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地獄への道は美しく舗装されている
十九.
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グィードが倒れた日から半月が経った。
次の日にはジュリオが自領に仕事の為戻り、その間グィードが当主代理を務めて割り振られた仕事を午前中こなしながら週に一、二日は午後からトレンティノ王国騎士団員達と混じって鍛錬をしたり、と日々を忙しくしていた。
他にも、ベルゼビュートの情報によると、ガブリエーレは休みの度に図書館へ通っているらしい、と言う事だったのでどうやって出会いを演出してやろうかと考えていた所だったので、丁度お誂え向きだとグィードは行動に移す事にした。
それは、ガブリエーレが本棚に手を伸ばした時、同じように手を伸ばす、と言う事をやったのだ。
向こうは此方が誰なのかは当然気付いて、驚いて頭を下げて来るのを軽く制してガブリエーレに自己紹介をさせながら。
「ああ、貴公はトレンティノ王国騎士団の方でしたか」
なんて陳腐で滑稽な展開だろう、と思わなくもないが二、三回図書館に現れて声を掛けたら向こうは勝手に運命を感じてくれているようで、身体を鈍らせない様にと通い始めた鍛錬場でも他の騎士達に混じってグィードを囲む輪の中に居るようになった。
大勢の人が居る前ではその他大勢の一人でも、図書館では勉強熱心な彼の為だけに軽く講義の真似事をしてみたり、互いにお薦めの本を教え合ったりしていると、親密になるのにそう手間取る事は無かった。
今日も騎士団員たちに混じって走り込みの後皆と休憩をしていたら、走り込みの時には居なかったオルランドが現れて。
「おい、何でお前がこんな所にいるんだよっ!」
「何でと言われてもね・・・一応君のお父上や兄上殿達には許可を取っているけど?」
ジュリオを見送った後、仕事の前に手紙を認めてファウスティーノに週一、二回其方の鍛錬に混ぜては貰えまいか、と言う旨の手紙を出したら午後には返事が返ってきてとても驚いた。
随分と歓迎している内容で、実際顔を出したらエットレやアベラルドも喜んで迎え入れてくれた。
勿論、団員達も皆親切だし楽しく鍛錬に参加させてもらっている。
「止めないかオルランド。それより君は今日は洗濯当番だろう、もう終わったのか?」
年嵩の、エットレの副官を務めている男がそう尋ねた。するとオルランドはむっ、とした顔をしてまだだと答えた。
「なら、こんな所で油を売ってないで仕事を終わらせるんだ。練習に参加するのはそれからだろう」
厳しく指摘され、オルランドは舌打ちして渋々引き返して行った。皆やれやれと言った雰囲気でその後姿を見送り、しかし直ぐにそんな事も忘れて、鍛錬に戻って行った。
「・・・・・・」
オルランドは居場所を奪われて行く、と無意識に思ったのかもしれない。その認識は勿論間違いでは無い。
居場所だけじゃ無い、大事な恋人も奪ってあげるよと、グィードはほくそ笑む。
オルランドの、グィードに対する態度が悪いせいでこの日以降、オルランドに対する苛めが更に陰湿化していった。
今迄もオルランドは騎士団員の一部から嫌がらせ行為を受けていたのだが、しかしその苛めの輪が徐々に広がりつつあるようであった。それに比例するように、城に務めている者達がオルランドがカルロとラウルに慰められている光景を、頻繁に見かける様になっていた。
今日も春うららかな中庭の噴水に、オルランドを真ん中にして三人が並んで腰掛け何やら話し込んでいた。
「ちきしょうっ、アイツが絶対裏で何かしてるんだ!」
オルランドがその榛色の瞳に涙を浮かべながら、悔し気に腰掛けていた噴水の縁を叩いた。
「カルロ殿下、コレは貴方から抗議をしてやれないのかい?」
ラウルも悔し気にカルロを見た。カルロはと言うと、難しげな顔をして考え込んでいた。
「う、ん・・・・・・証拠が無ければ難しいな。せめて何か抗議する切っ掛けになるようなものでもあれば良いんだけど」
「やっぱりそうか・・・・・・」
カルロの言葉にラウルが溜息を吐いた。
遣り口が巧妙で悪質だ。なんて奴だろう、と彼らは勝手にどんどんグィードに悪印象を持つようになっていた。
