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天国への階段を下りる
四十.
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「どういう事ですか! オーリが・・・オルランドが死んだ!?」
信じられない事を聞いてラウルは思わず大きな声が出た。
時刻は既に夜半を過ぎていたが、先程漸く城から帰って来た父のジャンパオロに叩き起こされてラウルは寝巻のまま彼の執務室に渋々向かい、オルランドが亡くなった事を聞かされた。
「どうもこうもあるまい、お前がオルランドを死地へと向かわせたのであろうが」
半ば呆れる父の言葉にラウルは目を見開く。
「そんな・・・・・・私は・・・・・・っ」
「そんなつもりは無かった、か? ならば尚、たちが悪い。 貴様の中途半端な知識のせいでオルランドが死んだのだからな」
ジャンパオロにそう責められ、ラウルは唇と拳を震わせた。
「もうこれ以上余計な事をするな、城に上がる事は暫くは禁止だ」
「そ、そんなっ! 酷いです父上っ!」
半ば泣きそうな声でそう言うと、ジャンパオロに凄まじい形相で睨まれた。
「何が酷い、だ! 酷いのは貴様の方だラウルッ! こう言えば少しは反省するかと思ったが、そんな気配すら見せないとは何様なんだっ!」
そう、本来なら父親に謹慎を言い渡されたのなら、大人しく聞き入れるべきだったのだ。
それなのに城に行けない事を嘆く様な事を言ってしまったラウルは、更にジャンパオロの逆鱗に触れた。
「いいか、これ以上何かをするつもりでいるのなら、貴様を除籍するからそのつもりで居ろ!」
ショックで顔色を青白くさせながら、下がれと言われてふらふらと出て行った息子の後ろ姿を、忌々しいモノを見る様な目で見送ったジャンパオロは、疲れ切ったような顔でどさりと椅子に座り込んだ。
ある意味、ラウルのその中途半端な作戦のお陰でオルランドの実家であるブランツォーニ家は助かったとも言える。本来であれば、家長のファウスティーノと長男エットレの首を差し出さねばならなかったかもしれないのを、オルランドが自身の命で以って責任を取った事でバルディーニ家は引き下がってくれたのである。
しかし、だからと言ってよくやった等と言えるような話ではないから、出来る事ならばこれ以上は大人しくしていて欲しいのだが・・・・・・。
無理だろうな・・・・・・。
我が息子ながら信用ならない。本当に、彼が嫡男でなくて良かったなどと思うだなんて父親として酷い話である。
しかし、絶対に何かをしでかす未来しか見えないので、除籍を視野に入れて動かねばならないだろう。
今のうちに除籍届の準備をしておくか。
ジャンパオロは目を閉じながら深く溜息を吐いた。
ラウルはひとり、青い顔でふらふらと廊下を歩いていた。
そんな、お城に行くなだなんて・・・・・・。
無条件に城に行け、第一王子とは兄弟のようにして育った事をアイデンティティとしてきたラウルには相当なショックだったようだ。
クソッ・・・!それもこれも、オルランドがもっとしっかりしてくれてたら・・・・・・!
相手が色々な面に於いて自分よりも格上である、と言う考えが何故か抜け落ちているラウルは親指の爪をギリギリと噛み締め、ついには指先から血が滲み始める。
クソッ、クソッ、クソ・・・・・・ッ!アイツのせいだッ!
