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地獄への道は美しく舗装されている
三十一.※ちょっとグロ注意。
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「し、しかし私はまだ何もしていないじゃないか・・・・・・っ!」
ガブリエーレの反論は至極真っ当なものであった。未来で起こることを今から断罪するなんて、酷い話である。
「確かに、今のお前は何もしていない。でも私・・・俺の望みは家族を殺した者達に復讐する事だ」
何も起きていない現在、本当なら家族の死に繋がるモノ全てを回避してハッピーエンドに導くのが正しい「物語」の姿かもしれないが、グィードは其処迄お人好しでは無い。
「それに向こうが魔女と手を組む以上、此方は悪魔の手を取るしかないじゃないか」
一度惨たらしい死に様を見せつけられ尚、それでも誰も死なせないで本当に悪い者だけを断罪するなんて優しさは要らないのだ。
欲しいのは家族を殺した者達の無様な死である。
「まあもう良いや、取り敢えず、君には首を吊って死んでもらおうかな」
気軽な調子でそう言いながらグィードが指差した先。薄闇が支配し始めた室内で、天井からだらりと丈夫そうな縄が垂れ下がっているのが薄暗がりの中見えた。
何時から垂れ下がっていたのかは分からないが、風も無いのにユラユラ揺れて見えるのは目の錯覚だろうか、それとも本当に揺れているのだろうか。
「え、え・・・・・・何で」
そう言いながらガブリエーレは椅子から立ち上がり、先程迄自身が座っていた椅子を片手に縄の前まで歩いて行った。縄の下に椅子を置いて脚を掛け、椅子の上に立つ。
「いやだ・・・・・・ッ! 嫌だ助けてくれ・・・・・・ッ!!」
縄に手てを掛け、縄の輪っかになった部分に首を入れた。
ガブリエーレは己の身体が勝手に動いて、どうやっても自身の意思では止められない。どうにか唯一自由に動く口で助けを求めても、グィードは彼の死を求めながらも見送る気は無いのか、背を向けて部屋を出て行こうとしていた。
ガンッ!椅子を蹴ると同時に部屋の扉は静かに閉められた。
ガブリエーレの遺体が発見されたのはそれから二週間も後であった。
近隣住民からの「異臭がする」と言う苦情で駆け付けた憲兵がガブリエーレの家に突入して、事が発覚した。
自身の重みと、初夏の日中の暑さで進んだ腐敗により首と胴体が切断したような状態で、二階の寝室で発見された。検視の結果、部屋には争ったような形跡も無く、寝室の天井にあった縄や、机の上には遺書があった為、事件性は無いとみなされた。
身元は直ぐに分かった為トレンティノ王国騎士団にもガブリエーレの訃報の連絡は入った。
慌ててファウスティーノとエットレが身元の確認をする為に憲兵詰所に向かい、その後家族も駆けつけて皆でガブリエーレだと確認した。
それから丁寧な筆跡の遺書も読み、覚悟の自殺であると皆が信じた。
その後、ガブリエーレの遺体は家族に引き取られ、後日葬儀が行われる事となった。その話はバルディーニ邸にももたらされた。
丁度晩餐を終え、食後のコーヒーを飲んでいる時にジュリオに執事が耳打ちした。
やや長いくらいのひそひそ話の後、ジュリオが厳しい顔をしながらグィードを見た。
「・・・・・・グィード、後で私の部屋に来なさい」
私の部屋、とはこの場合執務室の事を指して言っている。
「分かりました」
頷いて食後、グィードは執務室に向かった。何時もそうするように、ノックして応えの後中に入る。
「来たか」
「はい、何かありましたか」
「うむ、如何やらガブリエーレとやらが亡くなったらしい」
グィードはえっ、と思わず出てしまった、と言うような少し驚いたような声を出す。
「どうしたんですか・・・・・・」
「ああ、話では覚悟の自殺らしいが・・・・・・」
ジュリオの言葉に痛まし気な表情を浮かべ、首を横に振った。
「そんな、自殺だなんて・・・・・・」
ジュリオから、如何やらガブリエーレはオルランドとの交際に思い悩んでいた事や、そのせいでグィードを巻き込んだ事を詫びる様な内容が書かれていた事を教えてくれた。
