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地獄への道は美しく舗装されている
三十二.
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恋人の訃報を聞いても謹慎中である事を理由に、一緒に遺体の確認へも連れて行ってもらえず、その後の葬儀にも参列させてもらえなかったオルランドは自室で腐っていた。
「どうしてだよ・・・・・・」
ボスッ、と枕に拳を入れた。
「・・・・・・仕方ないよ、君は今謹慎中だ。もし、ここで無理を通せば君の心証がもっと悪くなってしまう」
話し合いが終わるまでの辛抱だと、確かにラウルの言う通りだが、心情としてはそうは行かない。
そして実を言うと謹慎中は、友人を招くことも規約違反になるのだが、其処はお目溢しをしてもらっている状態であると言う事が三人の頭の中から抜けていた。
それから、三人は知らないのだが、オルランドは話し合いが終わったら心証云々関係なく家を出て行かねばならない。
残念ながら、庇うのにも限度と言うものがあるからだ。
「クソッ・・・! アイツにぐうの音も出ないくらいやり込める方法は無えのかよ・・・・・・っ!」
オルランドは悔し気に己の右手拳を、開いた左手にパンチして、その左手で拳をグッ、と握り込んだ。
「実は、何か一矢報いる方法が無いか探してたんだけど、一つだけ見つけたよ」
ラウルがニヤリと笑った。三人は幼い頃から共に、兄弟のようにして育ってきた。
だから、分かるのである。
この、ラウルがニヤリと笑う時は大抵悪い事を思いついた時なのだ。そう言えば、小さい時はラウルが悪戯を思い付き、オルランド達が実行して・・・・・・悪戯がバレては三人はよく並んで叱られたものだと、少し懐かしい気持ちになっていた。
「何だか懐かしいな、ラウルが作戦を立てて、俺とオーリーで実行して・・・・・・ふふっ」
「あー、それでバレてよくラウルの親父さんに怒られたよなっ!」
懐かしい話で盛り上がりかけたが、ラウルがそれを遮った。
「さあさあ、懐かしい話も良いけど、僕の話を聞いてくれ」
ラウルは掛けていた己の眼鏡のブリッジ部分を人差し指でクイッ、と持ち上げながらふたりに声を掛けた。
「ああ、そうだった。で、何をするんだ?」
「うん、実は・・・・・・」
ラウルが作戦の内容を話し始める。するとふたりは感心したように頷き乍ら聞き入っていた。
「・・・・・・と、言う訳なんだけど、どうだろう?」
「良いなソレ! 気に入ったぜ!」
「しかし、それではオーリーひとりで頑張らないといけないじゃないか」
喜ぶオルランドに対して、カルロは親友を心配したようにラウルとオルランドを交互に見た。
「構わねえよ、どうせ最終的には俺自身で決着を付けなきゃいけねえコトなんだしよ。でも、気持ちは嬉しいぜ。ありがとう、殿下」
「ああ、何かあれば必ず僕達が相談に乗るよ」
「でも、無茶はしないでくれよ、健闘を祈る」
親友達から励まされ、気分が浮上したオルランドはおう、任せろ! と、握り拳を作って力強く応えて見せた。
「・・・・・・」
そんな三人のやり取りを、窓の外から見る者があった。ベルゼビュートである。
バルコニーの、大理石製の手すりに腰掛けながら茶番じみた遣り取りを静かに見ていた。
この事を報告すべきかどうか、と少し思案したが面白そうだから黙っておこうと考える。どうせ後一週間後には話し合いの席で分かる事だ。
それに我らが月明かりの君であれば、事細かに報告せずともこの様な児戯めいた作戦なぞどうとでも出来る。
精々、月明かりの君の復讐心を満足させてくれれば良いのだけれど、と願った。何せ、ガブリエーレの時は人ひとり死なせてしまったと言うのに、何だか実感が湧かないと少々不完全燃焼だったようだからである。
「どうしてだよ・・・・・・」
ボスッ、と枕に拳を入れた。
「・・・・・・仕方ないよ、君は今謹慎中だ。もし、ここで無理を通せば君の心証がもっと悪くなってしまう」
話し合いが終わるまでの辛抱だと、確かにラウルの言う通りだが、心情としてはそうは行かない。
そして実を言うと謹慎中は、友人を招くことも規約違反になるのだが、其処はお目溢しをしてもらっている状態であると言う事が三人の頭の中から抜けていた。
それから、三人は知らないのだが、オルランドは話し合いが終わったら心証云々関係なく家を出て行かねばならない。
残念ながら、庇うのにも限度と言うものがあるからだ。
「クソッ・・・! アイツにぐうの音も出ないくらいやり込める方法は無えのかよ・・・・・・っ!」
オルランドは悔し気に己の右手拳を、開いた左手にパンチして、その左手で拳をグッ、と握り込んだ。
「実は、何か一矢報いる方法が無いか探してたんだけど、一つだけ見つけたよ」
ラウルがニヤリと笑った。三人は幼い頃から共に、兄弟のようにして育ってきた。
だから、分かるのである。
この、ラウルがニヤリと笑う時は大抵悪い事を思いついた時なのだ。そう言えば、小さい時はラウルが悪戯を思い付き、オルランド達が実行して・・・・・・悪戯がバレては三人はよく並んで叱られたものだと、少し懐かしい気持ちになっていた。
「何だか懐かしいな、ラウルが作戦を立てて、俺とオーリーで実行して・・・・・・ふふっ」
「あー、それでバレてよくラウルの親父さんに怒られたよなっ!」
懐かしい話で盛り上がりかけたが、ラウルがそれを遮った。
「さあさあ、懐かしい話も良いけど、僕の話を聞いてくれ」
ラウルは掛けていた己の眼鏡のブリッジ部分を人差し指でクイッ、と持ち上げながらふたりに声を掛けた。
「ああ、そうだった。で、何をするんだ?」
「うん、実は・・・・・・」
ラウルが作戦の内容を話し始める。するとふたりは感心したように頷き乍ら聞き入っていた。
「・・・・・・と、言う訳なんだけど、どうだろう?」
「良いなソレ! 気に入ったぜ!」
「しかし、それではオーリーひとりで頑張らないといけないじゃないか」
喜ぶオルランドに対して、カルロは親友を心配したようにラウルとオルランドを交互に見た。
「構わねえよ、どうせ最終的には俺自身で決着を付けなきゃいけねえコトなんだしよ。でも、気持ちは嬉しいぜ。ありがとう、殿下」
「ああ、何かあれば必ず僕達が相談に乗るよ」
「でも、無茶はしないでくれよ、健闘を祈る」
親友達から励まされ、気分が浮上したオルランドはおう、任せろ! と、握り拳を作って力強く応えて見せた。
「・・・・・・」
そんな三人のやり取りを、窓の外から見る者があった。ベルゼビュートである。
バルコニーの、大理石製の手すりに腰掛けながら茶番じみた遣り取りを静かに見ていた。
この事を報告すべきかどうか、と少し思案したが面白そうだから黙っておこうと考える。どうせ後一週間後には話し合いの席で分かる事だ。
それに我らが月明かりの君であれば、事細かに報告せずともこの様な児戯めいた作戦なぞどうとでも出来る。
精々、月明かりの君の復讐心を満足させてくれれば良いのだけれど、と願った。何せ、ガブリエーレの時は人ひとり死なせてしまったと言うのに、何だか実感が湧かないと少々不完全燃焼だったようだからである。
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