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地獄への道は美しく舗装されている
二十五.
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「・・・・・・そうですか、ありがとうございます。ベルゼビュート卿」
自らに与えられた執務室で仕事をしていたグィードが、戻ってきたベルゼビュートから報告を受けてそう言った。
「ふむ・・・・・・殿下も卿の術に嵌まりましたか。やっぱり・・・・・・」
「ええ、聖女の加護が薄いように感じました」
矢張り思っていた通りだと、グィードは考えた。
前の時間軸の映像を見た時に感じたのが、常に行動を共にしていたとは言え聖女の加護が魔女如きの魅了でどうこうなる程、そんなやわな加護である筈が無い。
現に、彼の弟のダリオはあの瘴気漂う学園の中でも何ともなかったのだ。
そうなると、カルロは何らかの理由で聖女の加護が薄いのだと考えざる得ない。それが何故なのかは、現時点では分からない。まあ、それ等を知るのはおいおいでも良いだろう、と追及するのは一旦保留する事にした。
「では・・・・・・」
言いかけるが、ノックが会話を中断させた。仕方なくノックに応えると、従者が入って来た。
「グィード様、旦那様からお電話でございます」
「父上から?分かった、直ぐ行く」
最近普及しだした電話は、今は大きな公共施設と貴族でもごく一部の邸にしか電話線が引かれていない。
勿論、バルディーニ家はトレンティノ王国と自領の両方に電話を持っていた。しかし、日付から考えてジュリオは自領から電話しているとは考えにくい。多分、何処かの駅から電話を掛けてきているのだろう。
ジュリオの執務室に入り、電話機の傍らに置かれていた受話器を取る。
「もしもし?」
『もしもし、グィードか?』
「はい、父上」
矢張り、ジュリオの背後から汽笛や人込みのざわめきが聞こえてくる。
『今、ファーロントの駅だ。何もなければ後、二三日で其方に着く』
「分かりました」
と、お互い軽く近況報告をしながら会話しているとまたノックの音。応えると、入ってきたのはラウラだった。
「お父様からお電話でしょ、お兄様、変わって下さいな」
仕方なく変わってやると、ラウラは受話器を受け取り話始めた。
「もしもしお父様?ええ、ラウラですわ。うふふ、ええ元気です」
鈴を転がすような可愛らしい声音で、ラウラは受け答えする。
「お父様、実はつい先ほどダリオ第二王子殿下からお茶会の招待状を頂きましたの。それで、ドレスを新調しても?」
と聞いていた。ジュリオがラウラのおねだりを無下にする訳も無く、快く受けているであろう事はラウラの表情で分かる。
「ありがとうございます、お父様。じゃあ、お兄様に返しますわね」
そう言うと要件は済んだとばかりにグィードに受話器を返してきた。現金な娘である。
だが、其処が可愛いのだ。
「もしもし、父上?」
『何だグィードか』
「何だは無いでしょう」
苦笑いしながらグィードは言った。
『む、そろそろ汽車が出るようだ、戻らんといかん。すまんなグィード、戻るまで頼んだぞ』
「はい、父上。お任せください。それと、道中お気を付けて」
ジュリオがああ、と答えた後、ガチャリと通話が切れた。
「・・・・・・」
グィードはふう、と溜息を吐いた後、受話器を電話機の上に戻した。
此処迄は、予定通りだ。取り敢えず、事を起こすのは明日以降で十分である。
タネを蒔き、水と肥料も与えてそろそろ悪心が芽吹くころだ。
「さて、どうやって潰してやろうかな」
ふふ、と目を細めて妖艶に笑う。すると、ひとりきりであった為、足元をぬるりと黒い獣が現れてすり寄る。
グィードは頭を撫で、耳の後ろを掻いてやるとダエーワは目を閉じ、グルグルと喉を鳴らして甘えてきた。
「先ずはそうだなあ・・・・・・ガブリエーレ・アルボルゲッティ、彼に消えてもらいましょうか」
