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復讐するは我にあり
十三.※ちょっとグロ注意。
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『うむ、先ずは貴様はシエナ学園に入学してカルロをどんなテを使ってでも良いから誘惑して、結婚まで漕ぎ着けるんだ』
『・・・・・・なるほどねえ、でも王子サマのお相手は聖女サマじゃないといけないんじゃないのかい?』
魔女の言葉にアルバーノはニヤリと笑った。
『それなら心配いらん、儂が買収した教会で判定を受ければ良い』
其処は抜かりない、と言いたいらしい。入学も儂がどうにかする、と内容は兎も角頼もしい言葉を言い放つ。
『まあ、何だっけ?鉄道の経営権?だっけ、そんなモノ欲しさに此処までするもんかねえ』
面倒な事が嫌いな魔女は呆れたように肩を竦めた。でも、面白そうな事や誰かを不幸にするのが何よりも大好きな彼女はアルバーノの依頼を引き受けた。
『本当に、何をしてもイイんだね?』
魔女はそう聞いた。
『構わん、バルディーニを潰してカルロを操り人形に出来るならどんなことでもしろ、その為なら助力を惜しまん』
アルバーノの言葉に、魔女はそのどす黒い赤に彩られた唇を吊り上げた。
それを見ていたベリアドは顔を思いきり顰めていた。
「馬鹿め、魔女にそんな物の言い方をしたらどうなるか・・・・・・」
魔女は言質を取ったと見做してどんな事をやらかすやら、とベリアドはゆるゆると首を横に振った。
「そう言えば実際、学園は重篤な後遺症が残ってもおかしくない程の瘴気に包まれておりましたな」
「えっ・・・・・・」
ベルゼビュートの言葉にグィードは顔色を変えた。
「魔女は学園中に魔晶石を配し、己の魔力を増幅させて学園全体を己の領域として猛威を振るっておったようですな。まあ、魔力の無いグィード様達が気付かぬのも無理からぬ事」
魔法や魔導に通じる者が居れば何か分かったかもしれないが、貴族であれ、平民であれ魔力が何たるかが分からねば気付きようもない。瘴気のような邪悪なモノに敏感であれば体調を崩したりして、何故なのか分からないまま、学園に行きたくないと思ったかもしれないが。
「それでも、今にして思えば妙だと思う事はあっただろう?」
「・・・・・・」
そう言われて思い出そうとして、グィードは愕然とした。今学園での思い出を語ってみろ、と言われればまるで夢の中に居たかのように曖昧で朧気で、とてもじゃないが思い出すなんて無理だった。
常に水の中い居る様に動きが鈍り、頭も正常に働いていたとはとても言い難い状態だった気がする。
「・・・・・・まるで夢の中にいたようで、今何か語れと言われても殆ど思い出せません・・・・・・」
「思考を鈍らせ、まともに行動させないようにしていたのだな」
背筋をゾッと冷たいモノが走る。そんな恐ろしい状態で日常を過ごしていたのか、と。
「しかしそんな事になっていたのなら、王国側が何も気づかないなんて・・・・・・」
「それらを隠蔽する魔法を掛けていたのでしょう・・・・・・まあ、それも二年から三年が限度でしょうが」
シエナ学園は三年制である。
「なるほど、それだけの時間を隠蔽出来るなら十分、ですね・・・・・・」
魔女はかなり邪悪だが、優秀だったようだ。
「ふむ、此処からはそれ程重要では無い。時間を少し進めよう」
パチン、と指を鳴らすとまた鏡の画がぼやけて画面が切り替わる。
「わっ・・・・・・!」
グィードが驚いて声を上げた。鏡の向こう側でいきなり画面いっぱいに血が飛び散り、年若い女の悲鳴が響いたからだ。
先程の魔女が全裸で誰かにナイフを突き立てていた。ギチ、ギチ・・・・・・と相手を押さえ付け、ゆっくりと切り裂いていく。時間を掛け、丁寧に切り取った部位────相手の顔面の皮膚を剥がすと魔女はそれを自身の顔に乗せた。
『ン、ふふふふ・・・・・・』
剥がしたばかりの、血の滴る皮膚を顔に乗せ、魔女は不気味に笑った。
「な、何を・・・・・・」
「ルイス・アントーニに化けるために、本人を殺し、その皮を被っているのですよ」
グィードの疑問にベルゼビュートが答えるが、肝心の答えにはなっていない。
「いや、こんな方法しか無いのですか?」
「まさか、安全で穏便な方法は幾らでもありますとも」
矢張りそうか、と鏡の向こうの魔女の、邪悪で悪趣味な方法に吐き気を覚えた。しかし、ルイス・アントーニは実在していた人間だった事にも驚きを隠せない。
先程まで、ルイスは魔女が成り済ます為に作り上げた架空の人物だと思っていたからだ。
