復讐はショコラよりも甘い

璃々丸

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地獄への道は美しく舗装されている

二十九.

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 次の日にはもう動き出したジュリオのお陰で話し合いは一か月後となった。
 これはジュリオの仕事の都合がある為、そうなってしまったのだ。
「ああ、そうだ。それからガブリエーレ・アルボルゲッティは一か月の、オルランド・ブランツォーニは無期限の謹慎処分が決定したそうだ」
 その日の晩餐の席でグィードは父の口からそれらの話を聞かされた。
「そうですか・・・・・・」
 ガブリエーレ自身が何かした訳では無いが、原因を作ってしまったと言う事と、彼自身が何かしらの処分を望んだ為そうなった。オルランドは実質的な退団処分だ。話合いの後正式に退団することになるだろう。
 本人に少しでも才能が有れば他国の騎士団に入りなおすことも出来ただろうが、しかし残念なくらい才能が無い為、それも難しいかもしれない。
 本来であれば学園に通っている間に自身の進路を決めなければいけないが、残念ながら其処迄生かす気は無いのでそのまま失墜のうちに死んでもらおう、とグィードは考えていた。
「グィード、お前ももうトレンティノの騎士団の練習参加は止めるように」
「はい、そうします」
 グィードは最初からそのつもりだったので、ジュリオの言葉に素直に頷いた。当初の目的は達成した、もう通う用は無い。
 それからガブリエーレは如何やら明日から一か月、自宅にて謹慎するようだった。
 ならば丁度いい、明日行動を起こす事にしょう、とグィードはそう思った。
「そうだ、ラウラ。殿下とのお茶会は何時だったっけ?」
「再来月ですわ、お兄様」
 話題を変えようと、グィードはラウラに話を振った。
「こちらの梅雨時期のお茶会がどんな感じなのか、楽しみだわ」
 勿論、此方へ越してきてから既に何度かトレンティノ王国に住む御令嬢方からのお茶会の招待を受け、行った事があるラウラだが、矢張り暑さ寒さが違うとお茶会一つとっても色々違ってくると言うものだ。
 バルディーニ領では春夏がとても短く、冬が長い。なので庭園でのお茶会より、室内でのお茶会が主流だが最近流行の兆しを見せているのは、珍しい植物を育てた温室でのお茶会である。
「しかし此方の夏は暑いと聞くから、熱中症には気を付けないといけないよ」
「ええ、お兄様」
「そう言えば、どんなドレスを着ていくんだい?」 
 ジュリオがそう尋ねた。すると、ラウラの顔が途端にキラキラと輝きだした。
「ええ、こちらにもSotto la rosaの支店があるからそこでお願いしましたの!こちらのデザイナーも腕がいいからとても楽しみにしているんですの、お父様」
 「Sotto ra rosa」薔薇の下、と言う意味の店名の服飾店はバルディーニ領に本店を置く高級ブティックである。
 トレンティノ王国にも支店を置き、ラウラ世代の若い令嬢達から人気のあるお店だった。
 レースやフリルをふんだんに使った砂糖菓子の様に甘い雰囲気のドレスや、少し背伸びをしたい令嬢や、先述の甘いドレスがあまり好きではない令嬢に向けたシックでシンプルな上品なドレスなど幅広いデザインを展開している。
 勿論ラウラは上客である為、此方にも彼女の事はくれぐれも失礼のないように、とラウラの好みなどの情報と共に通達が行っているくらいだ。
「ブルーのストライプ生地がとても可愛かったのでそれでサマードレスと、後色違いの生地でシュミーズドレスも作ってもらうし・・・・・・」
 と、嬉々として語りだすラウラに、しまった、話が長くなりそうだとふたりは半ば後悔していた。
 可愛い娘であり妹の話だが、お洒落にはとんと無頓着な男ふたりはうんうんと話を半ば聞き流しながら頷くしかなかった。 
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