31 / 83
地獄への道は美しく舗装されている
二十九.
しおりを挟む
次の日にはもう動き出したジュリオのお陰で話し合いは一か月後となった。
これはジュリオの仕事の都合がある為、そうなってしまったのだ。
「ああ、そうだ。それからガブリエーレ・アルボルゲッティは一か月の、オルランド・ブランツォーニは無期限の謹慎処分が決定したそうだ」
その日の晩餐の席でグィードは父の口からそれらの話を聞かされた。
「そうですか・・・・・・」
ガブリエーレ自身が何かした訳では無いが、原因を作ってしまったと言う事と、彼自身が何かしらの処分を望んだ為そうなった。オルランドは実質的な退団処分だ。話合いの後正式に退団することになるだろう。
本人に少しでも才能が有れば他国の騎士団に入りなおすことも出来ただろうが、しかし残念なくらい才能が無い為、それも難しいかもしれない。
本来であれば学園に通っている間に自身の進路を決めなければいけないが、残念ながら其処迄生かす気は無いのでそのまま失墜のうちに死んでもらおう、とグィードは考えていた。
「グィード、お前ももうトレンティノの騎士団の練習参加は止めるように」
「はい、そうします」
グィードは最初からそのつもりだったので、ジュリオの言葉に素直に頷いた。当初の目的は達成した、もう通う用は無い。
それからガブリエーレは如何やら明日から一か月、自宅にて謹慎するようだった。
ならば丁度いい、明日行動を起こす事にしょう、とグィードはそう思った。
「そうだ、ラウラ。殿下とのお茶会は何時だったっけ?」
「再来月ですわ、お兄様」
話題を変えようと、グィードはラウラに話を振った。
「こちらの梅雨時期のお茶会がどんな感じなのか、楽しみだわ」
勿論、此方へ越してきてから既に何度かトレンティノ王国に住む御令嬢方からのお茶会の招待を受け、行った事があるラウラだが、矢張り暑さ寒さが違うとお茶会一つとっても色々違ってくると言うものだ。
バルディーニ領では春夏がとても短く、冬が長い。なので庭園でのお茶会より、室内でのお茶会が主流だが最近流行の兆しを見せているのは、珍しい植物を育てた温室でのお茶会である。
「しかし此方の夏は暑いと聞くから、熱中症には気を付けないといけないよ」
「ええ、お兄様」
「そう言えば、どんなドレスを着ていくんだい?」
ジュリオがそう尋ねた。すると、ラウラの顔が途端にキラキラと輝きだした。
「ええ、こちらにもSotto la rosaの支店があるからそこでお願いしましたの!こちらのデザイナーも腕がいいからとても楽しみにしているんですの、お父様」
「Sotto ra rosa」薔薇の下、と言う意味の店名の服飾店はバルディーニ領に本店を置く高級ブティックである。
トレンティノ王国にも支店を置き、ラウラ世代の若い令嬢達から人気のあるお店だった。
レースやフリルをふんだんに使った砂糖菓子の様に甘い雰囲気のドレスや、少し背伸びをしたい令嬢や、先述の甘いドレスがあまり好きではない令嬢に向けたシックでシンプルな上品なドレスなど幅広いデザインを展開している。
勿論ラウラは上客である為、此方にも彼女の事はくれぐれも失礼のないように、とラウラの好みなどの情報と共に通達が行っているくらいだ。
「ブルーのストライプ生地がとても可愛かったのでそれでサマードレスと、後色違いの生地でシュミーズドレスも作ってもらうし・・・・・・」
と、嬉々として語りだすラウラに、しまった、話が長くなりそうだとふたりは半ば後悔していた。
可愛い娘であり妹の話だが、お洒落にはとんと無頓着な男ふたりはうんうんと話を半ば聞き流しながら頷くしかなかった。
これはジュリオの仕事の都合がある為、そうなってしまったのだ。
「ああ、そうだ。それからガブリエーレ・アルボルゲッティは一か月の、オルランド・ブランツォーニは無期限の謹慎処分が決定したそうだ」
その日の晩餐の席でグィードは父の口からそれらの話を聞かされた。
「そうですか・・・・・・」
ガブリエーレ自身が何かした訳では無いが、原因を作ってしまったと言う事と、彼自身が何かしらの処分を望んだ為そうなった。オルランドは実質的な退団処分だ。話合いの後正式に退団することになるだろう。
本人に少しでも才能が有れば他国の騎士団に入りなおすことも出来ただろうが、しかし残念なくらい才能が無い為、それも難しいかもしれない。
本来であれば学園に通っている間に自身の進路を決めなければいけないが、残念ながら其処迄生かす気は無いのでそのまま失墜のうちに死んでもらおう、とグィードは考えていた。
「グィード、お前ももうトレンティノの騎士団の練習参加は止めるように」
「はい、そうします」
グィードは最初からそのつもりだったので、ジュリオの言葉に素直に頷いた。当初の目的は達成した、もう通う用は無い。
それからガブリエーレは如何やら明日から一か月、自宅にて謹慎するようだった。
ならば丁度いい、明日行動を起こす事にしょう、とグィードはそう思った。
「そうだ、ラウラ。殿下とのお茶会は何時だったっけ?」
「再来月ですわ、お兄様」
話題を変えようと、グィードはラウラに話を振った。
「こちらの梅雨時期のお茶会がどんな感じなのか、楽しみだわ」
勿論、此方へ越してきてから既に何度かトレンティノ王国に住む御令嬢方からのお茶会の招待を受け、行った事があるラウラだが、矢張り暑さ寒さが違うとお茶会一つとっても色々違ってくると言うものだ。
バルディーニ領では春夏がとても短く、冬が長い。なので庭園でのお茶会より、室内でのお茶会が主流だが最近流行の兆しを見せているのは、珍しい植物を育てた温室でのお茶会である。
「しかし此方の夏は暑いと聞くから、熱中症には気を付けないといけないよ」
「ええ、お兄様」
「そう言えば、どんなドレスを着ていくんだい?」
ジュリオがそう尋ねた。すると、ラウラの顔が途端にキラキラと輝きだした。
「ええ、こちらにもSotto la rosaの支店があるからそこでお願いしましたの!こちらのデザイナーも腕がいいからとても楽しみにしているんですの、お父様」
「Sotto ra rosa」薔薇の下、と言う意味の店名の服飾店はバルディーニ領に本店を置く高級ブティックである。
トレンティノ王国にも支店を置き、ラウラ世代の若い令嬢達から人気のあるお店だった。
レースやフリルをふんだんに使った砂糖菓子の様に甘い雰囲気のドレスや、少し背伸びをしたい令嬢や、先述の甘いドレスがあまり好きではない令嬢に向けたシックでシンプルな上品なドレスなど幅広いデザインを展開している。
勿論ラウラは上客である為、此方にも彼女の事はくれぐれも失礼のないように、とラウラの好みなどの情報と共に通達が行っているくらいだ。
「ブルーのストライプ生地がとても可愛かったのでそれでサマードレスと、後色違いの生地でシュミーズドレスも作ってもらうし・・・・・・」
と、嬉々として語りだすラウラに、しまった、話が長くなりそうだとふたりは半ば後悔していた。
可愛い娘であり妹の話だが、お洒落にはとんと無頓着な男ふたりはうんうんと話を半ば聞き流しながら頷くしかなかった。
2
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
婚約破棄された俺の農業異世界生活
深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」
冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生!
庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。
そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。
皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。
(ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中)
(第四回fujossy小説大賞エントリー中)
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる