34 / 83
地獄への道は美しく舗装されている
三十二.
しおりを挟む
恋人の訃報を聞いても謹慎中である事を理由に、一緒に遺体の確認へも連れて行ってもらえず、その後の葬儀にも参列させてもらえなかったオルランドは自室で腐っていた。
「どうしてだよ・・・・・・」
ボスッ、と枕に拳を入れた。
「・・・・・・仕方ないよ、君は今謹慎中だ。もし、ここで無理を通せば君の心証がもっと悪くなってしまう」
話し合いが終わるまでの辛抱だと、確かにラウルの言う通りだが、心情としてはそうは行かない。
そして実を言うと謹慎中は、友人を招くことも規約違反になるのだが、其処はお目溢しをしてもらっている状態であると言う事が三人の頭の中から抜けていた。
それから、三人は知らないのだが、オルランドは話し合いが終わったら心証云々関係なく家を出て行かねばならない。
残念ながら、庇うのにも限度と言うものがあるからだ。
「クソッ・・・! アイツにぐうの音も出ないくらいやり込める方法は無えのかよ・・・・・・っ!」
オルランドは悔し気に己の右手拳を、開いた左手にパンチして、その左手で拳をグッ、と握り込んだ。
「実は、何か一矢報いる方法が無いか探してたんだけど、一つだけ見つけたよ」
ラウルがニヤリと笑った。三人は幼い頃から共に、兄弟のようにして育ってきた。
だから、分かるのである。
この、ラウルがニヤリと笑う時は大抵悪い事を思いついた時なのだ。そう言えば、小さい時はラウルが悪戯を思い付き、オルランド達が実行して・・・・・・悪戯がバレては三人はよく並んで叱られたものだと、少し懐かしい気持ちになっていた。
「何だか懐かしいな、ラウルが作戦を立てて、俺とオーリーで実行して・・・・・・ふふっ」
「あー、それでバレてよくラウルの親父さんに怒られたよなっ!」
懐かしい話で盛り上がりかけたが、ラウルがそれを遮った。
「さあさあ、懐かしい話も良いけど、僕の話を聞いてくれ」
ラウルは掛けていた己の眼鏡のブリッジ部分を人差し指でクイッ、と持ち上げながらふたりに声を掛けた。
「ああ、そうだった。で、何をするんだ?」
「うん、実は・・・・・・」
ラウルが作戦の内容を話し始める。するとふたりは感心したように頷き乍ら聞き入っていた。
「・・・・・・と、言う訳なんだけど、どうだろう?」
「良いなソレ! 気に入ったぜ!」
「しかし、それではオーリーひとりで頑張らないといけないじゃないか」
喜ぶオルランドに対して、カルロは親友を心配したようにラウルとオルランドを交互に見た。
「構わねえよ、どうせ最終的には俺自身で決着を付けなきゃいけねえコトなんだしよ。でも、気持ちは嬉しいぜ。ありがとう、殿下」
「ああ、何かあれば必ず僕達が相談に乗るよ」
「でも、無茶はしないでくれよ、健闘を祈る」
親友達から励まされ、気分が浮上したオルランドはおう、任せろ! と、握り拳を作って力強く応えて見せた。
「・・・・・・」
そんな三人のやり取りを、窓の外から見る者があった。ベルゼビュートである。
バルコニーの、大理石製の手すりに腰掛けながら茶番じみた遣り取りを静かに見ていた。
この事を報告すべきかどうか、と少し思案したが面白そうだから黙っておこうと考える。どうせ後一週間後には話し合いの席で分かる事だ。
それに我らが月明かりの君であれば、事細かに報告せずともこの様な児戯めいた作戦なぞどうとでも出来る。
精々、月明かりの君の復讐心を満足させてくれれば良いのだけれど、と願った。何せ、ガブリエーレの時は人ひとり死なせてしまったと言うのに、何だか実感が湧かないと少々不完全燃焼だったようだからである。
「どうしてだよ・・・・・・」
ボスッ、と枕に拳を入れた。
「・・・・・・仕方ないよ、君は今謹慎中だ。もし、ここで無理を通せば君の心証がもっと悪くなってしまう」
話し合いが終わるまでの辛抱だと、確かにラウルの言う通りだが、心情としてはそうは行かない。
そして実を言うと謹慎中は、友人を招くことも規約違反になるのだが、其処はお目溢しをしてもらっている状態であると言う事が三人の頭の中から抜けていた。
それから、三人は知らないのだが、オルランドは話し合いが終わったら心証云々関係なく家を出て行かねばならない。
残念ながら、庇うのにも限度と言うものがあるからだ。
「クソッ・・・! アイツにぐうの音も出ないくらいやり込める方法は無えのかよ・・・・・・っ!」