実際はグィードは何もしていない。周りが勝手にグィードの為に動いているのだ。オルランドは排除すべきモノだと、そうすればグィード様は喜んで下さるだろうかと。
次の日にはジュリオが自領に仕事の為戻り、その間グィードが当主代理を務めて割り振られた仕事を午前中こなしながら週に一、二日は午後からトレンティノ王国騎士団員達と混じって鍛錬をしたり、と日々を忙しくしていた。
他にも、ベルゼビュートの情報によると、ガブリエーレは休みの度に図書館へ通っているらしい、と言う事だったのでどうやって出会いを演出してやろうかと考えていた所だったので、丁度お誂え向きだとグィードは行動に移す事にした。
それは、ガブリエーレが本棚に手を伸ばした時、同じように手を伸ばす、と言う事をやったのだ。
向こうは此方が誰なのかは当然気付いて、驚いて頭を下げて来るのを軽く制してガブリエーレに自己紹介をさせながら。
「ああ、貴公はトレンティノ王国騎士団の方でしたか」
なんて陳腐で滑稽な展開だろう、と思わなくもないが二、三回図書館に現れて声を掛けたら向こうは勝手に運命を感じてくれているようで、身体を鈍らせない様にと通い始めた鍛錬場でも他の騎士達に混じってグィードを囲む輪の中に居るようになった。
大勢の人が居る前ではその他大勢の一人でも、図書館では勉強熱心な彼の為だけに軽く講義の真似事をしてみたり、互いにお薦めの本を教え合ったりしていると、親密になるのにそう手間取る事は無かった。
今日も騎士団員たちに混じって走り込みの後皆と休憩をしていたら、走り込みの時には居なかったオルランドが現れて。
「おい、何でお前がこんな所にいるんだよっ!」
「何でと言われてもね・・・一応君のお父上や兄上殿達には許可を取っているけど?」
ジュリオを見送った後、仕事の前に手紙を認めてファウスティーノに週一、二回其方の鍛錬に混ぜては貰えまいか、と言う旨の手紙を出したら午後には返事が返ってきてとても驚いた。
随分と歓迎している内容で、実際顔を出したらエットレやアベラルドも喜んで迎え入れてくれた。
勿論、団員達も皆親切だし楽しく鍛錬に参加させてもらっている。
「止めないかオルランド。それより君は今日は洗濯当番だろう、もう終わったのか?」
年嵩の、エットレの副官を務めている男がそう尋ねた。するとオルランドはむっ、とした顔をしてまだだと答えた。
「なら、こんな所で油を売ってないで仕事を終わらせるんだ。練習に参加するのはそれからだろう」
厳しく指摘され、オルランドは舌打ちして渋々引き返して行った。皆やれやれと言った雰囲気でその後姿を見送り、しかし直ぐにそんな事も忘れて、鍛錬に戻って行った。
「・・・・・・」
オルランドは居場所を奪われて行く、と無意識に思ったのかもしれない。その認識は勿論間違いでは無い。
居場所だけじゃ無い、大事な恋人も奪ってあげるよと、グィードはほくそ笑む。
オルランドの、グィードに対する態度が悪いせいでこの日以降、オルランドに対する苛めが更に陰湿化していった。
今迄もオルランドは騎士団員の一部から嫌がらせ行為を受けていたのだが、しかしその苛めの輪が徐々に広がりつつあるようであった。それに比例するように、城に務めている者達がオルランドがカルロとラウルに慰められている光景を、頻繁に見かける様になっていた。
今日も春うららかな中庭の噴水に、オルランドを真ん中にして三人が並んで腰掛け何やら話し込んでいた。
「ちきしょうっ、アイツが絶対裏で何かしてるんだ!」
オルランドがその榛色の瞳に涙を浮かべながら、悔し気に腰掛けていた噴水の縁を叩いた。
「カルロ殿下、コレは貴方から抗議をしてやれないのかい?」
ラウルも悔し気にカルロを見た。カルロはと言うと、難しげな顔をして考え込んでいた。
「う、ん・・・・・・証拠が無ければ難しいな。せめて何か抗議する切っ掛けになるようなものでもあれば良いんだけど」
「やっぱりそうか・・・・・・」
カルロの言葉にラウルが溜息を吐いた。
遣り口が巧妙で悪質だ。なんて奴だろう、と彼らは勝手にどんどんグィードに悪印象を持つようになっていた。
実際はグィードは何もしていない。周りが勝手にグィードの為に動いているのだ。オルランドは排除すべきモノだと、そうすればグィード様は喜んで下さるだろうかと。
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