ねえ?と、ダエーワの顔を覗き込みながら半ば独り言のように呟いていた。
自らに与えられた執務室で仕事をしていたグィードが、戻ってきたベルゼビュートから報告を受けてそう言った。
「ふむ・・・・・・殿下も卿の術に嵌まりましたか。やっぱり・・・・・・」
「ええ、聖女の加護が薄いように感じました」
矢張り思っていた通りだと、グィードは考えた。
前の時間軸の映像を見た時に感じたのが、常に行動を共にしていたとは言え聖女の加護が魔女如きの魅了でどうこうなる程、そんなやわな加護である筈が無い。
現に、彼の弟のダリオはあの瘴気漂う学園の中でも何ともなかったのだ。
そうなると、カルロは何らかの理由で聖女の加護が薄いのだと考えざる得ない。それが何故なのかは、現時点では分からない。まあ、それ等を知るのはおいおいでも良いだろう、と追及するのは一旦保留する事にした。
「では・・・・・・」
言いかけるが、ノックが会話を中断させた。仕方なくノックに応えると、従者が入って来た。
「グィード様、旦那様からお電話でございます」
「父上から?分かった、直ぐ行く」
最近普及しだした電話は、今は大きな公共施設と貴族でもごく一部の邸にしか電話線が引かれていない。
勿論、バルディーニ家はトレンティノ王国と自領の両方に電話を持っていた。しかし、日付から考えてジュリオは自領から電話しているとは考えにくい。多分、何処かの駅から電話を掛けてきているのだろう。
ジュリオの執務室に入り、電話機の傍らに置かれていた受話器を取る。
「もしもし?」
『もしもし、グィードか?』
「はい、父上」
矢張り、ジュリオの背後から汽笛や人込みのざわめきが聞こえてくる。
『今、ファーロントの駅だ。何もなければ後、二三日で其方に着く』
「分かりました」
と、お互い軽く近況報告をしながら会話しているとまたノックの音。応えると、入ってきたのはラウラだった。
「お父様からお電話でしょ、お兄様、変わって下さいな」
仕方なく変わってやると、ラウラは受話器を受け取り話始めた。
「もしもしお父様?ええ、ラウラですわ。うふふ、ええ元気です」
鈴を転がすような可愛らしい声音で、ラウラは受け答えする。
「お父様、実はつい先ほどダリオ第二王子殿下からお茶会の招待状を頂きましたの。それで、ドレスを新調しても?」
と聞いていた。ジュリオがラウラのおねだりを無下にする訳も無く、快く受けているであろう事はラウラの表情で分かる。
「ありがとうございます、お父様。じゃあ、お兄様に返しますわね」
そう言うと要件は済んだとばかりにグィードに受話器を返してきた。現金な娘である。
だが、其処が可愛いのだ。
「もしもし、父上?」
『何だグィードか』
「何だは無いでしょう」
苦笑いしながらグィードは言った。
『む、そろそろ汽車が出るようだ、戻らんといかん。すまんなグィード、戻るまで頼んだぞ』
「はい、父上。お任せください。それと、道中お気を付けて」
ジュリオがああ、と答えた後、ガチャリと通話が切れた。
「・・・・・・」
グィードはふう、と溜息を吐いた後、受話器を電話機の上に戻した。
此処迄は、予定通りだ。取り敢えず、事を起こすのは明日以降で十分である。
タネを蒔き、水と肥料も与えてそろそろ悪心が芽吹くころだ。
「さて、どうやって潰してやろうかな」
ふふ、と目を細めて妖艶に笑う。すると、ひとりきりであった為、足元をぬるりと黒い獣が現れてすり寄る。
グィードは頭を撫で、耳の後ろを掻いてやるとダエーワは目を閉じ、グルグルと喉を鳴らして甘えてきた。
「先ずはそうだなあ・・・・・・ガブリエーレ・アルボルゲッティ、彼に消えてもらいましょうか」
ねえ?と、ダエーワの顔を覗き込みながら半ば独り言のように呟いていた。
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