「そうですか・・・・・・そんな事を・・・・・・」
と、殊勝な顔で呟く。まあ、それ等全てはグィードが考え、書かせた事なのだけれど。
ガブリエーレの反論は至極真っ当なものであった。未来で起こることを今から断罪するなんて、酷い話である。
「確かに、今のお前は何もしていない。でも私・・・俺の望みは家族を殺した者達に復讐する事だ」
何も起きていない現在、本当なら家族の死に繋がるモノ全てを回避してハッピーエンドに導くのが正しい「物語」の姿かもしれないが、グィードは其処迄お人好しでは無い。
「それに向こうが魔女と手を組む以上、此方は悪魔の手を取るしかないじゃないか」
一度惨たらしい死に様を見せつけられ尚、それでも誰も死なせないで本当に悪い者だけを断罪するなんて優しさは要らないのだ。
欲しいのは家族を殺した者達の無様な死である。
「まあもう良いや、取り敢えず、君には首を吊って死んでもらおうかな」
気軽な調子でそう言いながらグィードが指差した先。薄闇が支配し始めた室内で、天井からだらりと丈夫そうな縄が垂れ下がっているのが薄暗がりの中見えた。
何時から垂れ下がっていたのかは分からないが、風も無いのにユラユラ揺れて見えるのは目の錯覚だろうか、それとも本当に揺れているのだろうか。
「え、え・・・・・・何で」
そう言いながらガブリエーレは椅子から立ち上がり、先程迄自身が座っていた椅子を片手に縄の前まで歩いて行った。縄の下に椅子を置いて脚を掛け、椅子の上に立つ。
「いやだ・・・・・・ッ! 嫌だ助けてくれ・・・・・・ッ!!」
縄に手てを掛け、縄の輪っかになった部分に首を入れた。
ガブリエーレは己の身体が勝手に動いて、どうやっても自身の意思では止められない。どうにか唯一自由に動く口で助けを求めても、グィードは彼の死を求めながらも見送る気は無いのか、背を向けて部屋を出て行こうとしていた。
ガンッ!椅子を蹴ると同時に部屋の扉は静かに閉められた。
ガブリエーレの遺体が発見されたのはそれから二週間も後であった。
近隣住民からの「異臭がする」と言う苦情で駆け付けた憲兵がガブリエーレの家に突入して、事が発覚した。
自身の重みと、初夏の日中の暑さで進んだ腐敗により首と胴体が切断したような状態で、二階の寝室で発見された。検視の結果、部屋には争ったような形跡も無く、寝室の天井にあった縄や、机の上には遺書があった為、事件性は無いとみなされた。
身元は直ぐに分かった為トレンティノ王国騎士団にもガブリエーレの訃報の連絡は入った。
慌ててファウスティーノとエットレが身元の確認をする為に憲兵詰所に向かい、その後家族も駆けつけて皆でガブリエーレだと確認した。
それから丁寧な筆跡の遺書も読み、覚悟の自殺であると皆が信じた。
その後、ガブリエーレの遺体は家族に引き取られ、後日葬儀が行われる事となった。その話はバルディーニ邸にももたらされた。
丁度晩餐を終え、食後のコーヒーを飲んでいる時にジュリオに執事が耳打ちした。
やや長いくらいのひそひそ話の後、ジュリオが厳しい顔をしながらグィードを見た。
「・・・・・・グィード、後で私の部屋に来なさい」
私の部屋、とはこの場合執務室の事を指して言っている。
「分かりました」
頷いて食後、グィードは執務室に向かった。何時もそうするように、ノックして応えの後中に入る。
「来たか」
「はい、何かありましたか」
「うむ、如何やらガブリエーレとやらが亡くなったらしい」
グィードはえっ、と思わず出てしまった、と言うような少し驚いたような声を出す。
「どうしたんですか・・・・・・」
「ああ、話では覚悟の自殺らしいが・・・・・・」
ジュリオの言葉に痛まし気な表情を浮かべ、首を横に振った。
「そんな、自殺だなんて・・・・・・」
ジュリオから、如何やらガブリエーレはオルランドとの交際に思い悩んでいた事や、そのせいでグィードを巻き込んだ事を詫びる様な内容が書かれていた事を教えてくれた。
「そうですか・・・・・・そんな事を・・・・・・」
と、殊勝な顔で呟く。まあ、それ等全てはグィードが考え、書かせた事なのだけれど。
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