オルランドは悔し気に己の右手拳を、開いた左手にパンチして、その左手で拳をグッ、と握り込んだ。
「実は、何か一矢報いる方法が無いか探してたんだけど、一つだけ見つけたよ」
ラウルがニヤリと笑った。三人は幼い頃から共に、兄弟のようにして育ってきた。
だから、分かるのである。
この、ラウルがニヤリと笑う時は大抵悪い事を思いついた時なのだ。そう言えば、小さい時はラウルが悪戯を思い付き、オルランド達が実行して・・・・・・悪戯がバレては三人はよく並んで叱られたものだと、少し懐かしい気持ちになっていた。
「何だか懐かしいな、ラウルが作戦を立てて、俺とオーリーで実行して・・・・・・ふふっ」
「あー、それでバレてよくラウルの親父さんに怒られたよなっ!」
懐かしい話で盛り上がりかけたが、ラウルがそれを遮った。
「さあさあ、懐かしい話も良いけど、僕の話を聞いてくれ」
ラウルは掛けていた己の眼鏡のブリッジ部分を人差し指でクイッ、と持ち上げながらふたりに声を掛けた。
「ああ、そうだった。で、何をするんだ?」
「うん、実は・・・・・・」
ラウルが作戦の内容を話し始める。するとふたりは感心したように頷き乍ら聞き入っていた。
「・・・・・・と、言う訳なんだけど、どうだろう?」
「良いなソレ! 気に入ったぜ!」
「しかし、それではオーリーひとりで頑張らないといけないじゃないか」
喜ぶオルランドに対して、カルロは親友を心配したようにラウルとオルランドを交互に見た。
「構わねえよ、どうせ最終的には俺自身で決着を付けなきゃいけねえコトなんだしよ。でも、気持ちは嬉しいぜ。ありがとう、殿下」
「ああ、何かあれば必ず僕達が相談に乗るよ」
「でも、無茶はしないでくれよ、健闘を祈る」
親友達から励まされ、気分が浮上したオルランドはおう、任せろ! と、握り拳を作って力強く応えて見せた。
「・・・・・・」
そんな三人のやり取りを、窓の外から見る者があった。ベルゼビュートである。
バルコニーの、大理石製の手すりに腰掛けながら茶番じみた遣り取りを静かに見ていた。
この事を報告すべきかどうか、と少し思案したが面白そうだから黙っておこうと考える。どうせ後一週間後には話し合いの席で分かる事だ。
それに我らが月明かりの君であれば、事細かに報告せずともこの様な児戯めいた作戦なぞどうとでも出来る。
精々、月明かりの君の復讐心を満足させてくれれば良いのだけれど、と願った。何せ、ガブリエーレの時は人ひとり死なせてしまったと言うのに、何だか実感が湧かないと少々不完全燃焼だったようだからである。
12
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
婚約破棄された俺の農業異世界生活
深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」
冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生!
庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。
そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。
皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。
(ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中)
(第四回fujossy小説大賞エントリー中)
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
ワープ!×ワープ!
七賀ごふん
BL
「俺、君に攫われるならそれも良いかなって思ったんだよ」
主の命令で地上から誘拐してきた人は、とても嬉しそうにそう言った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈
冥王の妻となる為冥府に連れ去られた青年×毎夜人攫いを続ける冥王の従者のお話。
表紙:七賀
BLove様主催コンテスト受賞作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる