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復讐するは我にあり
十五.※ちょっとグロ注意
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もし本当にルイスに心を移したとしても、あのような大勢の前での婚約破棄は有り得ない話である。
ただルイスに唆されてあのような行動を取ったのなら、本当に浅慮が過ぎると言うものだ。
本当に、何を考えていたのだろう・・・・・・。
「・・・・・・」
それからも冗長な茶番が続く中、自分が学園を卒業する姿を見ながらグィードは考えた。
この後、卒業後も確かに謎の体調不良と、色々な事が覚えていられない等、長らく記憶が曖昧な期間────所謂記憶障害が────長く続いた。これが重篤な後遺症と言うやつなのだろう。
ジュリオもこの頃は自領と、トレンティノ王国を行き来してとても忙しそうだった。何せ、専用列車を走らせても一週間は掛かる距離だ。本当にジュリオはジュリオで大変だった筈である。
そう言ったすれ違いが、後の悲劇を加速させたのだろう。
それからは、ダリオの孤軍奮闘が続いた。これには、グィードは本当に申し訳ないと思っていた。彼が体調不良で起き上がれない日々が続いたせいで、ダリオもラウラもグィードに相談できなかった。
それでもダリオは国王の手を借り、兄カルロ達を告発しようとしたが・・・・・・間に合わなかった。
学園主催の卒業前のパーティー。その頃には、グィードの体調が回復しつつあったのでラウラのパーティーのパートナーとして同席した。
その時、最低な話だが婚約者のカルロはラウラを誘う事はせず、ルイスをパートナーとした。その話を聞いた時は、本当に腹が立った。
しかも会場に着いたら何故かふたりは引き離され、グィードはパーティー会場となった王城の控室の一室に拘束された。
そしてその間、ひとり会場に行かされたラウラは最悪な宣告を叩きつけられるのである。
『・・・・・・っ』
その場で泣くような醜態を晒す事は無かったが、会場を飛び出し、ラウラは長い廊下を速足で歩きながら高ぶった感情を抑えきれなくなり、とうとうボロボロと大粒の涙を零し始めた。と、その時。柱の影からいきなり人影が現れた。
『きゃっ・・・・・・!』
ぬっ、と現れた人影にラウラは小さく悲鳴を上げた。
『ラウラ・バルディーニ侯爵令嬢ですね』
と、声を掛けてきたのは御者の男であった。
「あっ・・・・・・!」
グィードは思わず声を上げた。御者がつい先程見かけたガブリエーレ・アルボルゲッティだったからである。騎士である筈の男が何故、御者の格好をしているのか。
『グィード・バルディーニ侯爵令息が先にお帰りになられましたので、此方で用意させて頂きました馬車にお乗りください』
驚き固まるラウラに、ガブリエーレは尤もらしい事を言って別の馬車に乗るよう誘導してきた。
ラウラは訝し気にしながらも、男の言う事を素直に聞いて後を付いて行く。
勿論、これは嘘である。この時グィードはまだ控室に拘束されていたからだ。
駄目だ!ラウラ・・・・・・ッ!
言った所でただの過去の出来事を映し出しているだけでしか無い映像は、無慈悲なまでにどんどん進む。
グィードは無意識のうちに、祈る様に両手を組んでいた。
紋章も何もないが、美しい装飾を施された馬車はラウラを乗せ、貴族が多く住む住宅街へと向かって行く。暫くして、人通りの無い所まで来た馬車はゆっくり止まった。
ひとり泣いていたラウラは、馬車が止まったのでもう邸に着いたのかと思い顔を上げた。
少ししてコンコン、とドアをノックされ、ラウラは応える。すると、ドアが開くや否や、ガブリエーレが失礼致します、と言いながら乗り込んできた。
『な、何ですか・・・・・・?』
やや、怯えた様に言うラウラにガブリエーレは努めて、穏やかに話しかけてきた。
『大丈夫、何も致しません。実は、このままお帰りになられたのでは、ご家族に心配をかけてしまうのでは、と思いまして・・・・・・ですから、このお茶を飲んで少し落ち着いて行かれては如何かと・・・・・・』
傍から見れば怪しげな提案だが、しかしラウラもまた、正常な判断が出来なかったせいか素直に男の勧めるマグカップに淹れた怪しげな茶を飲んでしまった。
『うぐ・・・・・・っ』
数十分後、ラウラが腹を押さえて苦しげに呻きだす。顔色は青褪め、指先が小さく痙攣している。
『た、たす・・・・・・け・・・・・・』
座席から崩れ落ち、そのまま倒れる。しかしまだ、微かに息はあるようだった。
ガブリエーレは座席から徐に立ち上がり、倒れたラウラに手を伸ばす。苦しむラウラの小さな顎を掴み、嫌がる彼女の口を強引に開くと舌を引き出した。
「や、止めろ・・・・・・止め・・・・・・っ」
何をしようとしているのか気付いたグィードはガクガクと震えた。全身に冷水を浴びた時よりも冷たい汗がどっ、と背を流れ落ち、胃と心臓がギリギリと締め付けられるような痛みに襲われる。
『あぐっ・・・・・・ぐぅ・・・・・・』
ガブリエーレは苦しげに呻くラウラの舌を彼女自身の歯の上下で挟むと頭と顎をぐっ、と両手で押さえた。
『!?・・・・・・ッ!!』
ぶつり、と舌を無理矢理噛み千切らされたラウラは激痛で暴れた。朦朧とする意識の中、我が身に何が起こったのか分からずパニックになってラウラは踠き苦しんだ。
『ゔ、う~~~~~~・・・・・・っ!』
しかしか弱い彼女を、倍の体格のガブリエーレは易々と抑え込み、動けなくした。必死に助けを求め、空を掴む小さな手が、徐々に弱まっていく。
ただルイスに唆されてあのような行動を取ったのなら、本当に浅慮が過ぎると言うものだ。
本当に、何を考えていたのだろう・・・・・・。
「・・・・・・」
それからも冗長な茶番が続く中、自分が学園を卒業する姿を見ながらグィードは考えた。
この後、卒業後も確かに謎の体調不良と、色々な事が覚えていられない等、長らく記憶が曖昧な期間────所謂記憶障害が────長く続いた。これが重篤な後遺症と言うやつなのだろう。
ジュリオもこの頃は自領と、トレンティノ王国を行き来してとても忙しそうだった。何せ、専用列車を走らせても一週間は掛かる距離だ。本当にジュリオはジュリオで大変だった筈である。
そう言ったすれ違いが、後の悲劇を加速させたのだろう。
それからは、ダリオの孤軍奮闘が続いた。これには、グィードは本当に申し訳ないと思っていた。彼が体調不良で起き上がれない日々が続いたせいで、ダリオもラウラもグィードに相談できなかった。
それでもダリオは国王の手を借り、兄カルロ達を告発しようとしたが・・・・・・間に合わなかった。
学園主催の卒業前のパーティー。その頃には、グィードの体調が回復しつつあったのでラウラのパーティーのパートナーとして同席した。
その時、最低な話だが婚約者のカルロはラウラを誘う事はせず、ルイスをパートナーとした。その話を聞いた時は、本当に腹が立った。
しかも会場に着いたら何故かふたりは引き離され、グィードはパーティー会場となった王城の控室の一室に拘束された。
そしてその間、ひとり会場に行かされたラウラは最悪な宣告を叩きつけられるのである。
『・・・・・・っ』
その場で泣くような醜態を晒す事は無かったが、会場を飛び出し、ラウラは長い廊下を速足で歩きながら高ぶった感情を抑えきれなくなり、とうとうボロボロと大粒の涙を零し始めた。と、その時。柱の影からいきなり人影が現れた。
『きゃっ・・・・・・!』
ぬっ、と現れた人影にラウラは小さく悲鳴を上げた。
『ラウラ・バルディーニ侯爵令嬢ですね』
と、声を掛けてきたのは御者の男であった。
「あっ・・・・・・!」
グィードは思わず声を上げた。御者がつい先程見かけたガブリエーレ・アルボルゲッティだったからである。騎士である筈の男が何故、御者の格好をしているのか。
『グィード・バルディーニ侯爵令息が先にお帰りになられましたので、此方で用意させて頂きました馬車にお乗りください』
驚き固まるラウラに、ガブリエーレは尤もらしい事を言って別の馬車に乗るよう誘導してきた。
ラウラは訝し気にしながらも、男の言う事を素直に聞いて後を付いて行く。
勿論、これは嘘である。この時グィードはまだ控室に拘束されていたからだ。
駄目だ!ラウラ・・・・・・ッ!
言った所でただの過去の出来事を映し出しているだけでしか無い映像は、無慈悲なまでにどんどん進む。
グィードは無意識のうちに、祈る様に両手を組んでいた。
紋章も何もないが、美しい装飾を施された馬車はラウラを乗せ、貴族が多く住む住宅街へと向かって行く。暫くして、人通りの無い所まで来た馬車はゆっくり止まった。
ひとり泣いていたラウラは、馬車が止まったのでもう邸に着いたのかと思い顔を上げた。
少ししてコンコン、とドアをノックされ、ラウラは応える。すると、ドアが開くや否や、ガブリエーレが失礼致します、と言いながら乗り込んできた。
『な、何ですか・・・・・・?』
やや、怯えた様に言うラウラにガブリエーレは努めて、穏やかに話しかけてきた。
『大丈夫、何も致しません。実は、このままお帰りになられたのでは、ご家族に心配をかけてしまうのでは、と思いまして・・・・・・ですから、このお茶を飲んで少し落ち着いて行かれては如何かと・・・・・・』
傍から見れば怪しげな提案だが、しかしラウラもまた、正常な判断が出来なかったせいか素直に男の勧めるマグカップに淹れた怪しげな茶を飲んでしまった。
『うぐ・・・・・・っ』
数十分後、ラウラが腹を押さえて苦しげに呻きだす。顔色は青褪め、指先が小さく痙攣している。
『た、たす・・・・・・け・・・・・・』
座席から崩れ落ち、そのまま倒れる。しかしまだ、微かに息はあるようだった。
ガブリエーレは座席から徐に立ち上がり、倒れたラウラに手を伸ばす。苦しむラウラの小さな顎を掴み、嫌がる彼女の口を強引に開くと舌を引き出した。
「や、止めろ・・・・・・止め・・・・・・っ」
何をしようとしているのか気付いたグィードはガクガクと震えた。全身に冷水を浴びた時よりも冷たい汗がどっ、と背を流れ落ち、胃と心臓がギリギリと締め付けられるような痛みに襲われる。
『あぐっ・・・・・・ぐぅ・・・・・・』
ガブリエーレは苦しげに呻くラウラの舌を彼女自身の歯の上下で挟むと頭と顎をぐっ、と両手で押さえた。
『!?・・・・・・ッ!!』
ぶつり、と舌を無理矢理噛み千切らされたラウラは激痛で暴れた。朦朧とする意識の中、我が身に何が起こったのか分からずパニックになってラウラは踠き苦しんだ。
『ゔ、う~~~~~~・・・・・・っ!』
しかしか弱い彼女を、倍の体格のガブリエーレは易々と抑え込み、動けなくした。必死に助けを求め、空を掴む小さな手が、徐々に弱まっていく。
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