと、ラウラはせめてもの慰めの積もりか、お茶会の内容を教えてくれた。
「こちらはこの時期お庭でお茶会が主流らしいけど、魔法でウォーターカーテンを作ったり、最近はアイスティーも流行りらしいから少しは涼しく過ごせるかも?」
「だと良いんだけど・・・・・・」
 兄妹はどちらかと言えば寒い国の出身である為、この時期の此方の暑さはと言う事になる。
 はどうだったかな・・・・・・。
 矢張りうんざりしていた記憶はある。
 学園に通っていた頃は、衣替えで夏場は半袖シャツと言う軽装で過ごしていた為暑苦しさは軽減されていたが、それでも皮膚を刺す様な暑さには慣れそうにも無いと思ったのだった。
 城に着き、ふたりが案内されたのは王妃所有の庭であった。
 普段は解放されておらず、この様な特別な時にだけ、開放されるらしい。
 濃い緑と涼やかな白い花々が咲く庭は、ラウラの言う通りウォーターカーテンがそよと吹くぬるい風を涼風に変えて思いの外涼しい。
 ふたりが入場すると、人々の視線が一斉に此方を向いた。不躾で、容赦ない視線が一瞬向いたが次の瞬間には皆が息を呑んだ。
 透き通るような、涼やかな白い肌と艶やかでエキゾチックな黒髪。そして珍しい紫眼に皆が魅入られた。
「まあ・・・バルディーニ侯爵令息は髪を切ってしまわれたのね」
「素敵なお髪でしたのに、もったいないですわ」
 大抵の貴族は、彼がトレンティノ王国で行われた受勲式でグィードの姿を見ている。
 白とブルーグリーンを基調とした軍服の正装に、その時グィードの髪は背中までのロングヘアーであったのだ。
「まるで暑さを知らないみたい! なんて涼し気な方なのかしら」
「こんなに近くでお目にかかれるなんて・・・・・・ご覧になって? あの紫眼、なんて珍しいのかしら!」
 令嬢達は遠くから値踏みしながら、グィードの美しさに嫉妬と羨望の入り混じった秋波を送るのであった。
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