本来なら、架空の人物で十分な筈なのにこんな事をしているのは、矢張りこの魔女の悪趣味から来ているであろう事は明白であった。
「おぞましい・・・・・・」
グィードは吐き捨てる様に呟いていた。
『・・・・・・なるほどねえ、でも王子サマのお相手は聖女サマじゃないといけないんじゃないのかい?』
魔女の言葉にアルバーノはニヤリと笑った。
『それなら心配いらん、儂が買収した教会で判定を受ければ良い』
其処は抜かりない、と言いたいらしい。入学も儂がどうにかする、と内容は兎も角頼もしい言葉を言い放つ。
『まあ、何だっけ?鉄道の経営権?だっけ、そんなモノ欲しさに此処までするもんかねえ』
面倒な事が嫌いな魔女は呆れたように肩を竦めた。でも、面白そうな事や誰かを不幸にするのが何よりも大好きな彼女はアルバーノの依頼を引き受けた。
『本当に、何をしてもイイんだね?』
魔女はそう聞いた。
『構わん、バルディーニを潰してカルロを操り人形に出来るならどんなことでもしろ、その為なら助力を惜しまん』
アルバーノの言葉に、魔女はそのどす黒い赤に彩られた唇を吊り上げた。
それを見ていたベリアドは顔を思いきり顰めていた。
「馬鹿め、魔女にそんな物の言い方をしたらどうなるか・・・・・・」
魔女は言質を取ったと見做してどんな事をやらかすやら、とベリアドはゆるゆると首を横に振った。
「そう言えば実際、学園は重篤な後遺症が残ってもおかしくない程の瘴気に包まれておりましたな」
「えっ・・・・・・」
ベルゼビュートの言葉にグィードは顔色を変えた。
「魔女は学園中に魔晶石を配し、己の魔力を増幅させて学園全体を己の領域として猛威を振るっておったようですな。まあ、魔力の無いグィード様達が気付かぬのも無理からぬ事」
魔法や魔導に通じる者が居れば何か分かったかもしれないが、貴族であれ、平民であれ魔力が何たるかが分からねば気付きようもない。瘴気のような邪悪なモノに敏感であれば体調を崩したりして、何故なのか分からないまま、学園に行きたくないと思ったかもしれないが。
「それでも、今にして思えば妙だと思う事はあっただろう?」
「・・・・・・」
そう言われて思い出そうとして、グィードは愕然とした。今学園での思い出を語ってみろ、と言われればまるで夢の中に居たかのように曖昧で朧気で、とてもじゃないが思い出すなんて無理だった。
常に水の中い居る様に動きが鈍り、頭も正常に働いていたとはとても言い難い状態だった気がする。
「・・・・・・まるで夢の中にいたようで、今何か語れと言われても殆ど思い出せません・・・・・・」
「思考を鈍らせ、まともに行動させないようにしていたのだな」
背筋をゾッと冷たいモノが走る。そんな恐ろしい状態で日常を過ごしていたのか、と。
「しかしそんな事になっていたのなら、王国側が何も気づかないなんて・・・・・・」
「それらを隠蔽する魔法を掛けていたのでしょう・・・・・・まあ、それも二年から三年が限度でしょうが」
シエナ学園は三年制である。
「なるほど、それだけの時間を隠蔽出来るなら十分、ですね・・・・・・」
魔女はかなり邪悪だが、優秀だったようだ。
「ふむ、此処からはそれ程重要では無い。時間を少し進めよう」
パチン、と指を鳴らすとまた鏡の画がぼやけて画面が切り替わる。
「わっ・・・・・・!」
グィードが驚いて声を上げた。鏡の向こう側でいきなり画面いっぱいに血が飛び散り、年若い女の悲鳴が響いたからだ。
先程の魔女が全裸で誰かにナイフを突き立てていた。ギチ、ギチ・・・・・・と相手を押さえ付け、ゆっくりと切り裂いていく。時間を掛け、丁寧に切り取った部位────相手の顔面の皮膚を剥がすと魔女はそれを自身の顔に乗せた。
『ン、ふふふふ・・・・・・』
剥がしたばかりの、血の滴る皮膚を顔に乗せ、魔女は不気味に笑った。
「な、何を・・・・・・」
「ルイス・アントーニに化けるために、本人を殺し、その皮を被っているのですよ」
グィードの疑問にベルゼビュートが答えるが、肝心の答えにはなっていない。
「いや、こんな方法しか無いのですか?」
「まさか、安全で穏便な方法は幾らでもありますとも」
矢張りそうか、と鏡の向こうの魔女の、邪悪で悪趣味な方法に吐き気を覚えた。しかし、ルイス・アントーニは実在していた人間だった事にも驚きを隠せない。
先程まで、ルイスは魔女が成り済ます為に作り上げた架空の人物だと思っていたからだ。
本来なら、架空の人物で十分な筈なのにこんな事をしているのは、矢張りこの魔女の悪趣味から来ているであろう事は明白であった。
「おぞましい・・・・・・」
グィードは吐き捨てる様に呟いていた。
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