43 / 83
天国への階段を下りる
四十一.
しおりを挟む
その日、バルディーニ邸では朝からラウラだけでなく、グィードもガーデンパーティーに参加する為の準備で忙しそうにしていた。
トレンティノ王国王妃、アナスタージアからのガーデンパーティーの招待を兄妹で受けたのだ。
一体何故、とグィードは思ったがよくよく考えれば、自分の息子の親友とトラブルを起こした相手である。釘を刺す為か、或いはどんな相手か見極める為だろうなと考えた。
それに、妹の方は未来の王子妃になるかもしれない娘である。王妃にしてみれば、見極める必要がある話だった。
パーティーは、兄妹だけでなく上位貴族の令息令嬢がほぼ呼ばれているらしい。
自分達は今日、トレンティノ王国の貴族達からどの様なものか見定められる、と言う事になる。
好きなだけ見定めたら良いさ。
グィードは隙や弱みを見せたりはしないし、自分が悪いと言う証拠は何処にも無いからだ。
今日のグィードは、ラウラと色を合わせて白いジャケットにその下はブルーグリーンのベスト。そして白いスラックスを履いていた。
ラウラはブルーグリーンのドレスにサファイアのアクセサリーも付けていた。
そしてこのブルーグリーン、実はバルディーニ家の色でもあった。侯爵、又は公爵家は王族と並ぶ権力を持っている者や王家の血筋の者も居る為、王族以外は使えない『ロイヤルブルー』に並ぶ侯爵(公爵)家にしか使えないカラーが存在した。
バルディーニ家の場合はこのブルーグリーンである。
深く濃い色合いのそれはバルディーニ家の者だけが使うことを許されたカラーだ。なのでバルディーニ家以外は絶対使ってはならないので、もし、使ってしまった場合はバルディーニ家を騙った罪などで詐欺罪、又は不敬罪で処せられる事になる。
ふたりが準備を終え、玄関ホールに向かうとジュリオが現れた。
「ふたり共、気を付けて行ってきなさい」
「はい、お父様」
「行ってきます、父上」
父に見送られ、ふたりは馬車に乗り込み王城へと向かった。
盛夏の候、梅雨が明け、もう既に夏本番と言った暑さが照り付けている今、初めて行く王妃のこのお茶会がどのようなものになるのかグィードにも分からなかった。
何せ前回は招待されなかったので、未知の経験になるからだ。
「やれやれ、とんでもない暑さだな・・・・・・」
うんざりするように呟くと、ラウラはせめてもの慰めの積もりか、お茶会の内容を教えてくれた。
「こちらはこの時期お庭でお茶会が主流らしいけど、魔法でウォーターカーテンを作ったり、最近はアイスティーも流行りらしいから少しは涼しく過ごせるかも?」
「だと良いんだけど・・・・・・」
兄妹はどちらかと言えば寒い国の出身である為、この時期の此方の暑さは今年が初体験と言う事になる。
前の時はどうだったかな・・・・・・。
矢張りうんざりしていた記憶はある。
学園に通っていた頃は、衣替えで夏場は半袖シャツと言う軽装で過ごしていた為暑苦しさは軽減されていたが、それでも皮膚を刺す様な暑さには慣れそうにも無いと思ったのだった。
城に着き、ふたりが案内されたのは王妃所有の庭であった。
普段は解放されておらず、この様な特別な時にだけ、開放されるらしい。
濃い緑と涼やかな白い花々が咲く庭は、ラウラの言う通りウォーターカーテンがそよと吹くぬるい風を涼風に変えて思いの外涼しい。
ふたりが入場すると、人々の視線が一斉に此方を向いた。不躾で、容赦ない視線が一瞬向いたが次の瞬間には皆が息を呑んだ。
透き通るような、涼やかな白い肌と艶やかでエキゾチックな黒髪。そして珍しい紫眼に皆が魅入られた。
「まあ・・・バルディーニ侯爵令息は髪を切ってしまわれたのね」
「素敵なお髪でしたのに、もったいないですわ」
大抵の貴族は、彼がトレンティノ王国で行われた受勲式でグィードの姿を見ている。
白とブルーグリーンを基調とした軍服の正装に、その時グィードの髪は背中までのロングヘアーであったのだ。
「まるで暑さを知らないみたい! なんて涼し気な方なのかしら」
「こんなに近くでお目にかかれるなんて・・・・・・ご覧になって? あの紫眼、なんて珍しいのかしら!」
令嬢達は遠くから値踏みしながら、グィードの美しさに嫉妬と羨望の入り混じった秋波を送るのであった。
トレンティノ王国王妃、アナスタージアからのガーデンパーティーの招待を兄妹で受けたのだ。
一体何故、とグィードは思ったがよくよく考えれば、自分の息子の親友とトラブルを起こした相手である。釘を刺す為か、或いはどんな相手か見極める為だろうなと考えた。
それに、妹の方は未来の王子妃になるかもしれない娘である。王妃にしてみれば、見極める必要がある話だった。
パーティーは、兄妹だけでなく上位貴族の令息令嬢がほぼ呼ばれているらしい。