何がなんでもやり込めてやる、否、寧ろ殺してやる、と殺意を漲らせはじめた。何故こんなにもグィードが憎いのか、疑問に思う事も無く憎しみを募らせる。
今度は殿下を使う訳には行かないから・・・・・・この僕が直々に相手してやる。
その為にはグィードを陥れる情報が必要であった。どんな些細な事でも良い、兎に角情報を集める必要がある。
良し、やることは決まった。どうせ父上は何だかんだ言って動かないに決まってるからな。
にたり、と粘着質な笑みを浮かべて、暗い廊下に立ち尽くしていたラウルは歩き出す。しかしラウルは気付いていなかった。彼の背後、自分の影が動いていない事に。
ラウルが部屋に消えた後も、影はそのまま暫く廊下に留まっていたが、不意に、ゆらりと動いてムクムクと形を変えてひとりの男の姿になった。魁偉な男の形をした影はススッ、と静かに動いて物陰へと溶け込み、そのまま、何処かへと帰って行った。
信じられない事を聞いてラウルは思わず大きな声が出た。
時刻は既に夜半を過ぎていたが、先程漸く城から帰って来た父のジャンパオロに叩き起こされてラウルは寝巻のまま彼の執務室に渋々向かい、オルランドが亡くなった事を聞かされた。
「どうもこうもあるまい、お前がオルランドを死地へと向かわせたのであろうが」
半ば呆れる父の言葉にラウルは目を見開く。
「そんな・・・・・・私は・・・・・・っ」
「そんなつもりは無かった、か? ならば尚、たちが悪い。 貴様の中途半端な知識のせいでオルランドが死んだのだからな」
ジャンパオロにそう責められ、ラウルは唇と拳を震わせた。
「もうこれ以上余計な事をするな、城に上がる事は暫くは禁止だ」
「そ、そんなっ! 酷いです父上っ!」
半ば泣きそうな声でそう言うと、ジャンパオロに凄まじい形相で睨まれた。
「何が酷い、だ! 酷いのは貴様の方だラウルッ! こう言えば少しは反省するかと思ったが、そんな気配すら見せないとは何様なんだっ!」
そう、本来なら父親に謹慎を言い渡されたのなら、大人しく聞き入れるべきだったのだ。
それなのに城に行けない事を嘆く様な事を言ってしまったラウルは、更にジャンパオロの逆鱗に触れた。
「いいか、これ以上何かをするつもりでいるのなら、貴様を除籍するからそのつもりで居ろ!」
ショックで顔色を青白くさせながら、下がれと言われてふらふらと出て行った息子の後ろ姿を、忌々しいモノを見る様な目で見送ったジャンパオロは、疲れ切ったような顔でどさりと椅子に座り込んだ。
ある意味、ラウルのその中途半端な作戦のお陰でオルランドの実家であるブランツォーニ家は助かったとも言える。本来であれば、家長のファウスティーノと長男エットレの首を差し出さねばならなかったかもしれないのを、オルランドが自身の命で以って責任を取った事でバルディーニ家は引き下がってくれたのである。
しかし、だからと言ってよくやった等と言えるような話ではないから、出来る事ならばこれ以上は大人しくしていて欲しいのだが・・・・・・。
無理だろうな・・・・・・。
我が息子ながら信用ならない。本当に、彼が嫡男でなくて良かったなどと思うだなんて父親として酷い話である。
しかし、絶対に何かをしでかす未来しか見えないので、除籍を視野に入れて動かねばならないだろう。
今のうちに除籍届の準備をしておくか。
ジャンパオロは目を閉じながら深く溜息を吐いた。
ラウルはひとり、青い顔でふらふらと廊下を歩いていた。
そんな、お城に行くなだなんて・・・・・・。
無条件に城に行け、第一王子とは兄弟のようにして育った事をアイデンティティとしてきたラウルには相当なショックだったようだ。
クソッ・・・!それもこれも、オルランドがもっとしっかりしてくれてたら・・・・・・!
相手が色々な面に於いて自分よりも格上である、と言う考えが何故か抜け落ちているラウルは親指の爪をギリギリと噛み締め、ついには指先から血が滲み始める。
クソッ、クソッ、クソ・・・・・・ッ!アイツのせいだッ!
何がなんでもやり込めてやる、否、寧ろ殺してやる、と殺意を漲らせはじめた。何故こんなにもグィードが憎いのか、疑問に思う事も無く憎しみを募らせる。
今度は殿下を使う訳には行かないから・・・・・・この僕が直々に相手してやる。
その為にはグィードを陥れる情報が必要であった。どんな些細な事でも良い、兎に角情報を集める必要がある。
良し、やることは決まった。どうせ父上は何だかんだ言って動かないに決まってるからな。
にたり、と粘着質な笑みを浮かべて、暗い廊下に立ち尽くしていたラウルは歩き出す。しかしラウルは気付いていなかった。彼の背後、自分の影が動いていない事に。
ラウルが部屋に消えた後も、影はそのまま暫く廊下に留まっていたが、不意に、ゆらりと動いてムクムクと形を変えてひとりの男の姿になった。魁偉な男の形をした影はススッ、と静かに動いて物陰へと溶け込み、そのまま、何処かへと帰って行った。
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