自分達は今日、トレンティノ王国の貴族達からどの様なものか見定められる、と言う事になる。
好きなだけ見定めたら良いさ。
グィードは隙や弱みを見せたりはしないし、自分が悪いと言う証拠は何処にも無いからだ。
今日のグィードは、ラウラと色を合わせて白いジャケットにその下はブルーグリーンのベスト。そして白いスラックスを履いていた。
ラウラはブルーグリーンのドレスにサファイアのアクセサリーも付けていた。
そしてこのブルーグリーン、実はバルディーニ家の色でもあった。侯爵、又は公爵家は王族と並ぶ権力を持っている者や王家の血筋の者も居る為、王族以外は使えない『ロイヤルブルー』に並ぶ侯爵(公爵)家にしか使えないカラーが存在した。
バルディーニ家の場合はこのブルーグリーンである。
深く濃い色合いのそれはバルディーニ家の者だけが使うことを許されたカラーだ。なのでバルディーニ家以外は絶対使ってはならないので、もし、使ってしまった場合はバルディーニ家を騙った罪などで詐欺罪、又は不敬罪で処せられる事になる。
ふたりが準備を終え、玄関ホールに向かうとジュリオが現れた。
「ふたり共、気を付けて行ってきなさい」
「はい、お父様」
「行ってきます、父上」
父に見送られ、ふたりは馬車に乗り込み王城へと向かった。
盛夏の候、梅雨が明け、もう既に夏本番と言った暑さが照り付けている今、初めて行く王妃のこのお茶会がどのようなものになるのかグィードにも分からなかった。
何せ前回は招待されなかったので、未知の経験になるからだ。
「やれやれ、とんでもない暑さだな・・・・・・」
うんざりするように呟くと、ラウラはせめてもの慰めの積もりか、お茶会の内容を教えてくれた。
「こちらはこの時期お庭でお茶会が主流らしいけど、魔法でウォーターカーテンを作ったり、最近はアイスティーも流行りらしいから少しは涼しく過ごせるかも?」
「だと良いんだけど・・・・・・」
兄妹はどちらかと言えば寒い国の出身である為、この時期の此方の暑さは今年が初体験と言う事になる。
前の時はどうだったかな・・・・・・。
矢張りうんざりしていた記憶はある。
学園に通っていた頃は、衣替えで夏場は半袖シャツと言う軽装で過ごしていた為暑苦しさは軽減されていたが、それでも皮膚を刺す様な暑さには慣れそうにも無いと思ったのだった。
城に着き、ふたりが案内されたのは王妃所有の庭であった。
普段は解放されておらず、この様な特別な時にだけ、開放されるらしい。
濃い緑と涼やかな白い花々が咲く庭は、ラウラの言う通りウォーターカーテンがそよと吹くぬるい風を涼風に変えて思いの外涼しい。
ふたりが入場すると、人々の視線が一斉に此方を向いた。不躾で、容赦ない視線が一瞬向いたが次の瞬間には皆が息を呑んだ。
透き通るような、涼やかな白い肌と艶やかでエキゾチックな黒髪。そして珍しい紫眼に皆が魅入られた。
「まあ・・・バルディーニ侯爵令息は髪を切ってしまわれたのね」
「素敵なお髪でしたのに、もったいないですわ」
大抵の貴族は、彼がトレンティノ王国で行われた受勲式でグィードの姿を見ている。
白とブルーグリーンを基調とした軍服の正装に、その時グィードの髪は背中までのロングヘアーであったのだ。
「まるで暑さを知らないみたい! なんて涼し気な方なのかしら」
「こんなに近くでお目にかかれるなんて・・・・・・ご覧になって? あの紫眼、なんて珍しいのかしら!」
令嬢達は遠くから値踏みしながら、グィードの美しさに嫉妬と羨望の入り混じった秋波を送るのであった。
12
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
婚約破棄された俺の農業異世界生活
深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」
冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生!
庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。
そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。
皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。
(ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中)
(第四回fujossy小説大賞エントリー中)
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる